第24話 四神災害~ダンジョンディザスター~
「大臣! この者達に与える褒美を持ってまいれ!」
「かしこまりました」
そう言って小太りの大臣が横の部屋に合図を出すとメイド達がそれぞれ、人の形を模した人形を運んでくる。
その人形は男性と女性2つの形があり、それぞれに武器と防具が身につけられていた。
「フール、お主には魔法詠唱時間、魔法射程、魔力の上がるユニークアーマー、『大魔道のローブ』と回復魔法の効果を向上させるユニークウェポン『
そうしてメイドが人形から服を脱がせ、俺にローブを着させてくれた。そして、杖も俺に渡してくれた。ファイアロッドとは違い、先端にはキラキラと輝いたパールが埋め込まれている杖だ。回復力も上がるのでヒーラーらしい武器だ。
「そしてセシリア、お前には薄手で軽量だが防御力、素早さが上がるユニークアーマー『戦乙女ノ装束』、そして武器だが、これまた珍しい物が入ったのだ。一つは雷属性が
セシリアへ2本の武器が渡される。柄が黄色の刀を鞘から抜くとバチバチと電流を帯びていた。そして、柄が緑色の刀を抜くと、抜いた途端に周囲の大気を纏い、風が吹く。
「凄い! 面白いこれ!」
セシリアは目を光らせて、耳をピクピクと動かす。どうやらその二つの武器を気に入ったようだ。
「それではセシリア様、お着替えを致しましょう。こちらにいらしてください」
「はーーい♪」
セシリアは服を着替える為にメイドに連れられて部屋から出て行った。
「そして、ルミナ。お前には自身の防御力を底上げする『強固なプレートメイル』と周囲の者を守る結界を生み出すことができる大盾のユニークウェポン『結界大盾』を与えよう」
ルミナはメイドから渡されたプレートメイルを着ようとするが、ルミナの豊満な胸が邪魔をして鎧を着ることが出来ない。どうやらサイズが合わなかったようだ。
「む……胸が、入らない……」
「申し訳ございません! サイズが合わないようでしたね……よろしければご一緒に試着しながらお決めになられますか?」
「は……はい、お願いします……」
ルミナは恥ずかしそうに胸を押さえながら、メイドと一緒に部屋を出て行ってしまった。
女の子は着替えが大変そうだな。
ルミナとセシリアが出て行ってしまい、俺だけが王の前で取り残されてしまった。一人になると少し心細く感じるのは気のせいだろうか。
俺がきょろきょろと辺りを見回し、落ち着かない様子を察して王が声をかけてくる。
「フールよ、安心せい。楽な姿勢で待っておるのだ」
「は、はい。ありがとうございます」
バール王の優しいお声がけに少し落ち着きが戻ってくる。やはり、民から親しまれているだけのことはあった。
そして、数十分が経つと着替えを終えた二人が戻ってきた。
「見て見てフール!! この服『ワフク』って言うんだって!! 可愛いでしょ?」
セシリアは服を見せびらかすようにくるっとその場で回る。
「あの……似合ってますか?」
ルミナはみんなに見られて、もじもじとしていた。
セシリアは薄手の生地で作られた赤と黒のデザインが綺麗な布の衣服を身にまとっていた。肩が出ているため綺麗な白い肌が露わになっており、下も丈が短いのでスカートのようになっている。細い足には白い二―ソックスを穿き、きれいな白い艶のある太腿がちらちらと見えていた。
ルミナは頑丈そうなプレートメイルなのだが、胸元に丁度穴が開いており、ルミナの大きな胸の谷間が見える作りになっていた。これはこれで……良いな……
「似合っているぞ2人とも」
「えへへ〜〜♪」
(フールに褒められちゃった♡)
「あ、ありがとです♪」
(うぅ〜〜胸元がスースーして恥ずかしいです……)
俺が2人を褒めると2人とも笑顔になり、ご満悦のようだ。
俺は褒美を貰うことができ、改めてバール王へとお礼を伝える。
「王よ、感謝いたします」
