第25話 ヒーラー、行商人を拾う

「ふぃ〜〜緊張したよぉ……」


 セシリアは窮屈だった空間が出ることができ、身体を伸ばしていた。

 俺たちは王との話が済んで、バール城から出て街の方へと歩いていた。国の中央広場まで来ると、魔物によってボロボロにされた広場周辺の住宅の補強作業などが至るところで進められていた。改めて見るとエンシェントドラゴンの被害がかなり酷かったことを改めて感じることができる。俺たちの泊まる宿は中央広場から少し離れている為、被害には遭っていない様だった。


「では、私はパーティの仲間の様子を見に行ってきますね。病院に運ばれてると思うのでそちらの方に行ってきます。それでは」


「おう、ルミナもお疲れ様」


「またねルミナーー!」


 ルミナは軽く手を振り返す。俺とセシリアは中央広場でルミナと別れ、俺たちが泊まる宿屋へと向かっていた。すると正面から見覚えのある赤いマリンキャップを被った小さな女の子がとぼとぼ歩いてくる。


「あ、お前ら……」


「パトラちゃんだ! 大丈夫だった⁉︎」


 そう、俺たちをこの国に入れてくれた行商人のパトラだ。

 ぱっと見てどうやら魔物の強襲に巻き込まれていない様で安心した。しかし、どこか元気がない様子だった。パトラもこの国で雇用先を探すと言っていたのだがどうしたのだろうか?


「オイラ、お前達のいない間に色んなお店を回ったんだけど、中々見つけられなくて……でも一軒だけオイラを雇ってくれる所を見つけたんだけど、突然の魔物の強襲でそのお店が壊されてしまったんだぞ……それで……経営が困難になったから雇用の話は無かった事にされちゃったんだぞ……」


 パトラはしょんぼりとした顔で俯いていた。俺とセシリアは顔を見合わせる。セシリアとおんなじ事を考えている様でアイコンタクトを取ってきた。俺はパトラの顔を上げさせ、ぷにぷにのほっぺを優しく摘んで、笑顔を作らせた。


「な……何するんだぞ……」


「パトラ、俺たちと一緒に冒険しないか?」


「ふぇ?」


 パトラは俺の言葉で鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。


「でも、オイラ戦えないぞ?」


「戦わなくて良いんだ。お前は俺たちについて来てお前の本業である行商人をしてくれ。俺たちがダンジョンから持ってきたアイテムとかを売ってお金に替えたり、俺たちができない交渉とかをしてくれれば良い。それに、仲間は沢山いた方が冒険は楽しいだろ? それに、お前を雇用してくれる店探しにもつながるかも知れないぞ? どうする?」


 パトラは俺の顔を見た後、セシリアの顔を見る。セシリアはパトラに優しく笑顔を返す。その笑顔は一緒に行こうという気持ちの表しだった。


「オ、オイラで良かったらお前たちの冒険に連れて行ってくれ‼︎」


「よし、決まりだな! これからよろしくなパトラ」


「よろしくね♪ パトラちゃん!」


「おう! オイラ、お前達の為に精を尽くして商売するんだぞ!」


 パトラの顔に笑顔が戻ってきた。パトラを真ん中に挟み、俺とセシリアと手を繋ぎながら俺たちの泊まる宿屋へと向かった。

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