ギルドマスター 3

「国王は国を強かった頃へと戻すことにお熱を上げている。そんな所に大量の強力な武器と薬が詰まったカバンを持ち込んだらどうなるかは分かるだろう?」


 ムツヤは分かっているのか分かっていないのか知らないが、真剣な顔をしている。


「キエーウによる亜人の殺戮よりも、もっと大きな犠牲者が出るだろう」


「そ、そんな! そんなのはダメでずよ!!」


 ムツヤは思わず立ち上がってそう言った。そんなムツヤをたしなめる様に1つ咳払いをしてトウヨウは言葉を出す。


「俺はだ、キエーウは確実にまたムツヤのカバンを狙うはずだと考えている」


「そりゃそうだろうな、これ以上裏の道具が流出しないようにするならカバンを燃やすなり切り刻んじまうなりって手もあるが」


「すみません、このカバンって何をしても壊れないんでずよ」


 アシノの案、カバンの破壊はあっけなく廃案になってしまった。


 これでカバンを壊してしまうという手は使えず、必ずどこかに保管をしなくてはならない事が決まる。


「カバンの一番安全な保管場所は、ムツヤが持ち続ける事だと俺は思う」


「確かに、カバンをエサにチラつかせりゃ裏の道具を持ってる奴等が襲ってきて探す手間も省けるってわけだ」


 アシノが軽く笑いながら言うと、モモは身を乗り出して言葉を放つ。


「そんな、ムツヤ殿をエサになんてっ!」


「まー、ムツヤ大好きっ子のモモには少し聞こえが悪かったか」


 アシノにそう言われるとモモは赤面はしたが、今回は否定の言葉が出なかった。くうーっと下を向いた後にアシノの方を見てハッキリと伝えた。


「えぇそうです、私にとってムツヤ殿は大切な方です。なのでムツヤ殿の身に何かがあったらっ!」


「まぁまぁ、落ち着きなよ」


 紅茶を飲みながらアシノは横目でモモを見た。ハッとして各々の表情を見る。


 ムツヤと何故かユモトまで少し顔を赤らめてモジモジとしており、それを見てモモは今更になって気恥ずかしさが襲ってきた。


「裏の道具の対処法はムツヤが1番良くわかっているはずだし、それに裏の道具と戦うなら同じ裏の道具があった方が良いはずだ。そのカバンと、先程の話で聞いたムツヤの腕前があればキエーウからカバンを守れるだろう」


 トウヨウは落ち着いた声で言う。彼ほどの実力者になると体格や歩き方などで大体の実力が分かる。


 ムツヤのそれは完成された見事なものだった、部屋に入ってきた一目で只者ではない事は感じ取っていた。

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