「うむ……ところでフールよ。話はかなり変わるのだが、今回のエンシェントドラゴン襲来の件について話したいことがある。エンシェントドラゴンの様なS級モンスターは用心深く慎重な魔物がこの街を襲うなど今まではありえん事だ。考えてみてはどうだろう、滅多に表に出てくることのない魔物が外にわざわざ出てくる事はおかしい事であろう?」
確かに、王の言う通りダンジョンを根城にする知恵のある魔物が国の方へ出向く事などおかしいのだ。もしかすると自分が居たダンジョンから出ざるを得ない状況があったのかもしれない。
「そこで我らは考えた……S級モンスターを超える存在が生まれたのではないのかと」
王の言葉に側近達はざわつき始める。S級モンスターを超える存在……それはこの世界の古い書物の中で出てくる伝説の生物とされているモンスターだ。
「我が考えたこと……それはこの世界に
その4体の魔物の実力は四神というだけあってS級を超えるS S級モンスターとされている。四神災害は作られたダンジョン内の魔物を自分勝手に襲い、追い出したり、殺したりする。今回のエンシェントドラゴンの件ももしかすると四神の1体と力比べに負け、自身のダンジョンから逃げ出て来たと言う事だろう。
更に、四神災害によって周囲の魔物生息の環境に変化をさせてしまうこともある。それによって、魔物の生態系も変えられてしまうのだ。魔物にとっても人間にとっても厄介な奴らである。
「そこでだフール、我が国を救った実力のあるお前達に四神災害の調査、討伐の命を与えようと思うのだ。勿論、只ではない。この国が総力を上げてお前達に支援をしよう。そして、命を最後まで全うした暁にはお前の願いを叶えてやろう。どうだ?」
SS級モンスター……書物でしか読んだ事しかない、神話に出てくる様な魔物を倒すことができるのだろうか……それにセシリアを危険な目に晒すことになる。俺はどこか戦う事に恐怖を感じたが、その様子を見たセシリアが俺の頭に手を置いてくれた。
「フール、私のこと心配してくれてるの? さっきから私の顔チラチラ見てさ……言ったじゃない、私は貴方のパーティの前衛だって。だから、私はフールがいるところならどこにでも行く! フールとなら頑張れる! だから、怖がらないで!」
セシリアの言葉に俺はさっきまでの恐怖がまるで聖母にでも抱かれ多様な感覚になり、安らいでいく。
「ありがとうセシリア」
そう言って俺は王の方へと顔を向き直した。
「バール王よ、その命……このフールにお与え下さい。しかし、条件が一つだけあります」
「申してみよ」
「俺たちはあくまでも冒険者です。ギルドでも精鋭隊でも無いのです。私たちは自由に冒険し、自由に生きたいのです。その傍らで四神災害の討伐を行う事をお許し下さい」
そう、俺たちはあくまでもただの一般冒険者パーティだ。誰にも縛られず、誰にも邪魔されたくない。また新たな心持ちでこの世界を冒険したい……そう考えていたから。
すると、バール王は目の前で大きく笑ってみせた。
「はっはっは! 何を申すかと思えばその様な事か!無論、四神災害が本当に存在しているかもまだ定かでは無い。我らも調査隊を発足する予定である。好きに冒険し、好きに世界を歩くが良い。ただ、もし冒険の中で四神が現れた時……お前たちの事を呼ぶやも知れぬ……良いな?」
「はい! その時は必ず討伐して見せます」
「うむ! 良くぞ言った! 冒険をするのであれば荷馬車を授けよう。荷物も人も十分に入る大きさの物を準備しておこう。旅立つ時にもう一度城門へ来るが良い。今日はお前達に宿を取った。今日はもうそこで休むと良い。……以上だ、四神の事……よろしく頼むぞ……」
俺たちは王の言葉に頷き、一礼をしてこの謁見の間から出て行こうとする。
「我が国を救った冒険者フールとその仲間に光あれ!」
王のその言葉を聞きながら、俺達はは両開きのドアを開きその謁見の間を後にした。
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