白夜行⑤

 出会ったのは、丁度今、自分たちが居るところ。

 雪菜が自らの命を絶ったこの場所だ。


「怖くなかったのかって言われたら、きっと怖かったんだと思う」


 でも、雪菜を初めて見た時、それ以上の感情が胸を渦巻いていた。

 それはとても一言では言い表せるようなものではない。

 少なくとも三つの感情があったのだろう。

 胸打つ悲哀、胸焦がす憤怒、そして――最後の一つは、当時は自覚すら出来ていなかった。


「一目惚れかい?」


 威吹が茶化すように笑う。

 この状況を招いた自分が言うのも何だが、酷く不釣合いなリアクションだ。

 よく知るはずの親友なのにまったくの別人ではないかという錯覚を受ける。

 内心の困惑を押し殺しつつ、亮は苦笑気味に答える。


「まあ、結果から見ればね。

でも、あの時はそれが分からなかった……怒りの方が大きかったように思う」


 自分が首を吊った木の下で縛られ、佇む雪菜。

 その酷く悲しげな顔にどうしようもなく怒りを抱いた。

 ”この人がこんな顔をしていることが許せない”――と。

 威吹が指摘したように既に惚れていたから、惚れた女を苛む悲しみが許せなかったのだ。


「衝動のままに話しかけたよ……まあ、無視されたけど」


 あの頃の雪菜はただ恨めしげに自分を見つめるだけで何も言ってくれなかった。

 結局、夜明けまで語りかけ続けたが日が昇り始めると彼女は消えてしまった。


「でも、僕は諦めなかった」


 次の日の深夜もこの場所を訪れ、雪菜に語りかけた。

 やっぱり無視された。

 でも諦めなかった。


「次の日も、その次の日もって粘着してたら雪菜さんも答えてくれるようになったんだ」

「年下の男の子の健気な姿に絆されたってわけかい?」


 その言葉と視線は亮ではなく、その腕の中に居る雪菜に向けられていた。

 どこか小馬鹿にしたような態度に亮が何かを言おうとするが、雪菜がそれを止める。


「そうね……私もきっと、寂しかったんだわ」

「そりゃまあ、無念の内にくたばったんならね」


 誰の目にも触れず、誰と言葉も交わせず、誰の温もりを感じることもなく、ただそこに在り続ける。

 それは紛れもない地獄だと威吹は言う。

 嘲りの中に混じる一点の曇りもない温かな憐憫。

 並び立つとは思えない感情を極自然に宿すあの少年は……本当に、自分の親友か?


