第49話
だけど、どれだけ考えたって、真さんが死んでしまった現実は変わらない。私はできるだけのことを優斗にしてあげる、それしかできない。
くよくよしないし、ごめんね、ごめんねって何度も繰り返すより、ありがとう、ありがとうと伝える。
ありがとう、ママ助かったよって言えば、優斗は嬉しそうに笑顔を見せてくれる。
ごめんねって言えば……大丈夫だよってちょっと悲しそうな顔が返ってくる。
「あー、もう、また考え始めちゃった。やめやめ!」
お父さんがいたら幸せだったのかなとか再婚を考えた方がよかったのかなとか……今更だ。
いまさら……?あれ?
優斗はどう思っているんだろう。もし、これから一人暮らしして結婚してって優斗の人生の節目節目の時に「母さんを一人にするのは心配だ」「母さんと同居したい」とか……私のことを考えて足かせになったりしないだろうか?
嘘でも、恋人の一人でもいると言った方が安心できる?
いやいや、無理無理。今更恋愛とか。
恋愛は無理でも、趣味を持つとか、うん、趣味のお友達がたくさんいるから大丈夫と安心させることはできるんじゃないかな?
あれ?私の趣味って何?
「母さん、明日のお弁当教えて」
おっと。悩んでいたら優斗が来た。
「明日のお弁当は、卵焼きと、プチトマトと、ごはんと角煮風の豚肉と煮卵……あ、卵焼きと卵がかぶるから、なしね、なし。えっと、ちくわの磯部揚げ。うーん、それでいいかな。よし、そうするね」
そうだ。卵かぶり。
ドライカレーを入れようかとも考えていたけれど、ご飯くらい炊きたてで入れようと考え直す。
ドライカレーは、私のお弁当にいれよう。
「ありがとう!」
優斗が張り切って戻っていった。
うん、うん、幸せそうだ。
明日の夕飯の下ごしらえをしなくちゃいけないんだ。何にしようか。
と、買い物してきたんだった。皮むき里芋、昆布と煮て、煮っころがしを作ろう。それから鮭の切り身を焼く。あとは豚汁。
豚汁の具を取り出して、ギューッと絞ってご飯と混ぜた混ぜご飯をお弁当に入れようかな。おいしいんだよ。猫まんまっていうの?味噌汁をご飯にぶっかけて食べることもあるじゃない?味噌味のご飯っておいしいんだよね。ちょっと水分少なめに炊いて混ぜておくと、具から染み出た水分をご飯が吸ってくれるんでお弁当の時間にはいい具合になってる。
明日の夕飯の下ごしらえを終えると優斗が遠慮気味に顔を出した。
「母さん、時間ある?」
「ん?もう明日の準備も終わったし、時間あるわよ?」
ちょいちょいと手招きされて優斗の部屋に入ると、パソコンの画面を指さされる。うーん、この光景も見慣れてきたわよね。
優斗の作ったキャラクターの動画に対して書かれたコメントが表示された画面。
「先着10人にコメント返してあげて!」
優斗に言われるままにコメントを見る。
「返すって、えーっと、打ち込めばいい?」
キーボードに手を伸ばすと、優斗がマイクを差し出す。
「母さんは声担当!文字で返すなら僕でもできる!」
あ、はい。そうですか。
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ヒガドン?ヒガシドン?東どん……東……ん?
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