第百四十五話 <骸龍器>
◆
千差万別の効能を持つ
武装系、道具系、スキル系、常在系、召喚系、変身系、珍しいところだと複数人での使用を前提とした共有系や、概念干渉に長けた法則系、真神級以上のボスからのみドロップする
まぁ、一つで色んな系統の要素を持つハイブリッド型とか、あまりにも特異過ぎて分類不能の烙印を押される天啓もあるから、一概に「この天啓はこうだ」と言い切るのは難しいんだけれど、
では、<
姿形の変化、ステータスの増強、その種族固有の特性の追加に、固有スキルの使用権解放――――旦那の<
そしてゲーム時代のザッハークもまた、そんな『落さない』ボスの一種だったのである。
契約を結ぶ事も出来なければ、
幸い落す天啓がどれも強力だったから、天啓面でのハズレ枠扱いこそされなかった(言うまでもないが二十五層規模ダンジョンのボスとしての総合評価は大ハズレである)が、それでもそのビジュアルと戦闘時の理不尽さ加減のインパクトに当てられたプレイヤー達から『なんでザッハーク使えへんねん』とツッコミを受ける事はままあった。
未実装だったザッハークの変身系
俺しか知らない、俺だけの天啓。
そんな激レアアイテムを手に入れたんだって気づいた時には、思わず全身が震えたね。
だってそうじゃんか。
ゲーム時代には無かったこの世界オリジナルの(しかも多くのファンが夢見た理想)の変身アイテムだぜ。
んなもん手に入れちまったら、オタクはそりゃあはしゃぐさ。
はしゃいで、はしゃいで、はしゃぎまくって
そうして、ようやく
◆第六試合:清水凶一郎VS火荊ナラカ(ステージ・荒野)
このフィールドには主に三つの色があった。
空の青。
大地の黄土。
燃え盛る炎の赤。
そしてそこに今、新たな
底のない奈落のような黒さと、熟成された病毒を思わせるような毒々しい紫色。
我ながらなんて汚いオーラを出しやがると、嘆息を漏らしながら彼女を見やる。
遠目からは良く分からないが、目に映る火荊の姿が心なしか小さい。
彼我の距離幅は大体三百メートル。
これだけ離れていると、たとえ五十センチ身長が伸びたところで、見え方に大差はないな。
すごく小さな人影が、ものすごく小さな人影になったくらいの微妙な違い。
「よう、待たせたな」
俺は紫色色の外骨格に覆われたゴツい腕をヒラヒラと振りながら、準備の完了を相手に伝える。
どんな姿になっても、挨拶は大事だからな。
変身バンクを大人しく待っていてくれていた相手に対して
「おい、待て」
瞬間、俺の視界が白色の炎で覆い尽くされた。
《
彼女の苛烈さを象徴するかのような超高温の熱術は、変身成り立てホヤホヤの俺の身体に見事直撃。
いや、参ったね。
これだけの“息吹”に囲まれたら、周りが視え辛くてしょうがねぇや。
「ちょっと火荊さんよぉ」
俺は全身を
「幾ら俺を倒したいからって、こいつはちょっと張り切り過ぎじゃねぇか」
一歩、一歩とちんたら歩きながら、白炎の道を歩いていく怪獣もどき。
熱くもないし、痛くもないし(まぁ、痛覚は元からオフってるんだが)、各種生命器官も全くもって問題ないが、それでも全身を燃やされるのはウザったいものだ。
「そもそも、変身シーンの後にいきなり攻撃ってのがなってない。普通はここでやられ役が『な、なんだソレは……お前は一体!?』みたいな感じの良いリアクション取って、そこを俺が『
「――――っ!」
俺のどーでもいい話に飽きたのか、それともあまりにも効かなさ過ぎて苛ついたのか、実際のところは分からない。
だけど事実として、火荊はここで攻め方を変えてきた。
《
火荊ナラカの絶技が一つ、【
極限まで圧縮した熱エネルギーを、龍の霊力を使って一気に解き放つ“無差別爆撃”
たった一発でも、あの広大なコロッセオを跡形もなく吹き飛ばしたヤバい代物を、この短期間の内に三つも作ってたっていうのかよ。
「こいつは驚いた。やるじゃねぇか火荊さ――――」
俺の
大気を切り裂き、弾丸のようなスピードでこちら側へと迫る三つの【
「俺さぁ、昔から憧れてたんだよね弾丸キャッチ」
「こう、なんていうかさ。ただ避けて倒したりするよりも、渋カッコいいっていうか、強者感が出るっていうか」
一つ、二つ、三つ。
僅かながら緩急のつけられた三つの小型殲滅兵器をヒョイヒョイと摘まみ上げて指の間に挟んでいき
「ほら、格の違いってやつが分かりやすく伝わるでしょ」
轟音。
三つの【
乱れる気流、吹き荒ぶ爆風、解き放たれる爆圧。
その規模、その威力、その熱量、どれをとっても一級品だ。
『タロス』程度であれば、【
だが
「うっわ、
