夜天に浮かぶ欠けた月は、時折こうして地上の民をもてあそぶ

闇を裂く光は月がみせるまぼろしだ。夜天に浮かぶ欠けた月は、時折こうして地上の民をもてあそぶ。

「きみのかけらは、どこへいったんだい」

「青い空の果て。今はなき理想郷に置いてきたよ」

白い指先がぱきりと月の端を折る。洋盃に沈めれば、ぱちりと音を立てて弾けた。

「友達の墓標代わりさ」


2022/6/29

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