僕らのスタンド・バイ・ミー

シロクマKun

第1話

 ヨースケが道でタヌキを拾ったらしい。


「はぁ? タヌキって……、あのタヌキよね?」

 俺のスマホに届いたヨースケからのメッセージを見た若菜ちゃんが、怪訝そうな顔で聞いてくる。

「あのタヌキだかそのタヌキだか知らないけど、タヌキはタヌキじゃね?」

 自分で言ってて良くわかんないけど。

「へぇ、タヌキってこの辺に落ちてるの?」

「いや落ちてないってば。 普通に歩いてんじゃね?」

「……ここ、そんなに田舎じゃないのに? むしろ都会だよ?」

 まあ、そうだよね。

 俺も実際見た事ないし。

「取り敢えず、ヨースケが連れて来るって言ってるからさ? 待ってみよ?」


 てな訳で俺、アキラと可愛らしい若菜ちゃんはヨースケを待つ事にした。

 因みに俺たち3人は、同じ小学5年の仲良しトリオである。



 そして待つこと数分、ヨースケとタヌキらしき物体が現れた。


「……なんか思ってたのと違う……」

 そのタヌキらしき物体を見た若菜ちゃんが呟いた。

 俺も激しく同感である。

「タヌキってもっと犬っぽくなかったっけ? なんでコイツ、二足歩行なん?」

「ねぇ、アキラくん。その前にコレってさぁ、よくお店の前とかに置いてるヤツじゃない?」

「……あ、そうだ。ナントカ焼きの……え〜っと、今川焼きだっけ?」

「今川焼きは食い物だよ。てか、一部の地域では大判焼きとか回転焼きって言わないと伝わらないからね? そんでコレは信楽焼きね」

 と、ヨースケになんかエラソーに突っ込まれてしまった。


「あー、そうそう。おっきいタマ○ンがトレードマークのアレだー」

 って、若菜ちゃん? ドラ○もんで言うとしず○ちゃん的立ち位置の君がタ○キンとか言わないで欲しいな、頼むから。

「で、その信楽焼きがなんで歩いてんだよ?」

 俺はその置物をコンコン叩きなが尋ねる。

 そう、このタヌキはヨースケが抱えて来た訳じゃなく、自分で歩いて来たのである。

 だいたい大きさは俺らの身長の半分くらいもあるから、抱えるのも無理そうだし。

 で、叩いてると変な声が聞こえてきた。

『……ちょっ、あんまり叩かないで下さいよー』


 ……は? 今コイツ喋ったよね?

「うげっ、しゃべるのコレ? キモっ」

 って若菜ちゃんもドン引きしてるし。

「そーなんだよ。ほら、スゴイでしょ?」

 と、何故か自慢気なヨースケがなんかムカつく。


「お前、なんなんだ?」

 この置物のタヌ公、どうやら会話できそうなんで尋ねてみた。

『あ、ワタシ、みらいから来たタヌキ型ロボットでして……』

 うわぁ、いきなり胡散臭くなってきたぞ? ってか、その設定いいのか?


「なんでタヌキ型なのよ?」

『いやぁ、このカッコだといろいろ何かやってくれそうな万能感あるでしょ?』

「ないわ。むしろ、コイツやらかしやがったってパチモン感しかないわ」

 マジでどうにも怪しい。ホントに未来のロボットなんだろーか?


「それでタヌキンはどうしてここに来たのよ?」

 ……なんか若菜ちゃんがテキトーな名前で呼び始めたちゃったし。

 ってかそのネーミング、かなりコイツの下半身に引っ張られてるよね?


