―50― ローリング
「……やっばり、ここに戻るのか」
目を開けた先は、
確か、この後、俺は傀儡回と出会うんだ。
この階層には3つの転移陣が存在する。
1つ目の転移陣の先には、封印されているアゲハがいて、2つ目は吸血鬼ユーディートがいて、3つ目に傀儡回がいる。
今の俺には、復讐を遂げることよりも傀儡回を人間にしてやりたいという気持ちのほうが大きい。
傀儡回をちゃんとした人間にするためになら、何度だって時間を繰り返したってかまわないとさえ思う。
そう決意して、俺は3つ目の転移陣を踏んだ。
「確か、この先に傀儡回があるはずだ」
そう口にしながら、一本道をまっすぐ進む。
「グルゥウウウッッッ!!」
低く獰猛なうめき声が聞こえた。
「あ……?」
目の前にいたのは、黒い影に似た化物だった。
通路全てを埋め尽くすほど巨大で、体全体を覆うほどの巨大な顎。顎には強靱な牙が生え揃えて、体のあちこちからはいくえにも黒い触手が生えている。
この特徴は、どことなく傀儡回の〈
〈
「傀儡回か……?」
だから、そう呟いていた。
確か、ここに剣を模した傀儡回が置いてあったはず。
なのに、その存在はどこにもなく、化物がいるのみ。
「いや、そんなはずが……」
だって、時間が巻き戻るってことはあらゆる事象も元に戻らなくてはいけない。
だから、ここには寄生剣傀儡回がなくてはおかしい。
「いや……」
スキル〈セーブ&リセット〉は死んだことで時間が巻き戻るスキルなのは間違いない。
時間が巻き戻るってことは、あらゆる記憶や経験はリセットされるということだ。
けど、時間が巻き戻っても、それらがリセットされない例外は確かに存在した。
1つは、アゲハ。
彼女が別の時間軸の記憶を持っているのは言動から明らかだ。
そして、この傀儡回も例外の1つだった。
初めて会ったときは、寄生剣傀儡回はただ、俺に取り憑いては魔物を次々と食らうだけの存在だった。
それから何度かループを繰り返した後、それは吸血鬼ユーディートの指南のもと、傀儡回を制御しようとしたとき、彼女は深層世界にて俺にこう告げたのを覚えている。
「君の魂からなんだかなつかしい匂いがするんだ」と。
これは、別の時間軸の記憶がはっきりとではないにせよ、ある程度保持されている証拠だ。
それからも、傀儡回にはおかしい点がいくつかあった。
例えば、深層世界での見た目が死に戻りする度に徐々に人に近づいていったり、以前の時間軸では話すことができなかった傀儡回がなぜか喋りかけてきたり。
本人には自覚はなかったようだが、寄生剣傀儡回には、時間がリセットされても、その影響から逃れることができていた証拠がいくつも見つけることができる。
「その結果がこれか……」
目の前にいる完全な化物と化した傀儡回に対してそう呟く。
詳しい理由はわからない。
けど、時間が巻き戻った結果、傀儡回は化物になってしまったのだ。
「なんだよ、それ……」
力なく呟く。
だって、傀儡回は人間になりたかったはずだ。
なのに、この姿はあまりにも人間からほど遠い。
こんな残酷なこと、あるのかよ……。
「あ、あぁ……」
自然と涙が零れる。
俺はどうしたらよかったんだ……。
どうすれば、傀儡回を幸せにできた……?
もしかすると、傀儡回はもう人間になることができないのかもしれない……。
そう思うと、やるせない感情と憤りが胸中に生じる。
なんども死に戻りした先に、傀儡回が人間になる未来があるのか……?
あると信じたいが、その方法が俺には見当もつかない。
「ガルッ!」
うなり声が聞こえた同時、俺は傀儡回に丸呑みにされた。
その数秒後、俺は死んだことを自覚した。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
GAME OVER
もう一度挑戦しますか?
▶『はい』 『いいえ』
△△△△△△△△△△△△△△△
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
『はい』が選択されました。
セーブした地点から再開されます。
△△△△△△△△△△△△△△△
第二章 ―完―
――――――――――――――
あとがき
これにて、第二章は終わりです!
ひとまず傀儡回編は終了です。
もし、
「面白かった」
「続きが気になる」
「更新がんばって」
など、思っていただけましたら、
★★★星による評価いれてくれると幸いです。
よろしくお願いします。
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