第82話 古代都市のアーティファクト

ギロスの古代都市アテナスのダンジョンを制覇して、人口魔物の貴重な金属と大きな魔石を取得することが出来たハヤトは、次に古代都市遺跡群に埋もれているかもしれない古代人が作ったアーティファクトを発見しに、ゴロスの北西3キロの遺跡群に向かった。


ゆっくり『万能乗用車』で走っても5分も掛からず目的の古代都市遺跡群に着いた。


建物などは土台だけ残して残っている物は全くない。


壁もかろうじて倒れかかっているのが一部だけ残っている程度で少なくとも地上に見える部分にはここが都市の跡とは思えない状況だ。


訪れている人もおらずハヤトを除いた5人も少し落胆している。


ハヤトは【サーチ】と【鑑定】を同時に放って、周辺を検索してみる。


1箇所だけ微力ながら魔力を発する場所が有った。


近寄ると土台の一部が床なのか石畳の下から魔力が流れ出て来ている。


掘り起こして見ると、銀製のようなお皿がでて来た。


外に出して、綺麗に土埃を取り除くとかなりの魔力がでている。


【鑑定】をすると、『美食のお皿』、頭に思い浮かべた全ての食べ物、飲み物を作り出す。飲み物は容器をお皿の上に置くべし、と出た。


『万物創造ボール』と同様のアーティファクトだが、食べ物に特化した品だ!


更にハヤトはこの遺跡群の地下には同様の広さの地下街が有り、その入り口が埋没している事を察知していた。


【サーチ】を少し強めに魔力を流し地面の下方にまで検索すると、10メートル先に地下に行く階段が埋もれているのを検知する。


土の精霊ノームを召喚して、階段が現れるまで瓦礫と土を掘り起こすように頼んだ。


ノームがあっという間に土と瓦礫をどけると、人が二人並んで降りられる程の階段が現れた。


作りもしっかりしており、ハヤトが【ライティング】魔法を掛けながらセリーヌと並んでおりて行く。


続いて、ドリスとラッティー、その後ろにアレンとガードマン。


キラービーはハヤトの前10メートル先を【サーチ】しながら飛んで行く。


降りて行くと、様々なところから色々な魔力がハヤトとセリーヌたちに流れ込んでくるのがわかる。


一番最初の部屋のドアを開け机にある銀製らしきコップからも魔力を感じ、【鑑定】すると、ボスノーさんに渡した『マジックカップ』と同じ性能の魔力を流すと美味しいミネラル水がカップいっぱいにに満たされる、とでた。


綺麗に布でカップを拭いてストレージに回収した。


更にゆっくり進むと部屋のドアの靴の中に魔力のでている女性用の靴があった。


【鑑定】すると『女神の靴』とタイトルが出て、空を自由に飛び回ることができる靴だそうだ。


アンドロイドやセリーヌ、ハヤトは空を飛ぶことができるので、ラッティー用だとハヤトは考えてラッティーに言って【次元ポシェット】にラッティーがしまった。


更に進むと、倉庫の様な作りの中からかなり強い魔力が流れてくる。


中に入ると、ミスリル製の剣が数本、その全てから魔力が放出されていた。


それぞれ鑑定すると『炎を纏い、炎の剣を飛ばす炎帝の剣』、『水を纏い、水の剣を飛ばす水神剣』、『雷を纏い、雷を相手に落とす雷神剣』、「風を纏い、風の剣を飛ばす風神剣』と4本の異なる魔剣が壁に掛けられている。


鎧や盾からも微かな魔力が流れて来たが、ハヤトが【鑑定】をすると僅かながらの対物魔法が付与されている程度なので全てこれらは無視するハヤト。


魔法剣4本を【次元収納ボックス】にいれた。


更に地下都市を進み魔力の強い建物の中に入る。


『遠距離通話機』の水晶玉1組が10組も無傷で残されていた。


ハヤトは”何だろう、ここは、日本でいうスマホ販売店だったのか?”と密かに思った。


当然回収する。


更に進んである扉の前でハヤトは立ち止まった。


扉の内側にかなり強烈な魔法を放つ魔力を感じ、ほんの少し身構えた。


ゆっくりドアを開けると、30センチ程のスライムが2匹ぷるぷると体を振動させながら床に張り付く様にいた。


敵意を全く感じないので『魔石師』のスキルを発動させて魔石そのものに念を送ってみる。


”やっとご主人様にお会いできました、私たちは『スラ』と『イム』夫婦のスライムの魔法師です”


”僕はハヤト、『スラ』と『イム』は何で僕をご主人様というのかな?”