「あなたは……」

「俺のことは良いよ。それより続きを聞かせてくれ」


 威吹の視線は未だ雪菜に注がれている。

 彼女に語れと言っているのだ。


「最初は、そんなつもりではなかったわ。一握りの慰めに、そのつもりで亮さんと語らっていた」


 それ以上は決して求めていなかった。

 雪菜の言葉に嘘がないのは、亮が誰よりも知っている。


「そしてその慰めも、いずれ終わらせねばならないとも分かっていた」

「分かっていたけど、中々手放せなかった?」


 雪菜は小さく頷いた。


「……彼の優しさに甘えているという自覚はあったわ。

日に日にやつれていく姿を見ながらも後一夜、後一夜だけって。

でも、それでも、私は断ち切ろうとした。自己弁護をしているわけではないわ」


「そうだよ。雪菜さんが言ってくれたんだ、僕はもうここに来るべきじゃないって」


 雪菜にそのつもりはなかったことは知っている。

 それでも、生きる者と死せる者。

 交わってはならない両者が交われば代償を支払わねばならない。

 これ以上は危険だと彼女は自分を突き放そうとした。


「でも……」

「受け入れられなかったんだね?」

「うん。僕にはどうしても許容出来なかった――――雪菜さんを一人にしたくなかったんだ」


 例え、この身が枯れ果てようとも構わない。

 雪菜を一人にすることに比べれば命”程度”惜しいものだとは思わなかった。


「お前……!!」


 黙って話を聞いていた潤が食って掛かろうとする。

 しかし、威吹がそれを視線だけで切って捨てた。


「そして、アンタもそれを受け入れたと」

「……ええ。間違っていると分かっていても……それでも……」


 その真っ直ぐな想いがあんまりにも優しくて。

 凍え切ってしまった魂を温かく包み込んでくれたから。


「それで懇ろになってヤっちゃったと――――童貞卒業、おめでとう」


 先越されちゃったよと小さく拍手する威吹。

 どう答えたら良いのだろうか?

 助けを求めるように雪菜を見るが、彼女は困惑気味に首を振るだけだ。


「まあ、この夜に至るまでの経緯は分かった。じゃあ次だ」

「次?」

「お姉さんのことだよ」


 ニヤァ、と威吹の顔に裂けるような笑みが浮かぶ。


「お姉さんが誰かを怨みながら”めそめそ”と死んでいったのは分かる。

でも、誰を怨んで? 何をされて? それを知りたいんだよ」


 亮は一瞬、呆気に取られたが直ぐに怒りも露に叫んだ。


「威吹!!」

「分かりました! 話します! 話しますから亮さんには何もしないで!!」

「雪菜さん!?」


 雪菜が腕の中から飛び出し、自分を庇うように威吹に立ち塞がった。

 困惑する亮をよそに威吹はへえ、と感心したように頷く。


「こっち側の存在だからか。知らなくても何かを察したのかな?

