第104話 へルカ王国での冒険(1)
クリエラの特訓も一応終わり、実戦経験もラッティーとダンジョンを踏破してランクがAランクに上がった。
ハヤトは久しぶりにケープの冒険者ギルドのマスター、ケントを訪ねた。
「久しぶりだな、ハヤト、きょうは何かあったのか?」
「いえ特には無いんですが、ここ一ヶ月程ケープを離れていた際に体験した出来事で報告しておきたい事が有りまして・・・」
「ほぉー、どんな事だ?」
ハヤトはナルジエ王国の魔道屋のボスノー氏と知り合いマジックアイテムを定期的に卸す約束をした件、それが原因でオルバル帝国が3度もナルジエ王国に侵入して来た件、その侵略の件を公爵と宰相の護衛依頼で知ったハヤトがオルバル帝国とナルジエ王国の国境にシールドを施し、以後攻められなくした件、又、公爵様の意見でマジックアイテムは全てハヤトが作っていた事を公表した事等を話した。
又旅の途中で寄ったノルディー帝国での魔族5人の企みを潰し、精霊達を救った件を話した。
「お前は相変わらずトラブルメーカーだな!オルバル帝国の件は俺にも王様から傭兵の派遣の事で連絡が来たが、もう解決したと聞いたが、あれはお前が絡んで居たのか」
「なのでケープの街にハヤトファミリーを拉致しようとする輩がかなり増えますが、全て消しますから大丈夫です、それよりも魔王と異世界の魔界龍が2、3年後に間違い無く獣人族国の北側の魔族領で復活します。それに備えて我が国も対策を急いで下さい」
「急ぐと言っても相手が魔王だぞ!魔族でさえ、Aランクが数人でやっと何とか出来るかどうかの相手に冒険者達に何が出来ると言うんだ?」
「魔族は私のファミリーが殲滅します。魔王と魔界龍は私が相手します。ですから住民達の避難や王様達の安全な所への誘導等を是非お願いします」
「その様な事態にならない様に魔族領で決着を着けるつもりでいますが・・・、2、3年なんてあっという間に来てしまいますからね」とハヤト。
「魔族はだいぶ退治したのでそれ程残って居るとは思わないですが、魔物をけしかけ襲って来る可能性もあるので、安心はできませんよ」
「良くわかった!公爵様や宰相殿、王様とも相談しておく。それとオルバル帝国の件は、帝国の冒険者がこの街でに入ったら直ぐにお前に連絡が行くようにしておくから安心しろ!」
「ところでケントさん、ケントさんの経験上一番難易度が高いと思うダンジョンはどこですか?仲間のスキルアップも兼ねて、チームワークを磨いておきたいのですが・・・」
「俺が知っている中じゃ"迷宮の杜"かなぁ?難攻不落と聞いているぞ、後はヘルカ王国の"不落のダンジョン"と"古代遺跡ダンジョン"辺りだな!」
「"迷宮の杜"は階層が多く大変でしたが難易度的には差程難しい気はしなかったです」
「えぇ?お前あそこを踏破したのか?」
「はい、旅の途中で・・・」
「信じられない化け物だな!」
「ヘルカ王国にはあまり行ってないのでオルバル帝国のかなり上空を飛んで、行って見ますよ!」
「オルバル帝国のジェニールより北側から入れば、比較的入り易いぞ。最悪いきなり王都のビズリー近くまで飛んで王都に入れば何とかなるな」とケントが教えてくれる。
「分かりました、ヘルカ王国の二箇所のダンジョンに明日から行ってスキルアップして来ます」
「ああ、気をつけて行ってこい、何か問題があったら連絡するからな」
ハヤトファミリーはギルドマスターのケントさんから教えて貰ったダンジョンに向かう事になった!
