星をみたでしょ。僕、あんなにきれいな夜天をみたのはじめて

「きのうは、たのしかったね」

朝露に濡れた薔薇の花弁が揺れる。中庭を行く少年の足取りは重かった。

「昨日」

「星をみたでしょ。僕、あんなにきれいな夜天をみたのはじめて」

"弟"は無邪気に両腕を広げ、空を仰いだ。

「あれは、」

ただの夢だ。夢であってほしかった。寝台で繋いだ手の温もりが離れない。


2022/3/14

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