まあ、ありがたいよ。俺も殺すつもりはないけど、流石に親友を傷付けるのはね」


 瞬間、周囲の木々がバラバラに切り裂かれた。

 何が起きたのかは分からない。

 しかし、威吹がやったことだというのは分かった。

 言葉を失う亮や潤をよそに、雪菜は青い顔を更に青褪めさせながら語り始める。


「御堂修哉……という男を知っているかしら?」

「いや知らないね。有名人なの?」

「そいつ自身はそうでもないけれど、父親は祖父は有名人よ」


 父、御堂修二。

 祖父、御堂新太郎。

 学生でも一度はその名前を聞いたことがあるはずだ。


「御堂修二……確か、今の防衛大臣だっけ? んで御堂新太郎は……」

「元総理大臣。息子に基盤を譲り渡し一線を退いた今でも政界に強い影響力を持つ影の首領ドンよ」

「それそれ。黒い噂もあるけど、清濁併せ呑む豪腕とかどうとかって結構、評価高いよね」


 威吹の言う通り、御堂修二と御堂新太郎にはアンチも多いがファンも多い。

 実際、亮も雪菜と出会うまでは何となくその二人に対し好感を抱いていた。


「で? そんな立派な父ちゃん祖父ちゃんを持つ修哉くんがどうしたの?」

「……私、彼と同じ大学に通ってたの」

「へえ」

「最初は普通に友達をやっていたわ……でも、でも……!!」


 雪菜の顔が苦痛と絶望に染まる。

 身体は気の毒なぐらい震えていて、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。


「ッ……ゆ、雪菜さん……!!」

「はぁ……はぁ……ッッ」


 雪菜の身体から漏れ出す黒い靄が亮の心身を苛む。

 それでも彼は臆することなく雪菜を抱き締め、必死にその痛みを受け止めようとしている。


「ああ、なるほど。大体、察したよ。修哉くんは典型的な屑のボンボンだったのね。

で、その屑にお姉さんは女として耐え難い陵辱を受けたわけだ」


「威吹ィ!!」


 無遠慮な言葉に遂に堪忍袋の尾が切れた。

 そんな亮に向け威吹は一言、こう告げる。


「少し黙ってろ」

「ッ!?」


 瞬間、金縛りにあったかのように身体が硬直した。

 驚きながらも何とか抗おうとするが、声も出せないし指一本動かせない。


「だい……大丈夫、大丈夫だから……私は大丈夫だから……」


 雪菜は亮の腕を擦りながら自分に言い聞かせるように何度も大丈夫と繰り返す。


「ふぅ……ごめんなさい……続きを話すわ。

当然、私は警察に被害届を出した。けど、警察は中々動いてくれなかった。

それだけならまだしも被害届を取り下げるように言ってきたの。

私が被害届を取り下げずに居ると、御堂修哉の弁護士が私を訪ねて来たわ」


「示談か」

「ええ、結構な額を提示されたけど私はそれも蹴った」


 御堂修哉が許せなかったから。

 すると、御堂修哉――と言うより、彼のバックは強硬手段に打って出たのだ。


「圧力をかけられて父と母、兄が職を失ったわ」

「それはまた……」

「でも、私は諦めるつもりはなかった」


 被害者本人が駄目ならその家族を。

 最低のやり方から透けて見える、

 御堂サイドの意識が自分の怒りを掻き立てたのだと雪菜は言う。


「罪を犯したなんて意識が欠片もないからあんなことが出来る。

絶対に許さない。トコトン戦い抜いてやる。家族もきっと同じ気持ちだろうって私は思ってた。

でも現実は違ったわ。これまでは私を支えてくれていたのに、職を失った途端、家族は私を詰り始めたのよ。

余計なことしてくれたな、これからどうすれば良いんだ、お前のせいだって」


「それで心が折れて自殺を選んだ、と」


 雪菜は小さく頷いた。

 威吹は何かを思案するような顔をしていたが、亮の存在を思い出したのだろう。

 パチン、と指を鳴らして金縛りを解除した。


「ッ……はぁ……! おい威吹、君は一体……」

「ねえ亮、君は自分が今どうなっているのか。これからどうなるのかを理解してる?」


 食って掛かろうとする亮を無視し、威吹は問いを投げた。

 無視されたことに苛立ちつつも、亮は答える。

 それぐらいは分かっていると。


「もう長くはないだろうね。頑張っても五月の半ばを越えられるかどうか……」

「認識が甘いね」

「え」


「死期については間違ってない。でもさ、亮、こう思ってるだろ?

例え死んでも幽霊になって一緒に居られるならそれで良いってさ」


 その通りだ。

 強い思いが霊をこの世に縛り付けるのなら自分は大丈夫。

 雪菜への想いが自分の成仏を阻むと亮は疑いもなく信じていた。


「なれないよ。亮は幽霊にはなれない。

どれだけ強い未練があろうとも、魂は既にボロボロだからね。

霊体になってこの世に留まるだけの余力はもうない」


 威吹は断言した。

 何でそんなことが分かる! と理性は叫ぶ。

 しかし、亮は本能で理解していた。威吹の言は真実であると。


「天国や地獄にも行けやしない。

ああいうのは良い意味でも悪い意味でも選ばれた人間を隔離する場所だからね。

かと言って、他の凡百の魂と同じく死して大きな流れに還り新生を待つことも出来ない。

そこへ還る途中で力尽き、燃え尽きて消滅するのが関の山。

今死ねば話は違うけど、お姉さんと一緒に居続けて死ぬのなら不可能だ」


 さあ、どうする? 威吹の目はそう言っていた。

 亮は二度ほど深呼吸をした後、ハッキリと自らの答えを告げる。


「……それでも、良い。終わりまで寄り添う」

「亮さん……」

「僕は雪菜さんを愛しているから、だから最期まで一緒に居る」


 恐怖がないと言えばウソになる。

 だが、それ以上に雪菜を一人にはしたくなかった。

 自分が死んだ後に訪れる孤独を思うと、胸が張り裂けそうになる。

 それでも、離れられない。離れたくない。


 嘘偽らざる真の想いを吐露した亮に潤が食って掛かる。


「良いわけねえだろ!? 考え直せ! お前は生きてるんだぞ!!!」

「……そうだね。でもさ、僕はこれ以外の道は選べない、選びたくないんだ」

「馬鹿! お袋さんや親父さんはどうする!? それに俺や威吹も……」

「申し訳ないとは思うよ。でも、家族や親友よりも……大切なんだ。愛してるんだよ」


 言い争う二人。

 やがて業を煮やした潤が傍観していた威吹に向かって叫んだ。


「お前も何とか言えよ! 俺はお前の話、全然わかんないけどさ!

