10:裏話あれこれについて

 本編、無事完結となりました。

 お付き合い頂いた皆様、どうもありがとうございます。

 以下、キャラクターや設定に関する雑多な備忘録を残しておきます。

 モチーフとなった既存の作品の名前が複数挙がりますので、元ネタ話などが苦手な方はご容赦下さい。

 また、ラストまでのネタバレを含んでおります。



【エイダン・フォーリー】

 風呂を沸かす火属性のヒーラー、という設定をまず思いつき、その上で出来ていったキャラクターです。

 火属性なら赤毛かな→じゃあケルト系のイメージで行こう→地方民だから訛りがあるはず、という感じの連想で、外見や喋り方の特徴が肉付けられました。

 基本的には温厚だけど、時に無茶をしてでも人助けをしようとする、という内面のモデルになったのは、「ファイナルファンタジー5」のレナです。

 大変動かしやすい主人公で、基本的にこの小説、一行先の展開も考えずに書き進めていたんですが、「彼はこの場面でどういう行動を取るか」がすんなり決まってくれるため、随分と助けられました。



【シェーナ・キッシンジャー】

 エイダンを主人公に据えるにあたって、この作品世界内で典型的とされる治癒術士を登場させる必要があり、彼女を最初の仲間に設定しました。

 エイダンとは属性もイメージカラーも逆で、「一発の威力は高いがすぐ魔力が枯渇し、使える術も少ない」エイダンに対して、「器用で多彩、小回りの利く技巧派」の魔術士になります。

 また、利他性と献身性が強く、共同体を重んじるエイダンとは対照になるよう、個人主義で自由を重んじる都会的・現代的なキャラクターとしました。

 当初、エイダンとくっつけてヒロイン的なポジションにしようかなとも考えたのですが、10話くらい書いた所で「絶対くっつかないわこの二人」と思い、終始姉弟のような相棒関係になりました。



【ハオマ】

 ヒーラー職といえば伝統的に僧侶でしょう、という事で登場させました。

 また、精霊王信仰など、作品世界内の文化描写を広げるために造形した所もあります。

 モチーフとなったのは、日本の琵琶法師。

 「耳なし芳一」などの怪談を元に和風伝奇ものが書きたいなと思って、設定だけ以前から温めていたキャラクターで、色々設定変更はあったもののこうして世に出せて良かったです。

 ハオマという名前は、ゾロアスター教の聖なる酒から取っています。



【フェリックス・ロバート・ファルコナー】

 13話で登場するコチ(コヨイ)がかなり天然なので、歯止め役がいるだろうと思い、またエイダンのライバルになるようなポジションを出そうと思って作ったキャラクターです。

 結果、何故かコヨイと同等に天然で全然歯止め役にならない上、全くエイダンのライバルでもない、まるで予定外のキャラになってしまいました。しかし割と気に入っています。深刻な場面でも明るくしてくれるし。

 エイダンが恋敵という誤解を解いていく場面とか、機会があればもう少し書きたかったキャラです。

 


【マデリーン(マディ)・ベックフォード】

 最初は男性として書いていたキャラクターです。

 彼女の後で登場する軍人のホワイトリー少佐と、堅物な性格や口調が大分被ってしまうので、性別を変更しました。パーティーバランス的には女性にして良かったかも。

 本編でははっきり書いていませんが、ホワイトリー少佐とはかつて恋人関係でした。また、エイダンの風呂屋の常連客であるオースティン大尉とも知り合いです。

 叩き上げのオースティンとエリートのホワイトリーでは反りが合わず、何度目かの喧嘩の際にホワイトリーがオースティンを侮辱、怒ったマディがホワイトリーを殴って別れ、オースティンを庇うために殴った理由を明かさなかった事で軍も除隊、という過去があったりします。



【コヨイ・サビナンド(コチ)】

 この作品内では珍しく、一応最初から正体を決めて登場させたキャラクターです。

 錆納戸さびなんどという語感が好きで苗字に設定しましたが、錆納戸色というと青緑に近く、シェーナとイメージカラーが被ってしまいます。という訳で名前に反して、コヨイの髪色と毛並は群青です。

 「昔のハリウッド映画に出てくる中国だか日本だか分からない東洋系の人物」というイメージで作り上げたので、喋り方がエセ中国人風となっています。

 ストーリー上は、彼女が正ヒロインポジションに最も近いと言えるかもしれません。



【ギデオン・リー・サングスター】

 第一部のボス的なキャラクター。

 エイダンが戦いの苦手な主人公なので、あまり絶対的な敵は出さずに話を進めたいと考えて、こういうポジションの人物を出しました。

 最初に「サングスター魔術学校」という名前を登場させた時は全く構想になかったキャラです。最後までストーリーに関わる事になって驚きです。

 彼のモデルはアメコミ映画「X-MEN」シリーズのプロフェッサーXです。つまり、もし演じて頂くならパトリック・スチュワート氏という事になります。絶対無理だけど。



【ヴァンス・ダラ】

 第一部のボス的なキャラクターその二。一応ラスボスに近いポジションでしょうか。

 当初「幽霊古城レイディロウ」のエピソードだけで終わるはずだったこの小説なのですが、そのエピソードの最後に「続けられたら続きます」という感じの謎を残して締めてしまい、実際続ける事になったので、急遽彼を作りました。

