第12話 【2日目午前】鳥乗
王女様の手を取り、アソの背に乗せようとしたまさにそのとき、侍女の1人がこちらに駆け寄ってきた。さきほど大隊長たちに意見を述べていたあの女だった。彼女は王女の手を取った。
「姫様、どうかご無事で。 私はガバリエーレ様のトリに乗せて頂くことになりました。 明日には姫様のもとに参ります。 なのでどうか、どうかご無事で・・・」
「申し訳ないが時間がない。 別れの挨拶はそのへんで。 早くしないと手遅れになる」
女はコルテロを見た。先程は後姿しか見えなかったが、面と向かって見てみると度胸の据わった良い眼をしている。彼女は肩にかけていた鞄をコルテロに差し出した。
「姫様のための飲み薬と包帯、それと着替えです。 あなたに渡しておきます」
「・・・この薬と包帯は市場で買えない物なのか?」
「え?包帯は別に・・・この飲み薬は王宮専属の薬師が作ったものだから簡単に手に入るものではないわ。 どうしてそんなこと聞くの?」
「なら、その薬だけ寄越せ。 市場で手に入る物なら、移動中に調達する。 今はできるだけ荷物を減らしたい」
彼女は何かもの言いたげな顔になったが、黙って鞄の中から薬の小瓶を取り出した。小瓶を手渡すと、彼女は深々と頭を下げた。
「姫様をどうかよろしくお願いします」
「任せろ」
彼女は顔を上げると、名残惜しそうに踵を返した。その瞬間、胸元に光るものが見えた。
「おい、その首から下げたペンダント。 そんなもの付けて鳥乗したら、飛行中に事故が起きるかもしれない。 外すなり、服の中に入れるなりした方が良い」
「・・・ありがとうございます。 友人からの形見なんです、これ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
王女を乗せ、俺もアソの背に飛び乗った。アソの背に掛けられた鐙に体重を乗せた瞬間、俺はある違和感に気付いた。だが今は時間がない、このままいくしかない。
「姫様、今から俺と姫様の体を縛ります。 少々荒っぽい飛行になりますから、飛んでいる際はこの紐から絶対に手を離さないでください」
「おい! コルテロ!!」
ボスに呼ばれて振り返ると、手のひら大の包みが2つ飛んできたので、慌ててキャッチした。 持つと2つとも、ずっしりと重い。
「路銀と例の試作品だ! 道中は何があるか分からない! 持っていけ! ラゴ支部にはもう伝書鳩を飛ばしてある! 死ぬなよ!」
「ありがとうございます! ボス!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます