巨人族の足跡

第7話 すべてを蹂躙する存在

 闇の地の巨人族は、すべてを蹂躙する。


 今時大戦で光の地に最も多大な損害を与えているのは、巨人族である。


 が、巨人族の繁殖能力は貧弱で、その絶対数も決して多くない。また、巨人族の戦士も決して不死身ではない。光の地の魔操師によって倒されることもある。


 だからこそ、魔王デルガドはこう思案した。


 異世界の巨人を闇の地へ連れていくことはできないか、と。


 *****


「ヒルダよ、面を上げよ」


 デルガドのその言葉に従い、彼の前に跪くヒルダはゆっくり顔を上げる。


 妖艶な魔操服に身を包んだヒルダは、その肢体から妖気を漂わせながらデルガドの姿を仰ぎ見る。


「ヒルダよ、お前は以前このようなことを申したな? “異世界にも巨人がいる”と」


「はっ!」


「異世界の巨人と、お前は会ったのか?」


 そう問われたヒルダは「畏れながら」と前置きし、


「異世界の巨人族を、この目で見たことはありません。が、魔王様。巨人が住んでいるであろう場所や跡なら、日本の各地に存在するとか」


「ほう」


 デルガドはヒルダを見下ろしながら、


「ならば、すぐにでも異世界の巨人族の生態を調査するのだ。どのような能力を持った巨人なのか、詳しく調べろ。闇の地の巨人と交配させ、より頑強な巨人を生み出せるかもしれぬ」


 と、氷のような口調で命令した。


 それに対しヒルダは、


「仰せのままに」


 そう返答しながら、残忍な微笑を浮かべた。

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