第108話 ヘルカ王国の冒険(5)
“古代遺跡ダンジョン”を踏破してラスボスの部屋で手に入れたお宝は魔笛という笛で、噂では魔王が封印される瞬間まで持っていたとされる武器らしいが、ハヤトはあくまで噂に過ぎない気がし、”古代遺跡ダンジョン”は他にあるようなきがしていた。
ハヤトはシドンの冒険者ギルドが管轄している”大峡谷ダンジョン”が何やら古代遺跡絡みと深い関係が有るような気がしている。
そこでシドンにもう1泊して”大峡谷ダンジョン”に潜ることにした。
翌朝、宿を出て『万能乗用車』に乗り込み垂直上昇して飛び立ち、数分で"大峡谷ダンジョン"の入口がある峡谷の底に着いた。
「皆、何やら地面の下から特殊な磁場が発していて、此処では魔法が使えないから各自『マジックアイテム』の使用で対応してね、セリーヌも僕も【シールド】魔法は効かないから『具現の水晶』でシールドを作り出して身に纏っておいて。あとセリーヌは『魔拳銃』には予想される弾をある程度用意して6発は装填しておいてね。ラッティーの剣は両方とも使えるけど魔力を流せないからかなり力は弱まるのを計算して戦う様に」
1階層に向かう。
いきなり人工のゴブリンが10匹現れた。
ドリスが剣で魔石部分を破壊して全ての動きを不能にした。
2階層はアダマンタンの合金製のオークが5体現れた。
しかも何の気配も感じさせずにいきなり目の前に出現したのだ!
ガードマンが盾を翳しながらオークの攻撃を防ぎつつ、アレンと二人でオークの硬い合金製の身体に剣を刺して魔石を破壊した。
3階層は古代人が明らかに建てたと思われる建物の中から、キラーアントの人工物体が数千匹、ガシャガシャ音を立てて迫ってくる。
『スラ』と『イム』が合体して大きくなり、全てのキラーアントを包み込んで消化して行く。
一匹残らず消化して、ハヤトが建物の中に入ると古代語で書かれた数冊の本が机に置かれていた。
パラパラと解読してみると、魔力を無効にする磁力線の製造方法が書かれ、その設計図も描かれていた。
また、メモが置かれ、見ると5階層より先は、魔力無効装置の動力源を破壊しない限り先には進む事叶わずと書かれていた。
ハヤトは【サーチ】が使えない為、前から鍛えていた念の流れや気の流れを感じ、何とかしてその動力源を見つけようとするが、複雑に交差して流れている磁力線の動力源を見つけられないでいると"ご主人様、あの扉の向こうから変な力が各層に流れてますよ"と精霊のグラッセが教えてくれた。
扉と言っても、見ると壁と一体になっており見分けがつかない。
ハヤトは正拳で壁を叩き壊した。
目の前には四畳半程の部屋になっており、歯車とパイプがところ狭しに組まれ、途中途中に魔石が組み込まれていた。
ハヤトは歯車やパイプを破壊して魔石を全部取り外すと今まで感じていた磁力が地面から消え失せた。
ハヤトは試しに【サーチ】を掛けてみると見事に発動した。
「グラッセ大手柄だよ、君のお陰で皆が魔法をまた使えるようになったよ、ありがとう!」
「うふふふふふ、ご主人様が褒めてくれた、嬉しいな!」
グラッセのお陰で魔法無効化の磁力線は消えて、ハヤトファミリーは普通に魔法を発動出来るようになった。
ハヤトは3階層にあった資料を【次元ストレージ】に入れて4階層に向かう。
4階層に行くと4階層も古代人の建物跡だ。
ダマスカス鋼でできたトロールがいる。
そういえばこの4階層は天井がやたら高く何か大きな物を作り込んでいたと思われる発射台のような作り物が有り、そこにトロールが座り込んでいた。
ハヤトは『魔石師』のスキルを発動して、トロールの巨大な魔石に凄まじい思念を送り込んだ。
ピキッと頭の中に音が聞こえ、【スティール】で魔石を奪い取った。
トロールはハヤト達を襲う事もできず動かなくなった。
部屋を調べるが他に作り物はなく、参考になるものは何一つ無いのでダマスカス鋼のトロールを【ストレージ】に入れて回収した。
5階層にもダマスカス鋼のミノタウロスが1体、ハルバードと盾を構えていた。
ラッティーが両足、クリエラが両手を狙って同時に攻撃を仕掛ける。
ラッティーの炎の刃を弾くも、魔剣のダガーはダマスカス鋼さえも物ともせず両膝を切断していた。
クリエラの方も、顔に【ファイアアロー】を放ち目線をそらさせて、ハルバードを構えている右手を剣で一閃して切断、直ぐに裏を取り首を切り落とし、ラッティーが魔石の部分に切込みを入れて魔石を回収した。
6階層は密林のようだ。
その密林の中には、蔦に絡まった古代人の建物らしき残骸がある。
建物の中から巨大なポイズンスネークが出てきた。
生の魔物だ。
物凄い強酸の液を吐き出して、全てを溶かした。
セリーヌが『連射の弓』に魔力を流し込んで矢を放つと顳かみに当たり、頭が吹き飛んだ。
頭がないのにも関わらず、なおも暴れまくる大蛇、ドリスが細切れにして回収する。
7階層は古代人の建物が完全に残っており、地下1階、地上2階建ての建物だ。
地下にはダマスカス鋼のキラーバッドが10匹飛び回っている。
ドリス、アレンが羽を切り落としていく。
通常の冒険者の剣ではダマスカス鋼を切れないが、ドリスもアレンもそれよりも遥かに硬い合金製だ。
しかも、剣捌きのスピードがすごい速さだ。
翼を切られ落ちてくるところを全て首も切り落とされて【ストレージ】に回収される。
1階はアダマンタイト製のキラーアントが1000匹床を動き回っている。
”『スラ』、『イム』食べ尽くしてくれる?”
