ありもしない記憶を、歌うように口にする

「今度は、一緒に寝台で眠ろうね」

雲ひとつない青空が広がる初夏の朝だった。兄さんの、リボンを結ぶ手が、ふと止まる。

「ソファはすこし疲れてしまうでしょう」

「……狭いだろう」

「そんなことないよ。くっついてねむればいいんだ」

昔もやっていたじゃない。ありもしない記憶を、歌うように口にする。


2022/7/24

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