触れた先にあるものを、彼らはまだ知らなかった

触れることを禁じられていた。

標本の内に宿る透明な結晶は、宿主に半永久的な命を与える。核と呼ばれる其れは、かつて世界に君臨した人間の心臓に等しい。

「どうしても、だめ?」

甘い声でねだっても、友は首を横に振るばかり。

「無事に卒業してからね」

触れた先にあるものを、彼らはまだ知らなかった。


2022/5/16

結晶庭園

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