このままだと死ぬより酷い目に遭うんだろ!? なのに何黙ってんだよ!!」


「…………俺さ、潤のことも亮のことも親友だと思ってるよ」


 困ったような顔でそう語る威吹は、完全に亮の知る威吹その人だった。

 先ほどまでの妖しく恐ろしい雰囲気は完全に消えている。

 あれは一体何だったのかと思いつつも、亮は威吹の言葉に耳を傾ける。


「だからどっちかに肩入れするのはね。でも、何もしないってのも薄情な話だ」


 月の光が翳り、威吹の半身を夜が覆い尽くす。

 闇の中に輝く縦に裂けた真紅の左眼が酷く恐ろしい。


「二人に選んでもらおう。

先に覚悟を見せた者に一度だけ俺は助力する。人として、或いは化け物として」


 威吹が腕を振るうと虚空から鞘に収まった二振りの軍刀が現れた。

 二振りはそれぞれ亮と潤の足元に突き刺さり、淡い光を放っている。


「潤……潤は亮に生きてて欲しいんだよね?」

「あ、当たり前だろ!!」

「――――なら、その刀でお姉さんを斬れ」

「な……」

「そいつはちょっと気難しいけど一時的に扱えるようにしてあるから大丈夫」


 ちゃんと、雪菜を消滅させられる。

 威吹の言葉に亮はおろか、対立する潤ですら言葉を失っていた。


「そこから後は俺に任せてくれて良い。

亮の記憶を消して最初から何もなかったことにしてあげられる。

そしたら亮が傷付くことはないし魂の方も年単位で時間はかかるけどいずれは元に戻るだろう」


「お、お前……」


 亮からすれば悪魔のような提案だった。

 だが、それは潤にとっても受け入れ難いもののようで彼はわなわなと震えていた。


「酷いって? でも、これ以外に道はないよ。だって、亮はもう止まれないもん」


 誰も彼もが笑っていられる結末などありはしない。

 威吹はそう断言した。


「次は亮、君だ」

「ッ」


 一体何を言われるのかと身構える亮に威吹は短くこう告げた。


「君とお姉さんに未来をあげよう」

「は?」


「健全な肉体と健全な魂魄、ついでに不老のオマケ付き。

ようは人外にしてあげるってこと。ああでも、勘違いしないでね?

別におぞましい化け物にするとかそんなんじゃないから。見た目も心もそのまま」


 ただ種族が、存在が書き換わるだけだと威吹は言う。

 少しの間を置き、言葉を飲み込んだ亮の胸を歓喜が満たしかけるが……。


「……待って亮さん」

「雪菜さん?」

「年の功か。お姉さんが察してるようにこれは”美味い”話ではないよ」

「あ……」


 そうだ、その通りだ。威吹はさっき何て言った?