「ドリス、高度1万でオルバル帝国を横断してヘルカ王国の王都近くまで高速で飛んでくれる?」
「わかりました。王都手前に午後3時頃つくようにします」
ハヤトファミリーを載せた『万能乗用車』はハヤト邸から垂直上昇して、高度1万メートルから時速1500キロの速度でブルネリア王国、オルバル帝国を越え、ヘルカ王国の王都ビズリーの手前5キロ辺りの草原に着陸し、ビズリー目指して走り出した。
昼食は車内で食べ、王都ビズリー近くまで皆座席で昼寝している。
最初にハヤトとセリーヌが起きた。
ビズリーの城門で冒険者カードを出し、何事も無く無事に街に入れた。
先ず初めに冒険者ギルドに行き、ケントから教えて貰った"不落のダンジョン"の場所を聞いた。
「ビズリーから70キロ程行ったハーグナの都市が管理してまして、街から2キロ程東に有ります」
「ありがとう!」とハヤトが言って、ギルドから出て先程入った門とは反対側の門から出て、人気が無いのを確認してハーグナの街に飛んだ。
ハーグナの街の門に着いて、冒険者カードを見せ、ついでに宿を聞いたら"寄り道"という宿が安くて美味しいと教えてくれた。
衛兵にお礼を言って、"寄り道"を探すと、ギルドの直ぐ近くだった!
4人で入って行き、ダブルが二部屋空いているか聞くと、ダブルは一部屋しか空きがなく、後はシングルなら二部屋空いているとの事で、シングル二部屋、ダブル一部屋をとった。
ラッティーとクリエラが夫々一部屋ずつ、ハヤト夫婦はダブルの部屋に入った。
時間は既に夕食の時間になっていた。
4人は、シャワーを浴びて、着替えてから直ぐに食堂に向かった。
周りは商人が一組4人だけで、後は皆冒険者のようだ。
ハヤト達はエルフの女性が二人に、兎族の女性、しかも3人共飛び切りの美人だ。
男性が一人だけなのでやたら目立つ4人組だ。
定食を食べていたら、案の定ほろ酔い加減の冒険者のグループが絡んで来た。
「おうおう、兄さんよ、一人で三人はいけねぇよ!ちょっと貸して貰いてぇーな!」
「悪いけど食事中なんで用が有るなら食事を済んでからにしてくれる?」とハヤトが言うと、いきなり一人の男がハヤトの食べている食事を机から全て床にばらまいて、「ほら、食事はもう終わっただろ?」と笑いながらほざいた。
ハヤトは「店員さん、この馬鹿が私の食べている食事を床にわざと落としたけど、どうすれば良いかな?」
「この男から食事代を貰って再度頼めるかい?」
「勿論大丈夫です」
「そういう事なので、銅貨10枚を貰うよ」と言って彼の財布を一瞬で男から奪い、銅貨10枚を取って、宿の店員さんに渡した。
あまりの速さに男は動けず、店員にお金が渡されて慌てて、ハヤトに掴みかかろうとしたが、ハヤトはその手首を逆手にして自分の白金カードをその男の目の前に翳し、「まだやりますか?」と聞いた。
男はまさか相手がランクSSSとは思いもせず、すごすごと自分の席に戻って行った。
仲間の男が「何だよ、途中でよぅ、」
「おい!酔いが覚めた、部屋に戻るぞ」とつかみ掛かった男は青ざめた顔でさっさと二階に上がってしまった。
残された男達も慌てて、文句を言いながら彼に着いて二階に上がって行った。
「すみません、床を汚したようで」とハヤトは彼から奪い取った銅貨10枚に更に5枚追加して宿の主人に渡した。
「師匠、お優しいですね!私なら片足か片腕を切り落としてますよ」とラッティーが物騒なことを言っている。
「いやぁ〜、食べてる最中に人の血を見るのはねぇー、カードを見せて引き下がってくれればそれに越したこと無いからね」とハヤトは新たに持ってきてくれた定食を食べ終えて、宿の主人にお礼を言って、部屋に戻った。
「旦那様、今後はカードを見せるより、『殺気』を放って動けなくさせたほうが良いですわ!カードだと、拾っただの、人のを盗んだのと信用しない輩がいますから」
「あははは、そうかぁ!そこまで考えなかったよ。これからは此方に来そうなときにはそいつに鋭い『殺気』を放つとするよ」
「私が放っても良いのですが、女性の私だと却って話をめんどくさくしてしまいますから・・・」
「そうそう、女に守られるしか何もできん冒険者、とかね!」とハヤト。
