第114話 帝国、王国、獣人国の関係性


異世界生活270日目

 村に戻ってから約1か月が経過



 アマルディア王国内でのオーク大量発生事件。そして、北の勇者たちによる日本帝国発足の事実を知ってから1か月が経過していた。


 この1か月間、両国ともに目まぐるしい変動が起きている。



 まずは人の流れについてだが――



 王国にいる日本人奴隷の解放と、日本帝国にいる兵士および住民の返還は、概ね無事に行われた。


 王国が所有していた日本人奴隷2万人は全て帝国に送られ、奴隷からも解放されている。また、王国内で普通に生活していた日本人5万人のうち、3万人が移住を希望して帝国に移り住んでいった。

 あとの2万人は、まだ王国に残っている状態だ。とはいえ、日本人排除の風潮が強まっているので、これも時間の問題なのかもしれない。


 日本帝国に移動した日本人の住居については、王国に返還した住民の住まいを利用している。だが当然、それで足りるわけがない。移住者の半数は難民キャンプのような状態らしい。

 ただ、食糧については全く問題ないようだ。半年間にわたり貯め込んでいた分で、「2年は余裕でまかなえる」と皇帝(北の勇者)が直々に公言している。


 一方で、元辺境伯軍1万の兵士のうち、7千人が王国に返還された。残りの3千人は、軍団長となった辺境伯に付き従う者たちだ。

 もともと辺境伯領に住んでいた王国民は、そのほとんどが王国へと移っていった。その人数は約3万人。数百人は帝国に残ったが、これは帝国側についた兵士の家族たちだ。


 今後も変動するだろうけど、現状での勢力差はこんな感じ。


===================

『アマルディア王国』人口:90万人


王国軍:8万5千(北部防衛に5万を配備)

冒険者:5万人

日本人:2万人

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『日本帝国』人口:7万3千人


帝国軍:3千人

日本人:7万人(戦闘職2万その他5万)

===================


 国土防衛を除く戦力は、王国軍3万5千に対し、帝国軍3千。ここだけ見れば王国軍が圧倒的有利だ。

 しかし、日本帝国にいる7万の日本人は職業とスキルを所持。戦力についても、戦闘系のスキル保持者を2万も抱えている。このうち、対人戦可能なヤツが何割いるかによるけど、わりといい勝負ができるんじゃないだろうか。知らんけど。



 次に外交問題について――



 王国と日本帝国は、1年間の不戦条約を結んだ。これが簡単に破棄できるものなのか、呪術的な制約があるのかはわからないが……。



 王国と獣人連合国との関係は、とくに変わりない。お互い、外交官同士の交流も続いているそうだ。両国とも食糧問題に悩まされ、おいそれと攻めることもできない状態が続いている。



 あと、日本帝国と獣人連合国に関してだが……こちらは最近になって動きを見せている。


 つい先日のことだった。日本帝国側が、獣人領にいる日本人奴隷の解放と引き渡しを要求したのだ。その見返りには、一時的な食糧支援と、同盟関係の締結を提示している。その中には、互いの国にいる日本人の自由渡来も含まれていた。

 要約すると、「一緒にアマルディア王国を牽制しましょう。食糧も渡すから、いずれは一緒に攻めましょう」ってことだ。


 この要求に対して、獣人議会の返答はまだ無い。まあ……議会っていうか、隆之介がどう判断するかによるんだろうけど。



 ――と、まあこんな風に。


 私とは無関係なところで、物語の主役たちが動き回っている。


 誰が正義で誰が悪なのか。その辺りも含めてどうでもいいけど、情報だけはしっかり集めておきたいと思っている。






◇◇◇

 

「それじゃあ啓介さん、行ってきます!」



 今日は、うちの主力部隊が遺跡のダンジョンへ出発する日だった。


「ああ、桜もみんなも無茶だけはするなよ。――あ、それとあれだ。毎晩必ず定期連絡は入れてくれ」

「もう……啓介さん、心配し過ぎ」

「まあそう言うなよ。この面子で心配するなって方がおかしいだろ」

「ドラゴさん、あんなこと言われてるぜ?」

「ぬぬっ? 儂はてっきり冬也のことだと思ったがのぉ」

「オレじゃないですよ! なあ村長?」


「お前ら全員だよ!」と、言ってやりたいが……今日まで我慢してきたしな。黙っておいてやろう。



 このひと月、東の森ダンジョンでミノタウロスを倒しながら、20階層のボス部屋まで到達していた。


 とはいえ、桜や冬也なんかはあんまりレベルが上がってない。遺跡ダンジョンで上げ過ぎたせいで、ミノ程度では経験値が足りないのだ。

 だからと言って、20階層を踏破すると地上にミノが溢れてしまう。村は結界で守られてるけど、すぐ近くにミノがうろつくのもよろしくない。


 前にした約束のこともあるし、これ以上待たせるわけにもいかん。



 ――ってことで、レベルの高い者を選抜して遺跡のダンジョンへ遠征することになったわけ。遺跡までの結界は、数日かけて張り直しに行ってある。うん、めっちゃ疲れた。


「遺跡までのルートは前回と一緒だからな。ダンジョン入口の結界も拡げてあるし、生活用品や風呂桶も転送してある。桜も杏子もいるし、あとは何とでもなるだろ?」

「ありがとう。じゃあ行ってくるねっ」


 いろんな意味で心配になりつつ、意気揚々ようようと出かけていく連中を見送った。



「みんな嬉しそうにしてましたね」

「アイツらは戦いが大好きだからな。――ひょっとして、椿も行ってみたかったりするのかな?」

「私にとっては村が戦場です! あ、でも街にはまた行きたいかも?」

「そういやアイツら。結局、誰も街に行きたいって言わなかったな」

「あれから街に行ったのは夏希ちゃんだけでしたもんね」

「冒険者ギルドとかさ。冬也あたりは絶対食いつくと思ったんだけど……おいしい狩場のほうが重要らしい」

「皆さんもっと強くなって、村長の役に立ちたいんだと思いますよ?」

「まあそういうことにしとこう。――さて、私たちも村で頑張ろうか」

「はいっ!」



 こうして冬也たちは狩場で、私たちは村で、それぞれの戦いを続けていくのだった。




<遠征メンバー>

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冬也Lv83 桜Lv82 春香Lv80

秋穂Lv80 杏子Lv73 ドラゴLv80

ドリーLv77 ドルトLv74 ドレスLv75

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