―33― 君に従うことにするよ
吸血鬼ユーディートと過ごした時間は濃厚だった。
彼女から教わったことは数え切れないほどある。
ダンジョンのおおまかな構造、隠れ家の場所、隠し通路や隠し部屋の場所、そして、スキルを入手できる宝箱の場所。
他にも、剣を使った戦い方。
最も大きいのが、寄生剣
ユーディートと築いてきた関係はなくなったが、教えてもらった知識がなくなるわけではない。
早速俺は、
「確か、柄を握ってはいけないんだったな」
柄を握ると体を乗っ取られてしまうため、剣先を握る。
その上で、剣先から喉の奥につっこむ――。
体の中に
◆
目を開けると、そこは異界の空間が広がっていた。
確か、深層世界というんだったか。
「やぁ、初めましてかな? ふむ、なぜだろう? 君とはどこかで会った気がするな」
見ると、目の前には
「頼みがある。俺に力を貸してくれ」
確か、前回はこうやって頼むとあっさりと承諾してくれた覚えがある。
「ふむ、どうしようかな……?」
だから、
「なにが問題なんだ?」
「いやね、俺様にも目的ってのがあって、君に従えば、その目的を果たせるのか考えていたのさ」
「その目的ってのはなんだ?」
「人間になること」
「俺様が人に寄生するのは、その人の体を奪うことで人間になれるんじゃないかと、考えているからなんだよね」
「じゃあ、俺に制御されたら人間になることができないのか?」
「んー、どうだろ? そもそも、今までたくさんの人間に寄生してきたけど、人間になれたためしはないからね。案外、君に支配されたほうが、人間に近づけるかもしれない」
「じゃあ、俺の物になるってことでいいか?」
「あぁ、いいよ。君には、なにか運命的なものを感じる」
意外にも素直に言うことを聞いてくれそうだな。
「君に従うことにするよ」
傀儡回がそう告げた瞬間、深層世界が崩れていき、気がつけば、さっきまでいたダンジョンの通路に足を下ろしていた。
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スキル〈寄生剣
派生スキル〈黒の太刀〉を獲得しました。
△△△△△△△△△△△△△△△
というメッセージウィンドウが表示される。
これで無事、寄生剣傀儡回を操れるようになった。
◆
それから、俺は二つのスキルを入手すべく動いた。
ユーディートと共に行動していたとき、遭遇する魔物はユーディートが倒してくれたが、今回は俺一人で行動する必要がある。
極力魔物とは戦わないように慎重に、それでも戦う必要があるときは〈黒の太刀〉を使って、魔物の討伐をする。
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魔物の討伐を確認しました。
スキルポイントを獲得しました。
△△△△△△△△△△△△△△△
「ふぅ」
魔物の討伐できた俺は、一息する。
Lv3の〈剣術〉スキルがあったときは、もっと楽に倒せたんだがな。
とはいえ、剣の扱い方といった経験はちゃんと活かすことができている。だから、今までの特訓が全て無駄ってわけではない。
それから、俺は宝箱のある隠し部屋へと突き進んだ。
確か、ここの壁を押すと、隠し通路が出現するはずだ。
目論見通り、一見なんの変哲もない壁が開いて、通路が出現した。
そのまっすぐ進むと、宝箱が置いてある。
宝箱を開けると、〈知恵の結晶〉が手に入り、そして、入手可能なスキル一覧が表示される。
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スキル〈剣術〉を獲得しました。
△△△△△△△△△△△△△△△
前回同様、〈剣術〉スキルを獲得する。
「よしっ、次は〈英明の結晶〉だな」
〈英明の結晶〉は、ランダムで一つのスキルが手に入るというもの。
前回はこのアイテムで〈属性付与〉を入手したんだ。
けど、結局、〈属性付与〉を使う機会はなかったんだよな。
って、考えたら、今すぐではなく、後回しでもいいのかもしれない。
〈英明の結晶〉が入っている宝箱はボスのいる部屋の手前の部屋にある。だから、取りに行くのに時間と危険が伴う。
無理して、取りに行く必要もないだろう。
それよりも、〈剣術〉スキルのレベルをあげることに専念しよう、と今後の方針を固めた。
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