其れは、かりそめの祝福だと、はじめから理解していた
其れは、かりそめの祝福だと、はじめから理解していた。
ルビィに似た鉱玉のピアスをつけ、ユールは静かに目蓋を伏せる。
なんのために、誰のために、祈り続けているのか、もうわからなくなっていた。
記憶の底にねむる“弟”は、どれほど祷っても、目覚めない。
うつろな心を引き摺って、神父は天を仰いだ。
2023/4/6
星降る夜にさよならを
月食堂掌編録 聖河リョウ @seigaryo
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