第088話 ようやく出会う
―バシャバシャバシャッ
気を失っている男を無の大地の外にある川に運び、放り込んだ。周りは綺麗な河原が広がり、長閑な風景が広がっている。
「ゴボボボボボッ。ぷはーっ!!」
皮にぶち込まれた途端に目を覚ます男。川はそこまで深くなく、起き上がれば足がつく。
「おっ、目を覚ましたか」
「一体どうなってんだこりゃあ!!なんで俺はこんな所にいるんだ?」
元気に体を動かす男。どうやら怪我なんかは大丈夫そうだ。
「よう。どうやら体は大丈夫らしいな?」
「あん?誰だお前は?」
俺が尋ねると、警戒した様子で俺を睨む男。
「あんたが調べに来たって言う無の大地の牧場の主だが?」
「へぇ。あんたがね。あぁ体は問題ねぇ。それよりなんで俺はこんな所にいんだ?」
俺が少し不満げに言ってやると、川の中で体をゆらゆらさせながら俺の顔を品定めするように俺に眺めつつ質問をする。
「お前が臭いからだ」
「はぁ?」
こいつホント臭かった。血の匂いと全く風呂に入っていない上に汗をかいてそれをそのままにしていたような匂いだ。
なんでそんなに臭くなるまで風呂に入っていないんだ!?
「お前体拭いたりしていないだろ。相当臭かったぞ。牧場内にある川に入れるのも嫌だったから外の川に連れてきてやったんだ。ありがたく思え」
そんなやつを牧場内の清らかで美しい場所に入れたくなかった。めっちゃ汚れてしまうからな。
「げぇ!?ここは無の大地の外かよ。モンスターが襲ってくるだろ!?」
「そんなもんいねぇよ。さっさと体を洗え。話はそれからだ」
何を驚いているか知らないけど、この川の周りにモンスターの気配は見当たらない。さっさと洗って綺麗にしてほしい。
「へいへい」
「俺はアイギスだ。よろしくな」
「俺はバッカス。無の大地調査隊の隊長だ。少しの間世話になるぜ」
「全く世話になる前提かよ。遠慮も何もないな」
自己紹介してなかったので見下ろしながら名乗るとバッカスも名乗った。しかも俺に世話になる気満々だった。
俺は呆れてしまった。
「遠慮なんてものは当の昔に捨てたぜ」
それでも悪びれる様子のないバッカスに俺は毒気を抜かれてしまった。
「へいへい。寝床くらいなら用意してやる」
なんだか憎めないバッカスに、俺は呆れつつも肩を竦めて世話をしてやることにする。
「やっふぅ!!話が分かるな!!それで、酒はあるか?」
「少しならな」
「やったぜ!!二週間以上飲んでなくて死ぬところだったんだ」
「酒も出してやるからさっさと体を洗え!!」
酒があると聞いて子供の用にはしゃぐバッカス。俺より明らかに年上なのになんだか孤児院の弟たちのような感じがしてついつい乗せられてしまった。
「へーい!!」
バッカスは一度川を上がって鎧を脱ぎ始める。
「ん?そっちの嬢ちゃんは?」
鎧を外している途中でバッカスがソフィに気付いた。
「我はソフィーリア・オニキス・ドラクロアだ。分かりやすく言えば居候であろうな」
ソフィがその形の良い胸を張って尊大に自己紹介をする。
「ふーん。そうか。だが、あんた……強いな?」
まじまじとソフィを見るバッカスだが、その可愛らしさやエロさに惹かれて見ているという様子ではない。暫く見ていたと思えば、彼の口から出てきた言葉は予想外のモノ。
どうやらソフィの強さを感じ取ったらしい。
「我の強さが分かるとは中々であるな。うんうんこれが普通なのだ」
「後で手合わせしてもらってもいいか?」
どうやら自分の強さを分かる人物がいたことが嬉しいらしくソフィは満足げに首を振った。腕の上に乗った二つの果実もブルンと揺れる。
相変わらずとんでもなく男を引きつける力があるな。
「ふん。プリムごときに負けた若造など相手するに値せんな」
しかしソフィはバッカスを全く相手にしない。なぜならバッカスはプリムにあっさりと破れてしまったからだ。
「あ、あれは突然だったからで!!」
言い訳するバッカス。
「言い訳無用だ。プリムにも勝てぬようでは我に等到底無理な話だ。プリムとアトモスに勝てたのであれば考えてやろう」
「くっそー!!分かった!!絶対だからな!!」
しかし、その言葉をバッサリと切り捨てて条件を付けるソフィに、悔しそうにしながらもどこか嬉しそうにしているバッカスの顔が印象的だった。
「いいかげんさっさと体と服を洗え」
「へーい!!」
話が中々進まない二人をみて俺がしびれを切らして促す。バッカスはソフィの居る前で服も脱ぎだした。
これは俺の失態だ。
「ソフィは見てはいけないな」
「なぜだ?」
俺はソフィの目を俺に手で覆うと、表情は見えないが、おそらく不思議そうに首を傾げるソフィ。
「見たいのか?」
まさか男の裸に興味があるのか?ソフィはドラゴンだが、今は女の子の姿だ。曹宇いう場合は好みも変わるのかもしれない。
「いや、有象無象の裸など興味はないが」
「ならいいだろ」
「お主がそういうなら仕方あるまい」
ソフィは特に見たいわけでも無さそうなので俺はそのままソフィの目を覆い続け、彼女もそれを受け入れるのであった。
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