第99話 アイメールでのクエスト

アイメールの街で木々が多いのに木の精霊が全くいない違和感を感じたハヤトファミリーはそれが人間族を滅ぼさんと計画していた魔族達の仕業であることを突き止め、事前に防いでギルドに報告した。


その日の晩から、何故か精霊のグラッセがセリーヌに纏わりついて、宿にまで付いてくる。


「グラッセ、どうしたの?貴女には帰る場所がないの?」


「私、決めたの!精霊樹様の意思を継ぐハヤトファミリーと冒険の旅を一緒にするって事を・・・」


「私も、この世界を魔王や魔界龍の蹂躙から守るハヤトファミリーの力になりたいの!セリーヌやハヤトさんの手助けをしたいの、お願い!一緒に旅をさせて」


「あなた、ご家族がいるでしょ?」


「精霊は基本的には生まれたときから一人で生活を始めるわ、勿論仲間たちと一緒に住んだりもするけど、仲間たちも勿論私の意見を尊重してくれて頑張れって、送り出してくれたわ!」


「旦那様、どうします?」


「グラッセがそこまで言うのだから僕には異存はないよ!精霊さん達の力を借りるときもあるだろうし、その時はグラッセに頑張ってもらえるからね」


「ということで、グラッセも一緒に旅をしましょう!」とセリーヌがグラッセに同意して、グラッセはセリーヌの肩に止まって、宿までついてきた。


精霊は基本人前には姿を表さないので、ハヤトファミリー以外の人がいる時はひとから見えないように精霊独特の『精霊術』で身を隠している。


魔法で言う一種の【インビジブル】のようなものらしい。


ハヤトは晩ごはんの時間まで、車の中にグラッセの住処を作ってやることにした。


小さい鳥小屋の様な家の中に柔らかい寝床を作り、普段はセリーヌの肩が定位置のようだ。


精霊の食事は自然界のきれいなマナと水滴があれば殆ど食べなくても生きていられるが、野菜や肉、パンも小さく柔らかくしたものは食べるらしい。


グラッセの食事はセリーヌが自分の物をほんの少し分けて柔らかくしたもので基本大丈夫なようだ。


夕食はグラッセが増えて、5人で食べるようになった。


この宿は基本、肉と魚を選べるシステムで、そのどちらにもかなりの量の野菜がついてくるので、ラッティーやセリーヌ、クリエラにとってはとてもありがたいようだ。


魔族問題が一応1日で解決したのでここに滞在する理由もなくなったのだが、せっかく宿を延泊したので明日の朝までアイメールに滞在することにした。


夕食を食べ終えて、アイメールの夜の状況を見て見るためにも、散歩してみることになった。


ギルドから指示が出ているのか、いつもより魔物に対しての警戒が多いので普通の街の夜に戻ったようである。


周りにグラッセの仲間が沢山寄ってきて、お礼を言ってまとわりついてくる。


グラッセも嬉しそうに話をしている。


「いいなぁ、グラッセ、元気でね!ハヤト様の助けをちゃんとするのよ、私達もこの国に異変が生じたら精霊の仲間が貴女にすぐに伝えるから、その時はハヤト様に直ぐにお伝えするのよ」


「うん、精霊の伝達速度は早いから頼むね」とグラッセが嬉しそうに返事をしている。


ハヤトは、それなりに魔物の気配を感じており、やっと普段の街の夜を迎えるようになったと一安心した。


宿の近くをグラッセが加わって7人で散歩をし、『万能乗用車』に戻ってきた。


「グラッセ、寝床を作ってあるからドリスに聞いてね」


「キラービー、いつもの通り警戒を宜しく」


「御主人様、お任せください」


「それじゃ、僕らは部屋に戻るね」と言ってハヤト達は宿の二階に上がっていく。


車には【結界】が張られて不審者が来ても、魔物が来ても大丈夫だ。


翌朝、ドリスの肩に乗って、グラッセが一階の食堂に来た。


「グラッセ、新しい寝床、大丈夫だった?良く寝れたかしら?」とセリーヌ。


「ふかふかの寝床でぐっすり出来たわ」


「それは良かったわ、ドリス、ありがとう」と言って、セリーヌはグラッセを自分の肩に乗せ換えて、食堂の椅子に座った。


朝食を済ませてギルドにクエストを見にいってみる。


受付嬢がハヤト達を見ると「ハヤト様、ギルドマスターがお呼びですのでご案内します」と二階のギルドマスター室に案内された。


「ハヤト様、朝早くから申し訳有りません。帝都より連絡があり、是非帝都に寄って更に詳しい話を教えてくれとの皇帝からの依頼が有りました。ついては、3体の魔族の亡骸を彼らに見せて説明して貰いたくお願いします。2体の亡骸はこちらで詳しく調べて、どの様な方法で精霊達を集めたのか特殊な能力が無いか調査するため2体だけ頂いておきます」


「わかりました、直ぐにではないですが1週間も掛からず帝都には向かいます」


「帝都で宮廷の衛兵にこの手紙を出せば皇帝のところに案内されるので、着きましたらこの手紙を見せてください」


「いろいろ、ありがとうございます」とハヤトはギルマスから手紙を受け取り階下に降りて行った。


「旦那様、このクエストを受けたら移動しませんか?」とセリーヌが1枚のクエストを掲示板から剥がして持ってきた。


みると、ワイバーンの2匹が近くの村の農園を度々襲って被害が出ているようで、2匹の討伐依頼だ。


受付嬢に村の場所を聞いて、『万能乗用車』に乗り込み向かった。


アイメールの北東にして5キロほど行った村だ。


20分程で、村に着き【サーチ】をすると確かに3キロほど行った岩場に2匹のワイバーンがいる。


車で500メートルほど迄近づき、ガードマンとドリスが降りて対応することにした。


【ブースト】を掛けて、二人はワイバーンが気がつくときには既に間合いに入って、羽を切り落とし、炎を物ともせずにジャンプして首を切断してしまった。


精霊のグラッセは初めて見るファミリー達の強さに驚いている様子だ。


【ストレージ】にしまって、村の村長さんから依頼達成のサインを貰うが、あまりの速さに村長は「死体を見せてくれと」と言って見るまでサインを渋っていた。


2体のワイバーンの死体を見て改めて今回の依頼を受けたパーティーが規格外な強さだと認識する村長だった。


冒険者ギルドに戻って、2体のワイバーンの亡骸を素材置場に入れて、納品書を持って受付に出した。


1時間も立たずに2体のワイバーンの討伐に成功した”熱き絆”のパーティーの強さがこのアイメールの冒険者ギルドで長く語りぐさになるのはハヤト達が去ったあとだった。


「ハヤト様ワイバーン2匹の討伐依頼達成の清算金です」と言って金貨80枚を受け取り、ファミリーは次の街へと向かって行った。


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