『えっ、それワタシの事ですか? 私、緑野って言うんですけど……』

「緑野タヌキ? またふざけた名前だな」

「そーよ。タヌキンの方がかわいいから、タヌキンでいいわよ」

「…………」

 誰も若菜ちゃんには逆らえないんで、コイツの呼称はタヌキンに決まった。

 ただ目を細めると別のもんに読めそーなのは黙っておこう。


「でね、このタヌキンさんは彼女さんを探してるんだって」

 と、ヨースケ。

「はあ? あんたタヌキンのクセに彼女なんかいんの?」

 いや、若菜ちゃん。君が命名したんだから「の○太のくせに……」みたいな言い方しないであげて?


『はあ、すいません。赤井さんっていうキツネなんですけどね、彼女』


 赤井キツネに緑野タヌキか……。

 壊滅的に合わなさそーに思えるのは気のせいだろーか?


「だから皆でタヌキンさんの彼女を捜してあげない? どうせ暇でしょ?」

 暇とか言うなよ。めっちゃ暇だけど。

「うーんまあいいけど、キツネなんかどーやって捜すんだよ? そのキツネの特徴とかないん?」

『はぁ今は多分、人間に化けてると思うんですけどね』

「どんな感じに?」 

『えーっと、吉岡○帆みたいな感じですかね』

「…………」


 それ絶対アカンやつやん。

 もろ別メーカーやん。

 そこパクったら流石にヤバいやん。

 

 ……聞かなかった事にしておこう。


「まあ、吉岡里○は置いといて、どの辺にいそうなんだ?」

「キツネなんだから、神社とかじゃない?」

「この辺で神社っていったら、日清神社、まるか神社、明星神社、東洋神社あたりかな?」

「よし、なら東洋神社にしょう。他は行ったらなんか怒られそーな気がする。なんとなく」


 という訳で俺達は一番遠い東洋神社を目指して歩き出した。

 

 ……が、結構距離あるんで直ぐにバテた。


「うー、遠過ぎるっ。おいタヌキン、未来のロボットならなんか出せんの? 四次元ポ○ットとかさ?」

『はあ、まぁ似たよなもんで良ければ』

 なんだ、ホントにあるのか。ならもっと早く出せばいいのに。


 で、何かごそごそと取り出したのはマジックペンみたいな物だった。

 それでポヨンとした腹にポケットの絵を描いていく。


『二次元ポケット~(ダミ声で)』


「……腹に絵描いただけじゃんっ!」

『そりゃ二次元ですから。なんなら三次元ポケット~(ダミ声で)もありますよ?』

 そう言いながら脇の辺りのちっちゃなフタを開けるタヌキン。

「ちっさっ。小銭しか入んないじゃん。てか、いちいちなんでダミ声になるのよ?」

『えっ? それは、昔からある様式美とゆーか……まあ、あなた方が生まれる前の世代の話だから、ピンと来ないのは無理ないですが』

「お前、未来から来た癖になんで昔の事に詳しいんだよ? ホントに未来から来たのか?」

『本当ですってば』

「タイムマシーンで?」

『いえ、東急東横線で』

「…………」


 みなとみらいじゃねえかっ

 (注,作者は関西人なので間違ってたらごめんね)

 電車で来たのかよ?

 よく、車内不審物で通報されなかったな?


『嘘は言ってませんよ? ちゃんとひらがなで「みらい」って言ってますからね?』

 くそ、遡って確認したらほんとに平仮名で言ってやがる。確信犯かよ?





  

 ◇◇◇◇



 そんなこんなでようやく東洋神社に辿り着いた。

 一行で着いたけど、大冒険だったんだぞ? 念の為。 


 境内へと続く長い長い階段を登り切った時にはもう皆ヘロヘロだった。


「うーん、もうダメだ。腹が減ってちからがでないよぉ」

 ヨースケが、顔が汚れたアン○ンマンみたいな情けない声を上げる。

「そういえば、朝から何も食べてないわよね。あたしももうダメ〜」

 若菜ちゃんもタウンか。俺だって倒れそーだ。


『食べ物ならありますよ? ほら、緑のたぬき3個〜(ダミ声で)』

「わあすっごい。もうお湯も入れてあるじゃない? 気が利くわね」

「助かった〜」


 タヌキンが取り出したソバに群がる若菜ちゃんとヨースケ。

 だが、ちょっと待て?


