第6話 剥ぎ取り。
「それで今からどうするの?」
クリスが聞いてきた。
「そんなこと言われても……思いつくのはまずはお金かなぁ。
俺はこの国のお金も持ってないからなぁ。先立つものが欲しい」
俺の財布の中に福沢さんと新渡戸さんと夏目さん、野口さんが数人いる。更には硬貨もあるが、当然この偉人たちはこの世界で通用しない。
つまり無一文。
「なら、剥ぎ取りやればいいじゃない。
ゴブリンはあなたが殺したんでしょ?
ゴブリンの服や下着は無理だけど、身に着けているお金や武器を回収すればいいのよ。
魔物や賊を倒したら持っている物は基本的に討伐者の物になるの」
「そういうことならば回収するかな。
あそこに居る奴隷商人の彼も?」
チラリとクリスのほうを見ると、
「私が許す」
と胸を張って言った。
恨みは怖い……。
まあ、当たり前か……。
俺はまずゴブリンの身に着けているものを集める。
皮の鎧が五着、錆びた剣が五本、木の弓が三挺、八匹分の装備って結構な量である。
お金も持っていたが、全部合わせても銀貨で五枚と銅貨七枚だった。
さて困った……馬も死んでいるから馬車は使えない。
これじゃ、せっかく剥がした武器や防具を放置していくことになる。
もったいない。
さて、できるかな?
俺は肩にかけたカバンに例の漫画の異次元なポケットをイメージした。
頼む……イメージ通りになってくれ!
皮鎧をカバンに入れてみると入り口と大きさが合っていないにもかかわらずスルリと入った。
ありゃ、何か視線を感じるが……。
後から俺を見て口を開けているクリスが居た。
「クリス、口が開いているぞ?
あっ、ついでにヨダレも……」
俺に言われて気付いたらしい。
ジュルリと腕で涎を拭くと、
「えっ、ああ、えっ?
どうなってるの?」
こんなに焦るってことは、こっちにはデフォルトで収納カバンは無いのだろうか?
とりあえず、
「俺のカバン……結構入るから便利なんだ」
そう答えておいた。
当然嘘。
クリスの許可をもらったので……まあ別に無くても剥ぐつもりだったが……下着を残して奴隷商人の持ち物を剥ぐ。
手に入れたのは皮の鎧と錆びてない剣だった。
あとブーツを手に入れる。
サイズはダメだね……俺には合わないのでさっさとカバンに入れる。
財布には……金貨二十八枚と銀貨四十一枚と銅貨五十四枚が入っていた。
大金?
他の奴隷でも買うつもりだったのかね?
ゴブリンたちのを足して金貨二十八枚と銀貨四十六枚と銅貨六十一枚が財布にある。
「クリス、こんだけで食事付きの宿で何泊できる?」
クリスに小袋に入ったお金を見せる。
「うーん、普通の宿で二~三年ぐらいは暮らせると思う」
おお、長期滞在可能。
しばらくは生きてはいけそうだ。
「そういえば、クリス、お金持ってないよね」
奴隷にされていたクリスはお金をもっていはずもなく、
「返してもらった袋の中に財布は無かったわ」
言って少し残念そうなクリス。
「金貨五枚と銀貨十枚持ってて」
俺がはお金を差し出した。
「えっ何で?」
クリスが驚いて聞く。
「いつも一緒に居ることを心がけようとは思うが、別々になった時に急に金が要るかもしれないから……ってのが本音かな」
俺が、そう理由を言うと、
「でもね、普通は奴隷にお金持たせたりはしないのよ?」
呆れたようにクリスが言った。
「俺は奴隷扱いしないと言っただろ?
だから持っててもらえるかな?
やっぱりお金は無いと困る」
俺がそう言うと渋々ながら
「わかった」
と言ってクリスはお金を受け取るのだった。
ちなみに、クリス先生の話では、
この国には貨幣が四種類あるらしい。銅貨が一リル、銀貨が百リル、金貨が一万リル、白金貨が百万リルってな具合だ。鉱物が変わると百倍って感じだね。銅貨が一枚で一リル。話だとパンが二~三個だから、百円ってことにしよう。だから、銀貨が一万円、金貨が百万円、白金貨が一億円ってとこ?
現在所持金、金貨十八枚と銀貨四十六枚と銅貨六十一枚。十八万四千六百六十一リル、千八百四十六万六千百円なり。
結構金持ちでいいのかな?
俺の換算って合ってるのかね?
ちと微妙? まあいっか……。
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