裏の道具を装備していくかい? 5
「ムツヤーヨーリィ、私の言ったこと疑ってるの?」
サズァンはみじんも怒ってはいなかったが、わざとらしく両腕を腰に当ててむくれていた。
「そんな、疑ってなんていませんよ!」
ムツヤは慌てて邪神に弁解する。その様子が可愛いものに思えてサズァンは目を細めてクスクスと笑った。
「っていうかあんた、何でヨーリィと同じベッドで寝てるのよ! 大丈夫ヨーリィ? 変なことされてない?」
マヨイギが心配そうに言うとヨーリィはふるふると首を横にふった。
「マヨイギ様、これはお兄ちゃんから魔力を貰っているだけです」
そうは言われてもマヨイギは心配でならない。
「マヨイギ様もご無事なようで何よりです」
彼女達は互いに心配をしあっていたようだ。そんな感動の再開の最中、ムツヤの部屋のドアを誰かがノックした。
「おい、何かあったのか?」
そして扉が開く、そこに居たのはアシノだ。
「あら、お久しぶり勇者さん」
サズァンはにっこりと笑い手をヒラヒラと振った。ということは隣にいるのは例の迷い木の怪物だろうとアシノは自分でも驚くほど冷静に、早く理解ができた。
「つい昨日会ったばかりだろう? 裏ダンジョンの邪神サズァン」
「そうよ、裏ダンジョンの主『邪神サズァン』よ!」
両手を腰に当ててえっへんと胸を張る。黒いドレスの様な服は胸元が開いており、その豊満な胸が強調された。
「何の用なんだ?」
アシノは少しばかり警戒をしながら言う。ムツヤに協力的だとはいえ、邪神は邪神だ。
「何よー、用が無かったらムツヤと話しちゃダメなわけ?」
サズァンはプクーっと頬を膨らませて怒っている、その言動はとても邪神だとは思えないものだった。
「まぁ、一応用事もあるんだけどね」
おどけた雰囲気を消し去り、サズァンは話し始める。そこには確かに邪神の風格があった。
「ムツヤー? 鞄の中に周りの道具の場所を映し出すガラスがあったでしょ? あれを使えば索敵もだいぶ楽になると思うわ」
「これですか?」
ムツヤは一枚のガラスの板を取り出した。「そうそう」とサズァンはうなずく。
アシノは後ろからそのガラス板を覗き込んだ。そこには周辺の精巧な地図が浮かび上がり、自分達が居る場所は赤い点がいくつも光っていた。
「この赤い点が裏の道具ってところか?」
「ご明察ぅー」
サズァンはアシノに向かってパチパチと拍手をする。
「ムツヤは使い方を知ってると思うけど、地図は遠くまで見渡すこともできるから、あとは頑張ってつかってね! あらやだ、魔力切れちゃうわ! またねー」
「はい、サズァン様!」
「ヨーリィ……」
マヨイギはヨーリィに何て別れの言葉を言えばいいか悩んでいた。すると、ヨーリィの方が先に口を開く。
「マヨイギ様、どうかお元気で。またお会いしましょう」
「え、えぇ、そうよね。またねヨーリィ」
少しの間しか離れていなかったにも関わらず、しっかりとしたヨーリィにマヨイギは嬉しさを感じたが、同時に少しだけ寂しさも覚えた。
すぅーっと光と共に消えていく二人、部屋に残されたムツヤ達は、とりあえず今日は休むことにし、アシノは部屋へと帰っていった。
この時は誰も、キエーウ以外に敵対するものが現れるなど知らずにいたのだ 。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます