DLC29 入学試験


 俺たちは王立魔法学園の入学試験にやってきた。

 どうやら試験は単純に魔力量と、その魔法の才能を計っていくような感じらしい。

 試験会場に到着して、並んでいると……。

 ひときわ目立つ生徒がやってきた。

 金髪のつんつんの髪の毛をとがらせて、胸を張って威張り散らかして歩いてくる。


「どけ平民のくずども! 試験はこの僕から受ける……!」


「なんだ……あいつは……?」


 俺は思わず、そう口にしてしまう。

 せっかく俺たちがこうしてならんでいるのに、いきなり現れてそんなふうに言われると、気に障る。

 周りの受験者たちも、突然の男の登場に、ざわざわしている。

 しかし、教師たちはなにもいうことなく、その男を真っ先に試験場へ案内した。


「なんだあれ……」

「あれは……ジョーカーさまよ」

「ルミナ、知ってるのか!?」

「ええ……」


 ルミナが、あのさっきの男について説明をしてくれた。

 彼の名は、ジョーカー・グランミリオン。

 この国の有名な貴族家系の長男らしく、貴族のなかでは悪名高いそうだ。

 魔法の才能にはとても優れた一族らしいのだが、それを鼻にかけた言動がひどいらしい。

 まあ、それはさっきの態度を見ていれば一発だ。


「それではジョーカーくん、あの的をめがけて、魔法を見せてくれるかな?」

「はい! 僕がいままで外国留学で鍛えた魔法を見せてやる!!!!」


 ジョーカーはそう言って、的に手を向けた。

 なるほど、留学していたせいで、俺たちと同じく二学期からの入学というわけか。

 さっきはイキっていたようだが、お手並み拝見というところだな。

 試験会場は野外だから、並んでいる俺たちからもよく見える。


「うおおおおおおおおお!!!! 火炎延竜弾!!!!」


 ジョーカーがそういうと、彼の手のひらから大きな火炎の竜が、一直線に飛び出した。


「おお……!」


 俺もこの世界に来てかなり生きてきたが、これほど本格的な魔法をみることは初めてかもしれない。

 さすがは魔法使い一家なだけあるな。

 彼の魔法は、的を貫いて燃やした。


 ――ズドーン!!!!


「ジョーカーくん、さすがですね。合格です! あなたはAクラスで学んでください」

「よっしゃあ! まあ、僕がAランクなのは当たり前だけど……」


 そう言ってジョーカーは俺たちをにらみつけた。


「さあ、君たちのお手並みを見せてもらおうじゃないか。まあ、みんな僕の足元にも及ばないだろうけどね」


「ふん……」


 言ってくれるじゃないか。

 しかし、俺だって負けていられない。

 なにせ俺はステータスで言えば最強だからな。

 手加減をしたほうがいいかもしれないぐらいだ。

 俺は、ジョーカーの言葉をなんとなく聞き流していた。

 まあ、こんなやついちいち相手するまでもない。

 しかし、俺の仲間には挑発に弱いやつがいた。

 レヴィンだ。


「貴様……! 貴族だかなんだかしらないが、ルミナさまを侮辱することは許せんぞ!!!!」


 と、ジョーカーに食って掛かった。


「おいおい、なんだよ怖いな。そうまでいうなら、実力で証明してみせろよ」


 しかしジョーカーはそう言って、さらにレヴィンを煽りたてる。

 レヴィンはその安い挑発に簡単に引っ掛かった。


「よし、いいだろう。私の力を見せてやろう……!」

「お、おい……レヴィン。大丈夫なのか……?」


 俺は少し心配になる。

 だって、いくらレヴィンが手練れだといっても、それは剣での話だ。

 剣でなら一流のこいつも、魔法を使ってるところは見たことがない。


「大丈夫だ。私を誰だと思っている? ルミナさまをお守りするために、幼いことろからいろいろと学んできたんだ……!」

「そ、そうなのか……?」


 本人は自信満々だが、それが余計に心配だ。

 けっこうこう見えてポンコツなところがある女騎士だからな。


「うおおおおおおおおおお! ファイアボール!!!!」


 レヴィンはそう唱えた。

 さっきのジョーカーとは違う呪文だが、同じ炎系統の魔法だ。

 レヴィンの放った炎は、的をしっかりととらえた。


 ――ドガーン!!!!


 下級の魔法とは思えないくらい、的が激しく燃える。

 これはレヴィンの基礎魔力がそこそこ高いことを意味している。

 それを見たジョーカーは、少し額に汗を浮かべていた。


「ふ、ふん……ま、まあ僕にはかなわないまでも、なかなかやるみたいじゃないか。それだけできればまあ、入学くらいはできるだろうね……」


 そんなレヴィンのランクは……。


「レヴィンくん、君もAランクだ……!」

「やりましたよルミナさま……!」


 しっかりとAランクに入れたようだ。

 これでレヴィンは合格だな。

 同じAランクの判定が教官から下ったことで、ジョーカーの表情がさらにゆがむ。


「っく……ま、まあ……Aランクにも幅があるからな。その中身はピンキリだ。僕はもちろん、上の上だけど……。ほ、ほかの君たちはどうかな……? そうそう同時にAランクばかり集まるわけないからね……」


 なんだかさっきから腹立つなコイツ……。

 ここはいっちょ俺がバシッと決めて、ほえ面かかせてやるぜ!

 そう思った矢先、俺の前に、リィノが名乗りを上げた。


「次は私の番ね……!」

「だ、大丈夫なのか……?」

「うん、大丈夫よ。なんてったって私はエルフだからね。みんな、そこで見ていて……!」


 そしてリィノは、的の前に立った。

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