第164話 エルフな勇者さまは、日本で商いを始めました!(3)
だから夫の僕と言うか?
親戚のおじさんから、売り子として鍛えあげられ。怒られながらも耐え忍びながら覚えたこの販売業の仕事のはずなのに。
エルの夫である僕の威厳がまた減る。少なくなる。と、いうか。家での立場が低くなるほど。
僕は家の奥さまのエルフな呼び込みに対して歯が立たないのだ。
そう、今のこの令和の、異世界ファンタジー的な世界観が当たり前の中で育った若人達ならば、家の奥さまのエルフ的な声音、声色からくる歌声、呼び込みは魔法がかかっているのと一緒だから。エルの声音に皆が。通りすがりの人達が聞けば自然と足が止まり。
エルの呼び込み、おいで、おいでに誘われ、酔いしれながら。フラフラとした足取りでこちらへと。売り場へと。次から次へとお客さまが寄ってくるから。スーパーマーケットの店内の店長や副店長、主任にパートのお姉さま、奥さまたちも、皆が揃って驚愕──。
開いた口が塞がらない状態へと陥っているのだ。
僕達夫婦が立ち並ぶ売り場に、家のエルフな奥さまの、食品トングの手招き、誘いに応じて次から次へとお客さまが着ては試食──。
お客さま各自各々が気に入った商品があれば購入をしてくれる状態──。売り場に人が集い。群がる。山ができた状態に陥っているからね。
まあ、そんな、状態だから。店舗の店長さんや副店長さんが、僕達夫婦の許へときて、「お兄さん。彼女凄いね」と、褒めてくれるから。
僕は少々不快のある声音で「彼女ではなく。妻です」と、答えたのだ。
「そうかぁっ。そうかぁっ。それはすまなかったね。珍味屋のお兄さんは。結婚をしたんじゃねぇ。それは知らんかった……と、言うか? 先月は結婚をしとらんかったじゃろぅ。お兄さんは?」と、言った話しにいつもなるから。
僕はエルに仕事を任せて、「あの、ですね。実は……」と、販売の仕事をしていてエルと知り合って電撃結婚をしたのだと。店長さんや副店長さん達に、僕は嬉しそうに説明をするのだ。
まあ、スーパーマーケットの店長さんや副店長さん達とは、こんな感じで和気藹々と会話に花を咲かせながら楽しそうにと、いうか? 僕の俺妻自慢が一方的に、自身の口から出て。それを店長さんや副店長が『うん、うん』と頷きながら聞いているだけなのだが。
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