”任せて、御主人様”と二人はあっという間にベチャーと床に広がり、キラーアントを包み込みながら消化し始め、跡形もなく食べ尽くした。
ラッティーが”『スラ』さん『イム』さん、お腹壊さないでね”
”大丈夫よ、ラッティー、私達の体の構造は通常の魔物と違って、溶岩をジュースのように飲めるから大丈夫だよ”とうそぶいていた。
2階に上がると、かなりの本や資料が置かれている。
ペラペラとめくるとこの古代人の建造物ができた頃の歴史的背景などが日記形式で描かれていた。
魔族との戦いの日々、魔王を封印したが消滅させるところまでは行かなかったことなどが描かれていた。
今後にとても役立ちそうだ、全て【次元ストレージ】にいれた。
2階には魔物はいなかった。
8階層は人工的に作られた平原のようだ。
草木が全て細い金属で出来ており、素肌だと切り傷があっという間にできてしまう。
ドリス太刀3人衆とスライム夫婦以外は全員がシールドを掛けている。
巨大なワイバーンがいる。
分析するとアダマンタイトで大きさがドラゴンクラスで40メートルもある。
ハヤトの肩から銀龍が羽ばたいて40メートルを超える大きさになり、ワイバーの目の前に現れた。
ワイバーンが尾で強烈な一撃を銀龍に振るうが、銀龍は片足で蹴り返して、尻尾をふっとばした。
ワイバーンは炎の咆哮を放つが、全く銀龍には効かない。
逆に銀龍が放った”獄炎の炎の咆哮”に半分がドロドロに溶けて動かなくなり、周りの金属の草木も溶けて、金属の塊となった。
塊も含めて【次元ストレージ】に回収し、9階層に向かった。
9階層にはヒュドラがいる。
人工物体ではないが、かなりの大きさだ。
クリエラが【瞬足】を使って首を切り落とし、ラッティーの『魔剣炎のダガー』で切り口を焼き切り再生を防いで順番に9本の首を切り落とした。
かなりの時間を要したが遂にラスボスの部屋らしい、古代人の部屋にたどり着いた。
慎重にドアを開けると目の前には巨大なミイラ(?)らしきものが鎖に繋がれ椅子に鎖で座らされた状態でいた。
側には赤黒く動いて鼓動している心臓がケースに安置されている。
ラッティーが近づこうとしたら、2メートルほど手前で弾き飛ばされてしまう。
「ラッティー、大丈夫か?」
「はい、でもシールドや結界のたぐいではないのですが・・・」
「これは強烈な『気』の壁だよ、良く『殺気』を浴びるというでしょ?あのたぐいと同じで強烈な『気』があのミイラのような黒い物体から発せられている」
壁に古代語が描かれており、ハヤトが解読してみる。
『ここに眠る魔王の最後の弟”デーモンサンダー”の亡骸と心臓だ。この心臓を止めることが可能な冒険者がここに訪れることを期待する。この強烈な『気』を抜けて入れることができるか否か?』と描かれている。
ハヤトは『白兎』を抜いて示現流紅の型を構え、上段より物凄い裂波の気迫で切り裂いた。
パキンと音がして、目の前の黒い巨体のミイラは黒い煙を出しながら灰になって消えていった。
次にケースに入っている心臓を同様に構えて上段より気迫で持って振り下ろすと、ゴボッと嫌な音とともに真二つに切られた心臓がその鼓動を止めて、灰色になってボロボロに崩れていった。
心臓が置かれている台が下から伸びて、一皮むけるようになり、新たな台の上に本が出てきて、タイトルに”この世界を救う者に”と書かれた本が現れた。
ハヤトは斜め読みしながら直ぐに【次元ストレージ】に回収した。
恐らく宝箱はこの本なのだろう、他にはダンジョンコアが有るだけで、ハヤトはやはりこちらのダンジョンが本来は”古代遺跡ダンジョン”で前日のはここを盗掘されないための古代人の知恵だったような気がした。
転移盤に乗って、皆で入り口に戻り、”大峡谷ダンジョン”から脱出して冒険者ギルドに戻ってきた。
ギルドの素材置場に全てを納品して、受付にダンジョンコアと地図をだし、清算金を待った。
人工物がほとんどなのでおそらくは余り対して金額はいかないが、ハヤトにとっては貴重なものが数多く手に入ったとご機嫌だ。
案の定、清算金は白金10枚、金貨9枚、銀貨45枚、銅貨28枚と通常よりかなり少額だった。
ハヤトからしたら今までのダンジョンの中で2、3番ぐらいに価値のあるダンジョンだったのでこの金額でも全然納得詰めだった。
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