 覚悟を示せと言ったのだ。

 潤が示す覚悟は親友の大切な人を斬ること。ならば自分は……。


「当然、代償は付き纏う。俺は未来を得るための膳立てはする。

だが、実行するのは二人だ。そしてそれは道を外れる行いでもある。

非道外道に身を窶す覚悟はあるかな? 一度外れてしまえばもう二度と戻れはしないよ。

蝋燭の灯りほどの光もない無明の夜に沈む覚悟があるのかな?」


 詳細を語らないのも、覚悟を試されているからだろう。

 そんな自分の考えを察したのか、威吹はその通りだと笑った。


「ああでも、これぐらいは教えておこうか。

仮に人外となり一先ずの生を得たとしても、だ。そこで道は終わらない。

むしろ、そこからが大変だ。君らの存在を許容出来ぬ者に付け狙われるだろうね。

夜も眠れぬ、常に誰かの影に怯えながら生きる羽目になるかもしれない。

後悔するかもね、大人しく限られた時間を過ごして消えていれば良かったと」


 嬲るような言葉。

 しかし、亮は怖じなかった。

 だって、


「でも、それも何とか出来る可能性があるんだよね?」


 威吹は未来をあげると言ったのだ。

 未来とは何だ? 可能性、不確かだけど続いて行く道のことではないのか?


「まあ、そうだね。君らの頑張り次第だが安住の地に辿り着ける可能性も零ではない」


 零ではないだけで、可能性が高いとは言っていない。

 むしろ可能性は低いのだろうと思う。


「最早、何も失わずに居られる未来などありはしない。

何かを捨てて先に進む以外に道はないんだ。

選んでも、選ばなくても、その手の平から確実に何かが零れ落ちる」


 傲岸に嗤う威吹。

 一見すれば、理不尽を強いて楽しんでいるように思うかもしれない。

 だけど違う。他ならぬ親友の自分だからこそ分かる。


(威吹、君は……)


 威吹もまた失う覚悟をしているのだ。

 自分と潤が何も選ばなければ、威吹も何もしない。

 何もしないということは見捨てるということに他ならない。

 ならばもう友とは呼べぬ。威吹は二度と、自分たちの前に姿を現すことはないだろう。


(僕が選べば潤を失う、潤が選べば僕が……)


 どちらかに肩入れするということは、片方に背を向けるということでもある。

 威吹は何をしても親友と呼べる存在を失うのだ。

 なのに、それをおくびにも出さず振舞っている。


(ごめん……君は君のままだったね)


 心胆寒からしめるかおを見せた時、自分の親友はどこに行ったのだと思った。

 だが違う。威吹は威吹のままだ。

 確かに何かが変わったけれど、自分の知る威吹が居なくなったわけではない。

 その事実に喜びを噛み締めつつ、亮は雪菜を見た。


「…………亮さんの判断に従うわ。どんな道を選ぼうとも、終わりまで寄り添います」

「……ありがとう」


 ギュっと手を握る。

 それだけで、胸が熱くなる。勇気が沸き立つ。


「潤、君はどうするんだい? 何を選ぶんだい?」

「お、俺は……俺は……」


 ぽたぽたと涙が地面を叩く。

 潤に、親友にあんな顔をさせてしまったのは自分のせいだ。

 この胸の痛みは受け止めるべき罰なのだろう。


「……選べる……わけがないだろ……!

何だよ! 何かを失わずには進めないって……そんなの、間違ってる!

おかしいだろ!? 誰も悪くないのに……何で……何で、こんな……こんな……!!」


 泣き崩れる友に何と言えば良いのか。

 いや、考えるまでもない。伝える言葉は一つだけだ。


「潤」

「亮、俺は――――」

「ごめん、そしてありがとう」


 さようなら僕の親友ともだち――別れの言葉と共に、亮は刀を引き抜いた。


「りょ――ぅ……!?」


 糸が切れたように潤の身体が地面に崩れ落ちた。

 きっと、威吹が何かしたのだろう。


「選んだね」

「選んだよ」

「もう後戻りは出来ないよ。引き返そうとすれば、その瞬間に俺はお姉さんを消す」


 最後の最後、引き返す道を用意してくれたのだろう。

 だがそのつもりは毛頭ない。


「明日の同じ時間、ここで待ってて」


 それだけ言うと威吹は潤を担ぎ上げ、どこかへ消え去った。

 残された亮は小さく息を吐き、空を見上げる。


「ばいばい、潤」


 再度告げた別れの言葉は夜の闇に溶けて消えた……。

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