第67話 ナルジェ王国のダンジョン(1)

ハヤト達はオルバル帝国の武道大会を見て、キース獣人国の冒険者の強さに興味を抱き、獣人国まで旅をしながら向かっている途中にナルジェ王国の魔王具屋の娘さんと

知り合いになり、ナルジェ王国王都まで旅を一緒にすることになった。


ナルジェ王国バッキスの街を出れば昼過ぎには王都バスタードに着く。


ジュリエッタとハヤト夫妻は朝食を食べ終えて出る準備をして、早々に『万能乗用車』に乗り込んでバスタードに向かって車を走らせていく。


途中バスタードの手前数キロの平原で昼食を車の中で済ませて再びバスタードに向かう。


昼食もそこそこに走ったので昼過ぎの1時ごろにはバスタードの街に着いた。


門で冒険者カードを提示し、ジュリエッタは住民票を提示してハヤト一行は問題なく街の中に入れた。


街の門から1キロほど行ったメイン道路の左側にジュリエッタのご両親が営む魔道具屋がある。


店の前に『万能乗用車』を停車させて、ドリスやアレンを車に待たせてジュリエッタと共に店に入るハヤト夫妻。


「お父さん、お母さんただいま!」とドアを開けて元気に声をかけるジュリエッタ。


「あら、ジュリエッタやっと戻って来たのね元気そうで良かったわ」とジュリエッタのお母さんらしき人が彼女に走りこんで抱き寄せた。


「お母さん、お父さんハヤトご夫妻を紹介します。ブルネリアで男達に絡まれているところを助けて頂いた高ランク冒険者のハヤトご夫妻です」


「初めまして、冒険者をしておりますハヤト、こちらが妻のセリーヌです。たまたまご縁があってジュリエッタさんと道中をご一緒させていただきました」


「これはこれは、ジュリエッタが危ないところを助けて頂いたようで有難うございます。私はジュリエッタの父のボスノーと妻のルビアです」


「お父さん、ハヤト様は錬金術も心得ていてすごい『魔道車』でここまで載せて頂いたのよ。中は【次元収納ボックス】や【次元空間魔法】が施されていて魔石で馬車の数倍の速でで走るの、店の前にあるからちょっと見てよ」


そういうと客がいないのを良いことに店の外に連れ出して父のボスノーに『万能乗用車』を見せるのだった。


ボスノーは『万能乗用車』を見た瞬間、震えるほどの戦慄を覚えた。


この世のものとは思えない作りの乗り物、しかも馬車のように木でできているわけでない車輪。何の素材か触ってみる

たがわからない。


「ね、ね凄いでしょ!」


「いやぁー、凄いなんてものじゃないぞジュリエッタ。この魔道車は金額で言えば白金10枚でも買えないかも知れん逸品だ。ハヤト様、ここでの宿はもうお決めになっておりますか?もし決まっていなければ今夜は是非我が家にお泊りください」


「セリーヌさん、ハヤトさん、父ももうしているように是非我が家に来てください」


「そうですか、ご迷惑でなければ一晩お世話になります」とセリーヌがハヤトが何かいう前に答えていた。


父親のボスノーはまだまだ『万能乗用車』を見ていたい様子だがジュリエッタが店の中に戻って母にハヤト夫妻が泊まることを言いに入ったので仕方なく皆が店の中に戻った。


「ハヤトさん、店の商品を見て見て!このほとんどは両親が作ったの。ここに私の卒業作品のマントを置いてもらおうかしら」


「ジュリエッタ、ちゃんと学園を卒業できたんだね?どれ、あなたが作ったという作品を見てあげるから出して見なさい」


それを聞いてジュリエッタは例の耐火魔法を付与した黒のマントを出した。


ジュリエッタのお母さんがじっとマントを眺めて、「まぁ初めての作品にしては良いけどこの程度を店に置いて売る訳にはいかないわ。もし売っても銅貨5枚かね」


「えええ、そんなぁ!酷いお母さん。私の苦労して作った卒業作品だよ」


「だって、お前売るということはこれを買って下さる冒険者の人の命を守るマントにならなければいけないのだよ。これではほんの少しの火の粉を防ぐ程度であまり役には立たないわ」


「もっと耐火の強さを虚力にしないとだめ?」とジュリエッタは残念そうに聞く。


「そうねもっと耐火力を強めて、耐物理もつければ売れるわね!」


「それじゃ、もう少し頑張って売れる製品を作れるように頑張るわ」


ハヤトは陳列商品を見るとそこそこ良品を適正な価格で置いてあり、この店が良心的で冒険者に人気があるのだろうと推察できる品物が並んでいた。


「ハヤト殿は錬金術を学んだのですか?」と父親のボスノーが聞くと、「もともとスキルで錬金術も持っていて、独学で本を読んで勉強した程度です」


「それにしては外にある『万能乗用車』は素晴らしい作品ですね」


「有難うございます。古代文明の本に設計図があったのでその通りに図面起こしをして設計図の通りに作りこんだだけですよ」とマジックアイテムの『万物創造キューブ』の件は伏せて話をはぐらかした。


