―24― なにが駄目だったんだ

「なにが駄目だったんだ……」


 死に戻りした俺は反省していた。

 ユーディートは「つまらない」と言って、俺のことを斬った。

 つまり、もっとおもしろいことを言えばいいのだろうか。といっても、そんなこと全く思いつかないが。

 ともかく、もう一度ユーディートの元に言ってみるか。


「それで、あなたを弟子にしてわたくしになんのメリットがあるんですか?」


 再び、同じ質問をされる。


「メリットはないです。ですが、どうか俺を弟子にしてください」


 メリットなんて提示できないと判断して、今度は誠意で訴えることにしてみる。


「話にならないですわね」


 そう言われて、俺は殺された。





 それから俺は何度も吸血鬼ユーディートの元に出向いては殺された。

 あるときは、


「それで、あなたを弟子にしてわたくしになんのメリットがあるんですか?」


 と、言われたので、


「身のお世話をさせていただきます。買い物に掃除、食事の用意、なんでもできます。だから、弟子にしてください」


 と、返したら、


「そういうの、別に必要と感じていませんわ」


 と、言われて殺された。


 また、あるときは、


「それで、あなたを弟子にしてわたくしになんのメリットがあるんですか?」


 という質問に対して、


「力仕事なら任せてください! こう見えて、畑を耕してきたので、力なら自信があります!」

「力なら、わたくしのほうが上ですわ」


 と、返されて殺された。

 また、あるときは、


「話し相手とかできます。ほら、こんなところに住んでいると、他の人としゃべる機会がないので、寂しい思いをしているんじゃないかと」

「別に寂しくないですわ」


 と言って、殺された。

 それからは、俺は何度も挑戦しては殺されてた。彼女が一体、なにを求めているのか、俺には見当もつかない。


「それで、あなたを弟子にしてわたくしになんのメリットがあるんですか?」

「おもしろい物を見せることができます」

「おもしろいものですか……?」


 そう言って、吸血鬼ユーディートは食いつく。


「はい、俺はある目的があります。復讐という」

「復讐ですか。実に甘美な響きですわね」


 今まで一番感触がいいことに驚いていた。

 内心、喜びながら、俺は自分の過去を説明する。

 村人に迫害されてきたこと。最愛の人を亡くしたことを。冤罪によって、このダンジョンに追放されたこと。

 ただ、スキル〈セーブ&リセット〉で何度も死に戻りしていることは伏せる。彼女のことを、そこまで信用するのはまだ早い。


「だから、俺はどうしても力をつけて、村人たちを目に物見せてやりたいんです。そのためにもユーディート様の弟子となって、力をつけたんいです」


 そう言いながら、俺は頭を下げる。


「キヒヒッ、おもしろい、ですわね」


 彼女は笑っていた。


「それで、あなたは具体的にどんな復讐を考えているんですか?」

「えっと……」


 復讐することで頭がいっばいで、どんな方法を用いるかなんて考えたこともなかった。


「全員、殺します」


 目の前の吸血鬼が一番喜びそうな答えを考えた上で口にする。


「どんな風に殺すんですか?」

「拷問の上、殺します。一番、惨い殺し方です。女子供関係ありません。一人残らず殺します。俺をこんな目に合わせたことを心の底から後悔させてやります」

「いいですわねぇ!」


 彼女はニタニタと笑みを浮かべていた。


「あなたが、どうなるのか見届けたい欲がでてきましたわ」

「じゃあ!」

「まだ、喜ぶのは早いですわ。テストに合格すれば、弟子にしてあげますわ」

「テストですか。ありがとうごさいます!」


 やっと、彼女が満足する答えを出すことができた。

 どんなテストが待ち受けているかわからないが、この好機逃すわけにはいかないと俺は気合いをいれる。


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