第118話 全ての国へ『空飛ぶ船』を

オルバル帝国の宰相が魔族に体を乗っ取られていたことが判明し、ハヤトのお陰で目を覚ました皇帝ハンニブ皇帝は宰相をケントギルド統括マスターの朋友のデクスターにして、ハヤト達と謁見し、今後協力していくことで一致した。


一方、全世界のギルド大会で、ハヤトに依頼して『空飛ぶ船』を2隻ずつ作成して各国にわたすことにより、魔王、異世界龍対策を円滑にすすめるべく動き出した。


ハヤトは、オルバル帝国に2隻渡し終えて3日後、ヘルカ王国に2隻作り、王都ビズリーの王宮の中庭と王都の冒険者ギルドの競技場横の敷地に急遽仮ドックを作成し、そこにブルネリアから飛んでいって2隻を停泊させた。


ケント・ギルド統括から王都ビズリーのギルドマスターと王様に渡された『空飛ぶ船』の操縦方法は、オルバル帝国から派遣された騎士団の2名の操縦士が3日間かけてグルド職員とヘルカ王国騎士団に教えることになった。


ヘルカ王国に納品が終わった3日後、今度はキース獣人国の王都モルディナの獅子王の元に2隻の『空飛ぶ船』を納品した。


獅子王にハヤトとケント・ギルド統括が謁見、「ハヤト殿、久しいのう!息災の様子、何よりじゃ!又この度の件かたじけない」と久しぶりに有った獅子王から声をかけられた。


「ケント殿と申されるか?儂はキース獣人国国王のライザーである。今後とも我が国の冒険者ギルドの面倒を頼むな」


「ははぁー、キース獣人国の冒険者ギルドは大変レベルが高く私達も期待しております。今後ともこちらこそよろしくお願い致します」と丁寧に膝を折って挨拶した。


2隻をギルドと王宮の中庭に停泊させ、ブルネリア騎士団の操縦士2名が2日間掛けて操縦方法を教えた。


その間、ケントとハヤト、騎士団の二人は獣人国の宿を借りて2日間騎士団が操縦方法を教えている間、ハヤトはのんびりケントと王都を散策した。


王様や皇后様から度々の誘いもケントや騎士団の手前、やんわりとお断りして、時間を取って、家族達と来る旨伝えて、諦めてもらった。


無事に操縦方法も教え、4人はハヤトの【転移】魔法でブルネリアの王都ジュネべに戻った。

騎士たちを帝国まで【転移】を使って送ってあげた。


再びその3日後、今度は、アルトリア王国に2隻運び、同様にその1週間後にはノルディー帝国、続いてナルジェ王国に2隻と全ての国に『空飛ぶ船』を2隻ずつ配置させた。


勿論戦争に使うためではなく、各国が豊かに発展するためと、緊急時のギルド集合を円滑にするためである。


その間も、前日ハヤトが【サーチ】で炙り出した各国に潜んでいる魔族を各ギルドマスターが高ランクの冒険者を複数パーティーでクエストを出し、ナルジェ、ヘルカ、アルトリア、キース獣人国と4国の魔人討伐を何とか成し遂げていた。


全魔人族を討伐した報告は、戻ったケントの元に2日後に『遠距離通話』でその報告がもたらされて、ハヤトにも伝えられた。


ハヤトは魔王と異世界龍のことが片付くまではジュネべの家をメインに活動するとケントに伝え、ケントもジュネべの副ギルドマスター、クローディアをケープのギルドマスターに昇格して采配して貰うことにした。


そして、ケントもジュネべのギルドマスターとしてここ3年間はジュネべの自宅から冒険者ギルドに通い、王都をベースに情報を司ることにした。


ジェネべに戻って5日後、魔族達を殲滅したとケントが連絡を受けてから3日後に二人は王様から呼び出された。


ケントとハヤトは徒歩で王宮城門に午後一番で伺い、2、3分待つと執事長が出迎えて王宮の客間に通される。


客間のソファーに座って待つこと5分あまり、「王様のおなりー」と声が聞こえ、二人は立ち上がり王様を迎えて頭を下げた。


「ケント殿ハヤト殿1週間ほど各国に『空飛ぶ船』を納品して操縦方法の教育と色々大変であったろう!ご苦労であった。今回呼び出したのは魔王、異界龍対策も兼ねて最悪の場合、異世界龍の火炎の息吹から守るために地下に街を作ってはどうだろうか?」


「王様、その必要はありません、間違ってもこの国まで被害が及ぶことが無いように対処します」とケントが王様に進言した。


「王様、最悪の場合を考えるのでしたら、北側の都市マール、ハーゼル、ソルムドなどの都市の住民を2日以内でジュネべ、ケープに移動できる交通網を構築しておいてください。ケープ、ジュネべ、ギンバリーを結ぶ線を最後の防衛線と考えて、それより以南の地域に強力なシールドを張り巡らします」とハヤトは言った。


「しかし、恐らくはキース獣人族の所での交戦で終わると思います。アルトリアやナルジェ王国まではまず間違いなく侵入されないですむと思います」とケント。


「厳しい戦いをするのはノルディー帝国とキース獣人帝国なので来年になりましたら私を始め高ランクの冒険者たちはキースとノルディー両国に分散して魔族と対抗する予定でおります」とケント。


