公爵家よどうなっている

 オリヴィアがレオンに対して言葉を濁していたのが、この侍女らのためだとしたら。

 やるせない気持ちで、レオンは妻の優しさを想う。


 聴取を続け、侍女らの話を統合すると、オリヴィアがこの公爵家に来てから置かれていた状況が鮮明に見えてきた。



 オリヴィアは公爵家に来た初日から、歓待されるどころか、嫌味に晒されている。

 どうしたら公爵家に仕えながら、公爵夫人にそのような上からの物言いをしようと思えたか、レオンにはとても理解出来ないことであったが、侍女たちは堂々とそれをした。


「初夜さえも拒絶されるなんて、おかわいそうに」

「たったの一晩も共に過ごしたくないと思われているのだわ」


 この件に関しては、レオンも非を認めている。

 実際は顔色の良くない妻を早く休ませたかっただけだとしても、侍女なのだからそれくらい分かるだろうと詳細な指示を怠ったのだ。

 普段から気に掛けて来なかった使用人たちと、言葉なくとも意志の疎通が出来ると信じたレオンは実に愚かであったと言えよう。


「公爵家に相応しい身なりをされておりませんもの。旦那様がお相手なさりたいと思うはずがないわよ」

「これで伯爵家のご令嬢だったなんて。本当なのかしらね?」

「領内の平民でも、もっと綺麗にしているわ。伯爵家にはそれほどに余裕がないということかしら?」


 これについても、レオンは非を認めていた。

 他家のことだからと婚約中に覚えた違和を追求してこなかったのはレオンである。

 もっと早く動いていたら、出来たことは多々あろうし、オリヴィアも長く苦しまなくて済んだのだ。



 と、このようにして話を聞くほど侍女らへの怒りを強めながら、同時に自分に対してもそれを抱え、内外に向けた怒気が爆発寸前となりながらも、レオンは実態を把握するためだと己を諫めて、侍女らから根気良く話を聞き出していった。


 侍女たちはすぐに嫌味だけでは足りなくなり、オリヴィアに対してもっと直接的な嫌がらせを行うようになる。



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