第6話

「いよいよですね。どんな人なのか、とても楽しみです」


 私は並んで歩いているエリオットに言った。


「ああ、彼はもう教室にいるはずだ」


 待ち合わせている空き教室に着いた。

 扉を開けると、そこには一人の男子生徒がいた。

 窓から外を見ていたその人物が、こちらを振り向いた。


「おぉ……」


 驚いて、馬鹿みたいなリアクションになってしまった。

 確かにエリオットの言っていた通り、イケメンである。

 しかし、想像の何倍もイケメンだったので、面食らってしまった。

 面食いだけに……。


 いや、もちろん冗談である。

 私は面食いではない。

 人の美しさは、内面にこそ宿るものだと思っている。

 そして、その美しさが外側にも滲み出るのだ。

 つまり、外側が美しければ、内面も美しいということである。

 あれ? 結局面食いと同じような気が……。


「あなたが、カトリーさんですね? 僕はハワード・ミルヴァートンです。エリオットから、大体の話は聞いています」


 私は目の前にいる人物の声で我に返った。

 見た目だけでなく、声も美しい。

 思わず聞き入りそうになったが、自分が挨拶をしていないことを思い出した。


「ど、どうも……、カトリー・ロンズデールです。この度は、本当にありがとうございます。ご協力して頂けて嬉しいです」


「さて、それじゃあ、カトリーを傷つけたマーシーに、どうにかして報いを受けさせ、これ以上嫌がらせをさせないようにしよう」

 

 エリオットが話を進めようとした。

 しかし、途中で私はあることを思い出した。


「あ!」


「どうした、カトリー。まさか、今頃宿題をしていないことに気付いたのか?」


「ち・が・い・ま・す。そんなことじゃありません」


 私はエリオットに言い返した。

 しかしよく考えれば、昨日はあのままエリオットの部屋で眠ってしまったので、確かに宿題をやっていない。


「ああ! そういえば、宿題もやっていませんでした!」


「それよりもカトリーさん、さっき何か思い出したのでは?」


「あ、そうでした」

 

 ハワードの言葉で、私は話を戻した。


「今日、マーシーさんに呼び出されていたのです。ハワードさんに会うのが楽しみだったので、すっかり忘れていました」


「それは面倒なことになりそうだな。約束をすっぽかすと、また難癖付けて嫌がらせをされるかも」


「カトリーさん、今から急いでいけば間に合うかもしれません。約束の時間は今から何分後ですか?」


「今から十五分前です」


     *


 (※マーシー視点)


 私は以前あの女を呼び出した教室で待っていた。

 しかし、何分待っても彼女は現れなかった。

 苛立ちのせいで、ポケットに入っている櫛を握る力が強くなっていた。


「あの女、私の呼び出しを無視するなんて、いい度胸しているじゃない。よほど、痛めつけられたいらしいわね……」

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