フランの帰国(12月12日分)

ハラドには着いたが、フランが探している防寒着はなかなか見つからなかった。

到着してから3日になるが、目的の物がないという。

俺に至っては、そもそも着られる大きさのものが揃わない。

オークは他種族に比べて体が大きいせいだろう。


やはり来年まで予定を伸ばそうか、とフランは言い出した。

だがここまで来て、今さら引き返すのは気が乗らない。

組合に行ってみると、北への護衛の仕事は余るくらいあるという。

何とかならないか、と毎日のように街を回った。


だが今日の昼になって、1羽の鳥がフランの所にやって来た。

手紙を運ぶ鳥で、足に細い筒があり、中に丸めた手紙が入っていた。


学者たちは大陸中を旅して研究するため、「翼と爪」と呼ばれる組合と同じような組織があるらしい。

だが基本はどこかの国に属していて、資金はそこから出るそうだ。

その国から呼び出されたので、戻らなければならないという。


頭を抱えるフランに、「俺は俺でどうにかするから戻れ」と言った。

金を絶たれると困るのは彼だ。俺は護衛で稼げる。

フランの探しているものは見つからないようだが、防寒着そのものはあるのだ。

それにまだ暑い今の内なら、行ってすぐ戻ればいいだろう。


「これ以上はあまり北に行かないようにね。すぐ戻るから」

と言ってフランは南東へと戻って行った。

一応うなずいて別れたが、そのまま北へ向かう仕事を受けた。

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