だが効かない。
紫黒の身体も、紫白の外骨格も、
これには流石の火荊も驚いたようで、その
「――――――――!?」
「別に驚くことじゃないさ」
炎と爆発で荒れ果てた大地を踏みしめる。
焼け爛れた地面の感想は、一言で言うと『ゲログチャましましチリチリ濃い目』、まぁ決して気持ちの良いものではないが、今まで経験した事がないような肌触りなので
「【
あの時、あのコロッセオでの最終局面において、火荊はフィールドの全てを爆ぜ尽くしてみせた。
敵も、
「すげぇ技だ。威力もさることながら、爆心地に立っていたお前が一番ピンピンしてたって事実が何より
だけどそれは、裏を返せば“龍”であれば耐えられるということ。
人の理は、龍には通じない。
彼らの持つ
「
<
遥さんの
そして<
《二秒後に火荊ナラカの周囲にファフニールが発生、更にゼロコンマ三秒後、火荊ナラカがファフニールへと騎乗、空域への離脱率九十六パーセント》
「そいつは、ちょっと面倒そうだな」
足腰に力を入れて、走る。
かの邪龍王の
「悪いがお前の相棒には、早々にご退場頂くよ」
そして予知通りに現れた
ファフニールは決して弱くない。
精霊としての位階はザッハークと同じ亜神級上位であり、種族も同じ龍。
故に本来であれば、これだけ容易く、そして一方的な決着とはならなかっただろう。
「……ウソ」
「嘘じゃねぇさ」
俺は呆然と
「俺の就いている『
『
その効能は、一定の戦果判定を満たした行動に応じて特別な『カウント』を与えるというものだ。
この『カウント』は一度の戦闘につき
「戦闘開始時の攻防で二つ、【
怪物化した四本の指を天につき立て、バトル中にべらべらと能力を語りだす馬鹿な敵キャラの真似をする。
なんでそんなことするのかって?
そりゃあ
「今の
彼女にしっかりと現実を見てもらう為さ。
――――――――――――――――――――───
・<骸龍器>:
変身系統の天啓。伏した邪龍王の骸を基に
紫白の外骨格と、紫黒の龍麟で覆われた骸の怪人に使用者を変幻させる。
この時の凶一郎は、身長二メートル五十センチ、龍と人の頭骨を混ぜたような顔面に尻尾付きという完全な化物と化す。ゴリラというよりゴジラである。
この天啓の能力は主に三つ。特性『
また本天啓最大の利点として、術者の霊力を使用せずに稼働できるため、この状態の凶一郎は、《時間加速》、【四次元防御】、【始原の終末】といったアルビオン由来の固有スキルを問題なく並行利用する事が可能。
そして連続稼働時間はおよそ三時間。
故に<骸龍器>が時間切れによる
また、使用者の霊力を分ける事で充電及び時間延長も可能。逆に<骸龍器>に貯蔵していた
この時の凶一郎は、相変わらず遠距離攻撃の出来ない仕様でこそあるものの、《亜音速機動》かつ『
・『
戦況を変化する事に長けた者に発現しやすいロール。
固有スキル名は『
戦況を覆した数によって、術者に祝福を齎す自動発動型常在能力。
『戦況を覆す』という状況の具体例は作中で本人も言っていた通り①戦闘中に敵の攻撃を無効化する、②華麗なカウンターとか決めたりする等といった形の極めて広範囲かつ多岐なもの。
凶一郎の場合は、絶対無敵の防御スキル【四次元防御】や最大九十倍の『早さ』で動けるようになるスキル《時間加速》、そして何よりも常時『
この『戦況を覆す』行為を術者が満たす度に、『
「カウント」は近接種の基本バフ術とは異なり、乗算で現在のステータス及び数値化できる特性(『龍鱗』等)を上昇させる。
上昇率は一「カウント」につき一律1.3倍、これを術者は好きなステータスに割り当てることができる。また、上限値である「カウント5」達成時のみ、特別なカウントが貰える。この五番目の効能は【全ステータス倍加】
つまり<骸龍器>を使用時にこのカウントを『全て特定のステータスに使用した場合の最大値』はかの邪龍王の約5・6倍。正真正銘の化物である。
なお、これだけの機能を備えておきながら、<骸龍器>にはデメリットもリスクもない。使いきったとしてもバッテリーが切れるだけで、半日ほど時間を置けばまたフルスペックで使う事ができる。
ダンジョンの神の宣告通り、邪龍王は使用者にとってこの上なく都合の良い道具となって生まれ変わったのだ。
・お知らせ
明日、お注射を打ってきます。暖房器具は高確率で副作用を起こすと思いますので、次回更新は一回休ませて頂いて6月6日にさせて頂きたく思います。ごめんよっ!
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