二人はそんな話をしながら、薄口のコーヒーを飲みながら明日のダンジョンへの検討を始めた。
「セリーヌ、明日は前衛をラッティーとクリエラ、ガードマンの順で進んで、その後ろにセリーヌとアレン、後衛に僕とドリスで行こうと思うのだけどどうかな?」
「ええ、今回のダンジョンをクリエラのさらなるランクアップのためと、マジックアイテムに完全に慣れることが種目的なのですから、それが良いと思いますわ」
「僕等がいる時は良いけど、この間のように、ラッティーと二人で踏破するにはアンデッド系のモンスターが出た時はふたりとも辛いよね!」
「ええ、ですが基本ダンジョンに潜るのは皆さんパーティーを組んで潜るので夫々が役割分担で戦うので、彼女らに【聖魔法】を出来るようにさせる必要はないと思いますよ」
「それもそうだね、【聖魔法】は特殊で限られた人に特製が出るから苦労して二人に覚えさせる必要は無いか!」
ハヤト夫婦は明日の冒険をそんな感じで考え、床についた。
翌朝、朝食を4人で食べると、『万能乗用車』に全員で乗り込み、冒険者ギルドに向かった。
ハーグナの冒険者ギルドは結構人で溢れていた。
クエストがある掲示板には向かわず、直接受付嬢の方に向かっていったハヤトを見て、一人の受付嬢が、「冒険者登録ですか?魔物の買取ですか?」と的外れなことを言ってきた。
ハヤトが笑いながら、全員の冒険者カードを出して、「”熱き絆”が”不落のダンジョン”に潜ります」というと、慌てて「申し訳ございません、掲示板に向かわずこちらにいらしたので、てっきり冒険者登録か魔物の納品かと思いました。ごめんなさい」と丁寧に謝られて、「いやいや、よくお客さんを観察して良いことですよ!」と答えた。
「場所を教えてもらえますか?」
「はい、”不落のダンジョン”はこの街を出て東に2、3キロ行った所に有ります。
衛兵が4人居ますし、側には屋台の出店もあるのですぐ分かると思いますよ」
「ありがとう」とハヤトは言って、ギルドを後にした。
受付嬢は初めてSクラス以上のしかもSSSクラスのカードを見たのが初めてで興奮状態でいた。
「ミリエラ、どうしたの?ボケーっとして」と隣の受付嬢が聞く。
「いま来た若い男性の方、SSSランクの人たちだったわ!信じられないわ」とミリエラと言う女性はその後しばらくは仕事に手が付かない状態だったようだ。
ハヤト達は言われたように東に向かう道を3キロほど進むと左手に蔦にびっしり囲まれた石の門柱に衛兵が左右に二人ずつ、立哨しているのが見える。
「ドリス、あそこのようだね」と車を止めて、【次元収納ボックス】に入れて、カードを見せて1階層に向かって入っていく。
先頭にラッティー、クリエラ、ガードマン、中衛にセリーヌとアレン、後衛にハヤトとドリス。
勿論、ラッティーの2、30m先をキラービーが飛んで警戒に当たり、セリーヌのそばには精霊グラッセがいて、ハヤトの側には『スラ』と『イム』、ハヤトの肩には銀龍がとまっている。
ラッティーが【ライティング】で足元を照らしながら進んで行く。
キラービーから全員に”漆黒のコウモリの様な魔物が飛んでいるので気をつけてください”と念話が届く。
「ラッティー、真っ暗の中で黒い飛ぶ魔物はやりにくいから【ファイアボール】で焼いてみて、どうやら噛まれると毒が体に回るみたいだよ」
「旦那様、アレはキラーバットですね!私達は噛まれても耐性が有るけど普通ではとても危険な魔物だわ」
ラッティーが【ファイアボール】を洞窟内に向けて放つと、キィーキィーと鳴きながら天井から30匹程のキラーバットが落ちてきた。
一応討伐部位がわからない初めての魔物なので、まるごと【次元収納ボックス】にいれた。
更に進むと、キラーモウルが5匹ほど襲ってくる。
モグラを大きくした様な魔物で、鋭い前足の爪と大きな鋭い前歯を持つ2メートルの巨体だ。
ラッティーが『魔剣炎のダガー』と『魔剣風のダガー』を組み合わせて、【ファイアストーム】を作り出し、3匹を殺し、クリエラも精霊、サラマンダーの炎で2匹を倒して、【次元収納ボックス】に入れた。
「セリーヌ、ここは結構見慣れない魔物が出だしから出てくるね!」
「そうですね、定番のゴブリンとかスライムとかでないのがやはり”不落”の原因でしょうか?」
