都、美しく燃えて(七)

 近北州のじょうらくの動きにあわせて、近西州も東進の動きを見せた。

 これに対して、いちばん慌てたのが、バージェ候[ガーグ・オンデルサン]であった。

 ここまで来ても、どういうわけか、候は中立の姿勢を崩さず、近北公[ハエルヌン・ブランクーレ]の要請に従って、近西州軍に糧秣こそ提供したが、領地の通過は認めなかった。

 長男のホアビウ・オンデルサンは、父の説得をあきらめて、彼の意に賛同した少数の兵を伴って、コステラ=デイラに入京した。


 そのようなバージェ候の動きを嫌った、近西州のロアナルデ・バアニは、バージェ付近で進軍を止め、都の西部に陣を構えていた、青年[スザレ・マウロ]派の別動隊の様子を探った。

 別動隊の目的が、セカヴァンにて、本軍が近北州軍に勝利するまでの間、近西州軍の足止めをすることであったのは、明白であった。


 バアニとしては、青年派の別動隊を撃ち破り、コステラ=デイラで蜂起する予定であったサレと、兵を合わせる手もあった。

 しかしながら、バージェ候だけではなく、近北公と大公の戦いの様子を、虎視眈々と眺めていたルンシ[・サルヴィ]の動きも気になり、青年派の別動隊を釘付けにして、セカヴァンに向かわせないという、最低限の役割を果たせばよいと考えた。

 その旨を早馬にて、近北公に報告したところ、公からは次の返答が来たらしい。

「我々は、今の大公のまつりごとからみやこびとを救うために、対等な立場で兵を挙げたのだから、すべて随意に動かれよ」

 近北公の書状にはそう書かれていたが、東左どの[ルウラ・ハアルクン]の添え状には、事細かに、近西州軍に対する指示が記されていた。

 その内容はまことに理にかなったものであり、バアニと意を同じくするものであったので、彼の行動の邪魔にはならなかったが、苦笑せざるを得なかったとのこと。

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