 イメージとしては、「HELLSING」のアーカードだとか、アニメ「巌窟王」のモンテ・クリスト伯爵だとか、言峰綺礼だとか……何故かCVが皆さん中田譲治氏ですが……そういう黒くてかっこいいボスキャラおじさんの複合です。

 いわゆる最強チートキャラなので書いていて楽しいですが、何でもありになってしまうので、登場させられるのは話を締める時だけです。



【ロイシン・マクギネス】

 実は母親のソフィアの方が先に出来上がっていたキャラクターです。

 11話で、エイダンが故郷に出した手紙の返事を読んでいる場面があったのですが、ここで「エイダンなら卒業した小学校の先生にも手紙を出すんじゃないか?」との疑問が残りました(それ以上この場面に文をけなかったのでそのままにしましたが)。

 そこから、何故恩師に手紙を出さなかったのか→何か悲しい思い出があるとか? という感じで、ソフィア・マクギネス校長のエピソードが生まれ、更に派生して、「恩師の一人娘で今はイニシュカ村を出ている幼馴染」というキャラが登場しました。

 ちなみに彼女は、外見のモデルがFF5のレナです。



【ホウゲツ・セッシュウサイ】

 コヨイの前半生について説明して貰うためのキャラクターとして登場させました。

 彼の体内透視能力「絵薬仙術えくすせんじゅつ」は「X線検査(レントゲン検査)」の駄洒落なのですが、思いついた時電車の中でちょっとニヤニヤしました。

 最初は、時代劇口調で真面目一辺倒なキャラにしようかと考えていたのですが、オタク風味にする事でお気に入りの一人に。

 名前の元ネタは浮世絵師の月岡芳年つきおかよしとしです。



【ノーマン・エドワーズ】

 外見イメージはロバート・ダウニー・Jr.だったりします。



【キアラン・オコナー】

 エイダンの喋る石見弁は、温和そうなイメージにするため多少女性的なものにしてあるのですが、キアランの石見弁は、現地で実際に男性が話すものにより近いかと思われます。

 キアランと会話する時のエイダンもそれに合わせて、シェーナ達と会話する時より心持ち砕けた口調になっています。エイダンが最もリラックス出来る友人が彼です。



【イーファ・オコナー】

 終章をあの形にしようと思いついたために登場させたキャラクターです。

 結果、第三部の話の軸が増えてしまい、大分苦労しましたが、何とか書ききれて良かったです。



【レヴィ二世(ビビアン)】

 イーファの物語を作りたかったのと、シルヴァミストという国家について多少描写しておきたかったために登場させたキャラクターです。

 前皇帝である母親とは三年前に死別、父はその数年前に母と離婚し賜姓降下しせいこうかしていたため、十歳で即位しています。

 父親はサングスター分家の人で、つまりギデオン・リー・サングスターと彼女は親戚関係にあります。



【サンドラ・キッシンジャー】

 第一部から設定だけは作られていたキャラクター。

 もう少し真正面から敵対する展開でも良かったかもしれませんが、話が暗くなりそうだったので、こういうポジションに落ち着きました。



【ラメシュ】

 最後のヒーラーパーティーメンバーとして登場。

 風呂を駆使して火の治癒術を使うというエイダンの能力設定には、「熱を通す事で魔術効果が出せるなら、料理の方が携行可能だし絶対便利」という大問題があったため、料理下手設定を加えた訳ですが、料理の治癒術士というのもそれはそれで面白そうと考えて、彼を造形しました。

 もう少し性格きつくても良かったかもしれません。割とすぐにデレました。

 彼とタマライについては書き足りなかったという反省があるので、機会があれば外伝でも書きたい所です。

 ちなみに出身地のモデルは南インド、特にタミル・ナードゥ州で、作る料理もなるべく南インドのものに限定しています。



【カリドゥス・カラカル】

 このキャラクターもちょっと書き足りなかったです。

 何しろ登場すると必ず話が深刻になるので、無茶苦茶扱いに困りました。

 エイダンのベクトル違いというか、線対称的な位置にいるキャラクターとして造形しています。

 魔杖将まじょうしょうを継いだ後、もう一度エイダンと会う話とかも考えたものの、本編とトーンが違い過ぎると思い、継ぐか継がないかも今後次第、という所でこの軸のストーリーを終える事にしました。

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