DLC33 学園祭
学園DLCの中で一番規模の大きいであろうDLC――学園祭DLC。
俺はその項目をタップする。
すると、まだ学園祭の季節でもないというのに、急に先生がこんなことを言い出した。
「みなさん、今年の学園祭は前倒しになりました! なので今日からみんなで準備を始めましょう」
「ええ……?」
DLCによる強制イベントかなにかだろうか……。
とにかくそういうわけで、学園祭の準備が始まることとなった。
学園祭といえば、前世の俺にはろくな思い出がない。
なにせ、前世の俺は高校時代も、ものすごい陰キャだったから、そんなものとは縁のない生活を送っていたのだ。
当然学園祭当日は欠席するし、その準備にも乗り気になんてなれるはずはなかった。
「学園祭だって! 楽しみね、ドルク!」
「あ、ああ……うん……!」
ルミナがそういって笑顔で俺に笑いかける。
それで、俺の不安は消し飛んだ。
昔とは違って、今の俺の周りには、たくさんの仲間がいるんだ。
だからきっと学園祭は楽しいものになるはずだ……!
それに、学園祭DLCにはなんとも俺の興味をひく文言が書かれていたからな。
「メイド喫茶DLCかぁ……」
「え? なに? ドルク」
「あ、いや……なんでもない」
するとみんなの前で先生が、アンケートを取り始めた。
「みなさん、学園祭でなにをやるか、誰か意見はありませんか……?」
「はい! モンスターバトルがいいです!」
「はい! ポーション屋台がいいです!」
「はいはい! ミスコンやりましょう!」
などとクラスメイトたちがそれぞれに意見を出し合う。
どれも魅力的な提案だったが、俺にはDLCを消化しないといけないという役目がある。
俺はみんなが騒いでいるのを横目に、DLCをタップした。
――――――――――――――
・学園祭DLC
Lメイド喫茶DLCセット
――――――――――――――
すると――。
まるでなにかに強制されたかのように、先生が黒板に文字を書きだした。
「はい、今年の学園祭では、我々のクラスはメイド喫茶をやります……!」
先生の言葉に、クラスメイトたちは大口を開けて。
――ポカーン。
「せ、先生……そのメイド喫茶とはなんですか……?」
クラスの委員長的なポジションの女の子が、挙手をしてそう尋ねる。
「メイド喫茶はメイドさんのいる喫茶です」
先生がそう淡々と告げる。
これはDLCの効力でそうなっているのだろうか……?
先生はメイド喫茶がなんなのか知っているのか?
先生の奇怪で唐突な言葉の数々に、生徒たちは困惑するばかりである。
ルミナたちは俺のオタクコンテンツを履修させてきたから、みんなメイド喫茶を知っている。
そのため、違った意味で驚いているようすだった。
レヴィンが俺に耳打ちしてくる。
「なあドルク……あれは君がなにかしたのか……?」
「えーっと……まあ、そうだ」
「なるほど……そういうことか……。ま、まあ私としてはルミナさまのメイド姿を拝めるので問題はないがな……! ぐふふ……」
などとレヴィンは興奮を抑えきれない様子だ。
ルミナのメイド姿はたしかに俺も見たいけど、こいつは本当にルミナが好きだな……。
だがまあ、俺としてはそんなレヴィンのメイド姿も楽しみなのである。
「なにいってんだ? お前もやるんだぞ……?」
「へ…………? な、ななななんだと……!?」
「当たり前だろ……?」
「く……貴様……! 図ったな!」
「まあまあ、いいじゃないか。きっとレヴィンもかわいいって」
「へ……!? な、ななななにゃにを言ってるんだ……!」
とりあえずレヴィンはこのまま照れさせておこう……。
そうこうしている間にも、生徒たちから疑問の声が上がり始めた。
「うちにもメイドはいるけど……メイド喫茶ってなんなんだ……?」
「メイドと喫茶店か……どうにも結びつかない……」
「ねえ、私がメイドなんていやよ! この高貴な私がメイドなんて!」
どうもこの世界の住人にとっては、メイドはあくまでも使用人というイメージのようだな。
だがまあ……だからこそ、この文化祭で俺がそのイメージをがらっと変えてやろう!
これを機に、異世界にメイド喫茶の概念を持ち込むのだ!
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