そんな軽口を叩きながら更に2階層に進んだ。
洞穴から抜けたら青空が見え、ダンジョンの中と言う感じがしない。
平原からファングウルフの群れが向かってくるとキラービーが教えてくれた。
その数は実に30頭ほどだ。
ラッティーとクリエラ、中衛のセリーヌが迎え撃つ。
セリーヌは『連射の弓』に魔力を流し込み10本の矢を作り出し、同時に放ち、先ずは瞬殺する。
ラッティーは『魔剣風のダガー』で【エアカッター】を連発して5頭の首を切り落とし、クリエラは群れの中に飛び込み、体術でウルフの体に風穴を開け、頭蓋骨を砕き、剣で首を切り落として8頭を殺した。
残りのファングウルフはガードマンが盾で潰して殺しまくって30頭を10分で刈り取った。
更に空にはワイバーンが3匹、ハヤト達に狙いをつけて飛び回っている。
この2階層の浅い所に出てくる魔物ではないのだが、やはりこのダンジョンは普通と違うようだ。
セリーヌがファングウルフを殺して直ぐに、ワイバーンに狙いをつけて『連射の弓』に先程より少し強めに魔力を流して6本の矢を同時に放つ。
1本は頭に、もう1本は2枚の翼を撃ち抜いて夫々3匹が勢いよく空から落ちてきた。
【次元収納ボックス】に回収して3階層に進む。
3階層は砂漠ステージで、サンドワームの変異種らしきものが3匹現れた。
ハヤトが【鑑定】すると、サンドワーム、突然変異種、再生能力、強酸液を放つ。
『万能乗用車』の中にいるのでシールドコーティングした車体は強酸の液にも溶けることは無いが、レーザービームで殺しても、再生するため、先ずは氷漬けにして再生が出来ないほど細かく砕く作戦でいく。
車の先端からハヤトが【フリーザー】を放ち、3匹のサンドワームを一瞬で凍らせ、【重力魔法(グラビティー)】でぺしゃんこに砕いた。
死体は回収できないが更に砂漠を進んでいく。
【サーチモニター】にスコーピオン・キングが1体検知された。
殻がレーザービームさえも跳ね返す、強靭な硬さを誇る殻を纏い、尾の針は一瞬で人間を殺せる猛毒のはりだ。
ここもハヤトが車内から『魔石師』のスキルを発動し、スコーピオン・キングの魔石に強烈な思念を送り込み、【スティール】を放ち、魔石を奪い取った。
動かなくなった、スコーピオン・キングを回収して4階層に進む。
4階層は鬱蒼とした森林が広がるステージだ。
ここは木の精霊、グラッセの独壇場だ!
キラープラントを全て無効化し、木に隠れているウォーターモンキーを蔓で首を締めて木から振り落とし、ラッティーとクリエラがとどめを刺す。
奥にサウンドラーが2匹いるが、これもグラッセがサウンドラーの長い首にツタを絡ませて締め上げて殺した。
5階層にきた。
ここまでは他のダンジョンよりやはりかなり強い魔物が出てきている。
ボス部屋のようだが扉がそれ程大きくはなく、ドリスが開けると、砂ゴーレムが2メートルの身長で待ち構えていた。
ラッティーとクリエラがともに【瞬足】を使い間合いを詰めて剣を振るうが砂のために全く効果がない。
切られてもサラサラと砂になって再び固まる状況でレーザービームも効かない。
ここも先程と同様、ハヤトが【フリーザー】で氷漬けに固めて【結界】で覆い、その結界をどんどん縮めて、魔石ごと完全に1ミリ程の小さな結界にして『亜空間』にすてた。
ここで昼になり、『万能乗用車』に乗り込んで昼食を取ることにした。
昼食はハヤトはマナバイソンのステーキにパンと野菜スープ、セリーヌ、クリエラ、ラッティーはサラダとポテトサラダのサンドイッチに野菜スープ、グラッセは車内に充満しているマナを美味しそうに吸収している。
『スラ』と『イム』はマナバイソンのステーキとファングボアの醤油焼きを食べて大満足のようだ。
食後に宝箱を開けてみると、ミスリル製の聖剣が出てきた。ドラゴンの硬い鱗さえも切り、しかも浄化の魔法【聖魔法】を放つことが出来る剣『聖剣イグナシオン』と表示された。
これはまさにクリエラのためにある聖剣だとハヤトが喜び、今の剣を回収して直ぐに聖剣イグナシオンを帯刀させた。
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