”私たちを誕生させたこの都市の王様が最初にこの扉を開けて入ってくる人が君たちの御主人様になる人だから、その人が来たら一緒について行き、ご主人様のために尽くす様にと言われたの”


”この都市の王様って、人間族?”


”少し違うわ、人間の姿をすることもできるけど、精神体の様なかたよ”


『スラ』がハヤトに説明するがよく要領を得ない。


”精神体って神様みたいなものかな”


”そうかもしれない、人間族には神とか言われている存在に一番近いと思います”と『イム』が念話で送って来た言葉で何となく古代人だけがこの地にいたのではないことが想像できた。


”ところで、『イム』と『スラ』は僕を何年ぐらいここで待っていたの?”


”覚えていないけど少なくとも2000年位は待っていたと思います”と『イム』が言った。


”そんなに長きに渡り僕を待っていてくれたのだね!それじゃこれから一緒にファミリーに加えるね”


”ありがとうございます”と『スラ』、『イム』が同時に返事した。


セリーヌにも念話の内容が聞けたので、ラッティーにハヤトとスライムの会話を伝えて教えてあげる。


”ご主人様、私たち夫婦がこの地下都市をご案内します”とハヤト達の先頭をプニプニと震えながら進んで行く。


”ご主人様、この部屋は昔薬局だった場所でいまだに多種のポーションが数百本に渡って保存されております”


見ると、普通の解熱剤から魔力回復剤、一瞬で傷を直すものとか、解毒剤とか、高級ポーションでは危篤の人、魔物を助けるポーションもある。


多種というだけあって、自白剤とか、激痛を与えるポーションとか、考えられる状態異常を復元する殆どのポーションが有った。


【次元収納ボックス】に入れて、更に行く。


”ご主人様、この部屋は時計屋さんです。時間を戻したり、未来に進んだりする腕輪が二つあります”


”時間を戻すって、過去に戻れるの?


”はい、1分だけですが自分の周り数メートル、これは魔力の流し方によりますが多く流せば範囲は広くなりますが、過去に戻してくれます。そして針を進めれば1分先の状態を見せてくれます。針を止めてれば自分を中心に周りの時が止まります”


「セリーヌ、僕と君が持って入ればいいね!普段は使わないけど、頭の中で考えた瞬間から作動するみたいだよ」


「はい、旦那様私たち二人が持って入れば間違い無いでしょう」とセリーヌが左手に腕時計の様につけた。


プニプニプニ・・・、更に身体を震わしながらわなわなと進んで行く。


魔力を感じるところには『スラ』『イム』夫婦は正確に止まってハヤトを招き入れる。


しばらく進んで再び止まって、”ここにアーティファクトが有ります、ご確認ください”


ハヤトが入って、みてみると小さい四角の箱にボタンがついている。


【鑑定】すると『魔石製造機』ランク3〜ランク10迄の魔石を際限なく作り出すことができると表示される。


魔石ランクは3〜10迄の数字が書かれており、回転レバーを数字に合わせるとその数字のレベルの魔石が一つ出現する。


希望の魔石がいつでも手に入るので便利だ。


すぐに【次元収納ボックス】に入れて回収する。


ハヤトが回収して、やっと地下都市の端に到着した。


出口の階段はなく、最初に入った入り口の階段が唯一の入り口、出口のようだ。


結局来た道を今一度戻り地上に出た。


『スラ』と『イム』が入り口の階段を完全に塞ぎ、地下都市があったことをわからない様に入り口を塞いだ。


「それじゃ、皆んな一応目的を終えたのでアストリアまで『万能乗用車』で飛んで戻るよ」


ハヤト一行は6人に、新たに『スラ』と『イム』の『ウィザードスライム(魔法師スライム)』が加わってアストリアの”旅のともしび”に向かって飛行し始めた。


かなりのスピードで航行したので夕方少し前には着いた。


『スラ』と『イム』は体を小さくしてハヤトの洋服の中に潜り込んで他人に気づかれない様に隠れた。


魔力も隠蔽して莫大な魔力が全く感じられないほどに隠蔽した。


これにはハヤトもびっくりして、”凄い技術だね”