「お前、今どっから出した?」

『えっ、袋からですが?』

「……玉の?」

『……玉の』

 こいつ、キ○タマ袋から食い物出しやがった。


「なによ、神経質ね? たかがタマ○ン袋から出したくらいで。あたしは食べるからね?」

 い、いや、若菜ちゃん?

 コ○ンで言ったら、あゆ○ちゃん的立ち位置の君がそれ言う?

「アキラが要らないんなら、僕が食べるよ?」

 と、ヨースケにも言われてしまった。

「食うよ! 食いますとも!」

 空腹の勢いで蕎麦をかき込む。


「う、うめえ……」

 悔しいけど目茶苦茶美味かった。

 空腹と心地良い疲労感。

 澄んだ空気。

 暖かな日差し。

 吹き抜ける爽やかな風。

 そして何より仲間と共に食べるというシチュエーション。

 おそらくこれは生涯忘れられない一杯になるだろう。


「いいよね、なんかスタンド・バイ・ミーみたいでさ?」

 ヨースケが呟く。

「だね。ちょっと冒険しちゃったよね」

 若菜ちゃんも嬉しそうだった。

「シタイを探しに行くってヤツか。うん、そーだな」

 俺も同意する。


 と、タヌキンも割り込んできた。

『ほほう、いいですね。私も彼女とシタイです。ハッハッハ』


「…………コイツ、殴っていい?」

 初めて三人の意見が一致した。





 ――その時である。

 突如として神社の上空にUFOが現れた。


「はぁぁぁぁ⁉ いきなり⁉ なに⁉」

 テンパってきょどるヨースケ。


「ど、どうしよ、アキラくん!」

 俺に抱きついてきた若菜ちゃんが叫ぶ。

「なんか無性に焼きソバが食べたくなったんだけど!」


 知るかっ!



 やがてUFOの下の方から眩い光が放たれ、その光の中から美しい女性が現れた。


「あーっ! 吉○里帆!!」

 若菜ちゃんが叫ぶ。


 ふと横を見るとタヌキンの姿も変化を遂げていた。

 丸い眼鏡を掛けた男性の姿に……。


「た、タヌキンが星野げ……もがもが」

 叫びかけたヨースケの口を慌ててふさぐ。


 コイツら、いくらなんでもふざけ過ぎだろ?

 どんだけ東洋さんにケンカ売ってんだよ?

 せめて武○鉄矢にしとけよ?


 渦巻く光の洪水の中、タヌキンの星野……もとい、緑野タヌキと赤井キツネが抱き合い、そのままUFOの中に吸い込まれていく。

 二人がコッチを向いて笑顔で手を振っているのが、かろうじて確認できた。




 そして現れた時と同様に、突然フッとUFOの姿が消えて無くなった。

 後に残ったのは口をあんぐり開けて呆然と立ちすくむ俺たち三人と、空になった緑のたぬきのカップが3つのみ。






「……なんか、キツネとタヌキにまんまと一杯食わされたよーな……」

 と、ヨースケ。

 いや、三杯食ったけどな?

「……えーっと、一応ミッションコンプリートよね?」

 若菜ちゃんがそう聞いてくる。


「うーん、まあ……?」




 


 ……ヨースケと若菜ちゃんにジト目で見られた。


「あーあ、散々引っ張っておいて、そんなうっすいオチでいいの?」

 若菜ちゃんの辛辣な言葉が突き刺さる。


 そ、そうだけど、最後ぐらいマルちゃんに媚売らないとね?


 いたたまれなくなった俺は思わず走り出す。






 境内を駆け抜ける時、お稲荷さんの石像が俺を見てニヤリと笑った気がした。









    完








 












 




 


 

 


 

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