第30話 再会
「やっぱり、ガルド君は偉いわ。ちゃんとみんなのことを見てくれて──」
「いえいえ。俺だって、フィアネさんや先輩たちに見てもらったんですから」
そうだ。俺だって1人で来たわけじゃ無い。支えてくれた人、迷惑をかけてしまった人が一杯いて、それでここまで来ているんだ。
先輩たちは、政府から疎まれてしまい地方に転属という名の島流しにあってしまいいない。代わりになるかわからないけれど、少しでも後輩のためになるように、努力していきたい。
「そう言ってもらえると、私としてもとても嬉しいわ」
「ありがとうございます」
「私もね。似たようなことを考えていたの。このままじゃ、みんなバラバラになっちゃうって」
「そうですか……」
「ガルド君。私1人じゃ心もとないから、この状況を何とかするために、力になってくれるかしら」
「俺でよければ、よろしくお願いします」
そう言うと、フィアネさんが頭を下げた。俺も同じように、頭を下げる。
取りあえず、俺とフィアネさんの共闘体制ができた。
2人でギルドを、街をよくしていこうという取り決め。
それからも、話は弾んだ。どうすればいいかとか、内部事情の事とか。外から見ているだけじゃわからないことも、フィアネさんは教えてくれた。
話によると、今の政府はかなり強権的になっていて、何でも自分で決めようとしているらしい。
そこにいる人の話を、聞かないのだとか。
本当にこの国が、不安になってきた。
やがて食事の時間が終わり、会計。店の外。すでに夜も遅い早く帰りたい。
「ありがとうガルド君。私のお願いを聞いてくれて」
「いえいえ。こちらこそ、話を聞いてくれて助かりました。これから、よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をするフィアネさん。こっちこそ、俺達のことをここまで考えてくれていて本当に頭が上がらない。
こっちも、同じように頭を下げる。
そして互いに家へと帰っていく。
夜もすっかり深くなり、人気の少ない道を歩きながら考え事。
これから、大丈夫かな……。怪我しちゃったし。
一応、怪我をしてその間生活資金が困らないよう保険があるが、二人で暮らすには雀の涙。
貯金、切り崩すしかないのか……。
さて、どうするか……。
家に帰ってから、ウィンと再会。
ウィンは俺を見るなり強く抱きついてきた。よほど寂しかったようだ。
仕事の方は大丈夫だったか。おかしい所はないか聞いた。
「最初はちょっと驚いたけど、もう大丈夫です。頼れる先輩だっているし」
「それは良かったね」
そしてウィンの頭を優しく撫でた。頼れる人。それがいたという事実を聞いて安心した。
これなら、大丈夫そうだ。
それから、シャワーを浴びてウィンと一緒に寝た。
ウィンは、いつもよりぎゅっと俺の体に抱き着いてくる。やっぱり、さみしかったのかな。俺の胸に、顔をうずめる形だ。
暖かいからだ。柔らかい皮膚。ウィンのすべてを感じていると、全身が幸福感に包まれる。
疲れ切って、これから不安に感じていたこと。それがとろけてなくなっていくみたいに──。もっと抱いていたいと、心の底から思う。
心の底から、安心していく気分。本当に気持ちが良くて、俺はすぐに眠りについてしまった。
まず、今日は早く起きてウィンに食事を作った。
いつもウィンに頼りっきりだから、たまには俺が作りたい。
片手が使えなくて、簡単なものしかできなかった。
オレンジのジャムがあったので、トーストを焼いたのと、簡単な野菜スープ。
料理ができたところで、机に食事を並べて食べ始める。
「ウィン。味、大丈夫?」
「大丈夫です。とってもおいしいです」
ウィンが喜んでそう言う姿。見ていて本当に嬉しい。また、ウィンに尽くしたいという気持ちになれる。
それから、昨日食べるはずだった料理。コッペパンとコンソメのスープ、ウサギの肉の夕食を食べながら話す。
「ウィンが作ってくれた食事、本当においしいよ」
「あ、ありがとうございます」
ウィンは、顔を赤くして俺から目を背ける。恐らく、照れているんだ。
「ごめんね。家をこんなに開けちゃって。それに、夕飯まで食べれなくなっちゃって。さみしくなかった?」
「いいえ。ガルド様が留守にしている間、仕事を覚えるので大変だったので、この前ほどではありませんでした」
「それは、良かった」
やっぱり、ウィンが働く選択肢を取ったのは、正解だったと思う。
この前のように、孤独ではないからどこか表情が明るい。
怪我の間、仕事が無いわけではないが、今までと比べると家にいる時間は増えるだろう。
これまで一緒にいれなかった分、楽しい時間を過ごそう。
ウィン視点。
ガルド様が大けがをしてしまった。三角巾を腕に巻いて、いかにも痛そうな姿。腕の骨が、折れてしまったらしい。
話によると、致命傷ではないものの、完治するまでしばらくかかるのだとか。
それまで、体を張るような仕事は出来ないと告げられる。
ガルド様は、頭に手を当て苦笑いをしていた。後輩をかばって、仕方なくこうなったと──。
「大丈夫。ちょっと、家にいる時間が増えるだけだから。ウィンに迷惑は掛けさせない」
こんな痛そうでも、私のことを心配してくれるガルド様──。
私も、ガルド様の足を引っ張ることが無いようにしっかりとしないと。
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