”ご主人様が褒めてくれた、嬉しいなぁ”とハヤトの胸の中でプルプルと震えた。


「すみません、1泊二部屋空いてますか?」


「あれ、今日ギロスに向かった冒険者さん達じゃないの?ダンジョンに潜らなかったの?」


「いえ、一応踏破したので戻って来たのですが・・・」


「ええ?半日ほどで踏破しちまったのかねぇ!凄いね、部屋は昨日と同じ部屋が空いているからご夫婦の方はダブルの二人部屋、兎人族さんはシングルの部屋ね!」

と言って、ラッティーとハヤト夫妻に鍵を渡してくれた。


「お客さん達、夕食はすぐ食べるかね?」


「いえ、シャワーを浴びてからにするので今から1時間後にします」


「わかったよ、そんじゃぁ降りて来たら直ぐ出せる様にしておくから」と言われ2階に上がった。


セリーヌ夫妻とラッティーはシャワーを浴びて、ダンジョンに着て行った洋服を【次元収納ボックス】に入れておく。


そうすると、明日には返り血を浴びた洋服も綺麗に洗濯をしたかの様に汚れが落ちて戻ってくる。


『スラ』と『イム』夫婦はハヤト達の部屋で待つことにした。


”僕らが食べてくる間、これを二人で食べていて”と言って、【次元収納ボックス】からファングボアの生姜焼きとライスとスープを出して夫婦に与えた。


”ご主人様、こんな豪勢な食べ物は2000年ぶりです。ありがとうございます。プニプニ”と言って喜んで震えていた。


二人は着替えてスッキリして、食堂に降りていく。


直ぐにラッティーも降りて来て3人でのんびり夕食を食べて、ダンジョン踏破の反省や古代遺跡群のアーティファクトの品物の事を話しながらお茶を飲んだ。


「ハヤト様、古代都市遺跡群で出会った『スラ』『イム』は魔物としては普通一番弱い魔物ですが大丈夫ですか?」とラッティーが聞いてきた。


「ラッティーは彼らが普通のスライムだと思う?」


「いえ、食べ物もない密閉された地下で2000年以上も生きている段階で普通だとは思えませんが、だからと言って強いのかと言えば弱い部類ではないのでは?」


「あのスライム夫婦、スライムと言って良いのかわからないけど信じられないぐらい強いと思うよ、もしかしたらドリス達でも負けるかも・・・」


「えええ?それほど強いですか?」


「ドリス達はあの夫婦が食べれば消化されてしまうからいくら不死身と言っても消されてしまうよ。それに彼らを切る事はできないし、通常の魔法は聞かないからなかなか倒すのは大変だよ。唯一【亜空間魔法】か【イレージング(消滅)】魔法が彼らに対処できる魔法じゃないかな」


「まぁ、これから仲間として一緒に行動すれば規格外の強さだとわかるよ」


「セリーヌ様の”殲滅の弓”の矢でも倒せませんか?」


「うん、魔力を込めたセリーヌの矢も彼らの体内に入って吸い込まれて消化せれてしまうよ」


「まだまだ私は修行が足りないですね、彼ら夫婦の強さが分からないなんて!」


夕食も済ませたハヤト夫婦は2階の部屋に入って少し早めだが寝ることにした。


『スラ』と『イム』も食べて満足したのか部屋の片隅にくっついて夫婦仲良く寝ている様だ。


一方ラッティーも自分の部屋に戻り、坐禅を組んで瞑想し、魔力を練り上げて一気に解放する。


気を失いそうになる程フラフラするが、それを何度ともなく繰り返し少しでも魔力量を増やそうと頑張っていた。


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