第210話 親の鉄拳! (2)

 謝罪を続ける。


 そう、続ける事しかできないからね。


 僕はひたすら平謝りだ。


「ごめんさない。ごめんさない」とね。


「俺は本当に、何も知らなかったんじゃけぇ。ごめん。ごめんねぇ」の謝罪も付け加えてね。


「ちょっと、お父さん。陽も暮れたし、近所の目もあるけぇ。そろそろやめんさいぃ。外で一樹を叱るのは、頼むけぇ」と。


 自身の拳を掲げたままで、僕の事を上から見下ろし、憤怒しながら睨みつけてくる親父に対して、僕のお袋が、慌てて背から抱きついて止めに入ってくれたのだ。


 だから僕の親父は、「チッ」と、舌打ちをして、自身の振るい掲げる握り拳をおろして、と言うか?


 多分おろしてくれたのだと思うのだ?


 だって、家のお袋からの台詞が、この後とまった。


「…………」と。


 静まり返ったようだから、多分ね?


 でもさ、お袋の台詞の代わりに今度は、僕の親父から。


「一樹ー! お前ー⁉ 美紀ちゃんと洋子ちゃんの事をどうするつもりなんじゃぁー⁉ あんな小さな子を放置してのぅ。……儂は本当に情けねぇ。お前の事がのぅ」と。


 親父が僕の事を、翔子ではなく、美紀の事で嘆くから。


 僕自身が。


「……?」と。


 首を傾げ、困惑するのだった。



 ◇◇◇


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