「そうか、王として何かすることはあるか?ケントどの」


「いえ、今の所はありません。全てハヤトが対応してくれました」


「ハヤト殿、色々すまんな」王がハヤトをねぎらった。


ケントとハヤトは王宮を辞して、ハヤトはケントに「暫く未踏破のダンジョン等をファミリーで潜り実戦に備えて訓練しておきます」と言って別れた。


ハヤトは自宅に戻り、王様の危惧していたことを皆にも伝えて、コレからの予定として、古代人文明関係の遺跡やダンジョンを中心に実戦を経験して少しでも2年後に備えようと皆に伝えた。


「旦那様、少し買い出しをして、今後は『万能乗用車』の中で移動しながら暫くは生活をしていきましょう。私とドリスとクリエラとラッティーで買い出しに行って来ます」


「うん、明日早朝に出発しよう。僕はどこに行けば効果的か少し調べて見るよ」


ハヤトは『賢者の本』を開いて、この世界に残されている古代人の遺跡やダンジョンを表示してもらう。


すると、ハヤト達がいるこのブルネリアにも3箇所程あるのがわかった。


まだ、誰にも発見されていないようだ。


一つ目はマールの街のすぐ近くに朽ち果てて土に埋もれた古代都市跡、二つ目がハーゼルから東に5キロ程の森林の中の廃墟、三つ目はその廃墟からさらに10キロ程東に行った岩の丘に入口があるダンジョンが未だ存在を知られておらず手つかずの状態であることが分かった。


夕食を食べ終えてハヤトが調べたことを皆に伝え、まずは時間も勿体無いので【転移】を使って翌朝マール近郊に飛ぶことを決めた。





*****


翌朝、朝食を食べ終わり、全員が『万能乗用車』に乗り【転移】で一気にマール街のすぐ近くに降り立った。


ハヤトの【サーチ】と車自体に搭載されて居る【サーチモニター】が同じ場所を点滅させている。


「みんな、ここが古代遺跡跡だよ。見ると何もない野原だが、セリーヌ、ノームにお願いして、どのくらいの広さかわからないけど障害物が出る深さまで土をどけてもらえるかな?」


セリーヌは精霊ノームを呼んでこの辺り一面の土をどけてもらった。


すると、白い大理石のような部分が一面現れて、階段も出て来た。


「ガードマンを先頭にアレン、ラッティー、クリエラ、ドリス、セリーヌの順で入ろう。しんがりは僕と『スラ』と『イム』が引き受ける。ガードマン、【ライティング】で照らしながら進んで」ハヤトは白い大理石が現れた部分の周りを【シールド】で囲って誰も入れないようにし、さらに【隠蔽(ハイド)】を施した。


ハヤトは【サーチ】をかけながら進んでいく。


もちろん3匹のキラービーが暗い中でも暗視の効く複眼でサーチしていく。


四人が横一列で通れる程の廊下を通ると、最初に右側に扉があった。ガードマンが開けようとしても開かない。

ハヤトが手を添えると光だし、扉は自動で開いた。


おそらく古代人から受け継いだ、ハヤトだからこそ反応して開くような仕掛けになって居るのだろう。


中に資料が山積みになっており、さらに本が20冊程本棚に入っていた。

ハヤトは【次元収納ボックス】に回収する。


少し進むとキラービーから念話で”動く物体がマスターたちに向かって来ます。今映像を送ります”と伝えて来た。


「ガードマン、アレン気をつけて、人口のゴーレムが1体向かってくるよ!かなり手強いよ。ダマスカス鋼で魔石を破壊しないと再生を繰り返すからね」


ゴーレムが剣を構えてすごい速さでガードマンに斬りかかってきた。

ガードマンは盾で剣を防ぎ、剣を魔石のあるあたりを刺したが硬いダマスカス鋼に跳ね返されてしまう。


長引くのは時間のロスと考え、ハヤトが『魔石師』のスキルを発動して念を送り魔石を奪い取った。


動かなくなった、ゴーレムと魔石を【次元収納ボックス】に回収して研究施設のような広い部屋に突き当たった。


”大峡谷のダンジョン”にあったような装置が壁際に設置されて居る。


ハヤトは魔石を設置してみる。


歯車が動き始め、装置が始動開始する。


「ラッティー、軽く【ファイアボール】を放って見て、できないと思うよ」


「ええ?何でですか魔法が発動できません」


「そうなんだよ、この装置は魔法を無効化する装置なんだ。”大峡谷のダンジョン”の磁力場と同じシステムだよ」


ハヤトは魔石を取り外して、装置を丸ごと【次元収納ボックス】に収めた。


ゴーレムはこの装置を守るために古代人が置いていたものなんだろう。


更に左に階段が有り、おりていくとかなりの『アーティファクト』らしきものが整然と並べられて、そこが倉庫だったようだ。


『遠距離通話器』や『魔石製造機』、『リフレクションリング』、『魔筒砲』『魔拳銃』がそれぞれ所狭しと綺麗に並べられており、それぞれが10個ずつ有った。


”これが今、この世界に広まっていたら未だ冒険者たちの歴史も少し変わったかもしれないな”とハヤトは思いながら【次元収納ボックス】に回収した。


もっともこの扉は古代人の意思を受け継いだものしか開けられないので人がこの場所を見つけてもこのアーティファクトを手に入れられないだろうが・・・。


ここの場所はこれ以上何もない。


おそらく古代人の防衛の支部程度の場所だったのだろう、先ほど見つけた資料を後ほどゆっくり読んで解析しようとハヤトは思い、地上に全員で出て、再度精霊ノームに頼んで埋め戻して、誰にも発見できないように、グラッセに頼んで草木をたくさん植え込んでただの野原と森に作り戻した。


次に向かうところはハーゼルから5キロ東の森林だ。


ハーゼルの近くまで車で行き町外れに止めて昼食休憩をすることにした。


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