「古代文明ですか!ハヤト殿は古代語を読み解けるのですか?現在残されている文献は見たことがないのですがこの世界で解読できる人は殆どいないと聞いてますが・・・」


「これも私のユニークスキルで『言語解読』スキルがありまして、この世界のどの国の言葉も解読できるので助かってます」


「ハヤトさんは素晴らしいスキルをお持ちで羨ましいですわ」とルビアが羨ましそうに語る。


「私たち夫婦と娘はたまたま【鑑定】のスキルを持っているのですがマジックアイテムだけを対象にしたスキルで魔物や人間を【鑑定】できないのが少々残念で!」


「でもご商売には随分役に立っているのではないですか?」とセリーヌがいう。


「そうですね、完成したマジックアイテムを【鑑定】して納得できるまで魔法を付与して作りこむのでその点はとても神に感謝しております」とルビアが笑顔で答えた。


「お父さん、私はジュリエッタとハヤトご夫妻と一緒に一足自宅に戻って歓迎の夕食を作るのでお店を任せてもよろしいかしら?」


「ああ、『万能乗用車』に乗せてもらって帰るといい。お前も驚くぞ!」



ハヤトとセリーヌに促されて『万能乗用車』に乗り込むジュリエッタ親子、奥さんのルビアは直ぐにドリス、アレン、ガードマンが人間ではないとわかってその精巧な作りに驚くとともにボスノーが言ったように『万能乗用車』の中に乗り込んで【次元空間】魔法を施した車内に驚いて声も出ない。


「おかあさん、ドリスさんにアレンさんそして運転してるのがガードマンさんよ」


「ハヤトさん、随分精巧に作られたゴーレムさん達ですが素材は何でできてい流のかしら?」


「ええええ、3人はゴーレム?私は今の今までハヤトさんの仲間の人間だとばかり思っていたわ」とジュリエッタが大声で驚いている。


「貴女はまだまだ修行が足りないわね」とルビアが嘆いている。


「よくわかりましたね、確かにドリス達はミスリル合金でできたアンドロイドという人形です。ゴーレムとは若干違って魔石では動いていないのですよ」


「食事をとる必要が無いのでこんばんはこの『万能乗用車』の中で過ごしますから特にお構いなくお願いします」


お店から5分ほど進んだ閑静な住宅街にジュリエッタの家があった。


思ったより大きな家で”魔道具屋”のお店の繁盛ぶりが伺える。


庭に『万能乗用車』を駐車させて【結界】を張って保護し、ハヤト夫妻はジュリエッタ親子に案内されながら彼らの家に入った。


「いやぁーお母さん、6年ぶりの我が家だけどやはり我が家が一番落ち着くわね。

リビングでハヤトさん達は座ってのんびりしてください。とりあえず荷物を置いてからおりてきますから」とジュリエッタが6年ぶりに自分の部屋に荷物を置きに上がり、リビアが二人にお茶を入れて持ってきた。


「失礼ですがハヤトご夫妻達は冒険者ランクはお幾つなのでしょうか?」とルビアが訪ねた。


「僕らはドリス、アレンたち5人で”熱き絆”というパーティー名でランクSSの冒険者パーティーで、個人でも私がSSS家内のセリーヌがSS、残りの3人がSクラスであとは車内にキラービー3匹をティムして、あとミスリルとアダマンタイトの合金の銀龍という人工の龍がおります」


「えええ、そんなに高ランクのパーティーは私達の国にはいませんわ。ブルネリア王国はやはり噂の通りレベルが高いのですね。何でも『空飛ぶ船』や『魔道鉄道車』という馬車が時速100キロ近くで走っていると伺ってますが・・・」


「お母さん、私も『魔道鉄道車』に乗ったけどそりゃぁ、快適な乗りごごちだったわ。あれってどうやって動かしているのかとても不思議だったけど!」


「実はあの二つは旦那様が作って王様に献上したものなの」とセリーヌが爆弾発言をして二人を驚かす。


「えっ、うそっ!ハヤトさんが作ったの?あの鉄道車はどうやって走るのですか?」


「あまり詳細は言えないけど、鉄のレール側に魔石の粉末を塗布して上を走る車輌にも魔石が有り、塗布されている魔石を検知して車輪を回転させる仕組みなんだ」


「あの『空飛ぶ船』が空を浮かぶのは?」とジュリエッタが畳み掛けるように聞いてくる。


「ああ、あれは”揚力”という力を魔石で発生させて制御させる仕組みを利用しているんだよ」

「海に船が浮かぶのが”浮力”という力で空は”揚力”という力で浮かしているんだ」


「それも古代文明の力でしょうか?」とリビアが尋ねる。


「『空飛ぶ船』の発想は確かに古代文明の文献からヒントをえていますが古代人の魔石の使い方と私が考えた使い方は若干違いがあります」と言葉を濁した。


「ハヤトさんは天才なんだぁ!」とジュリエッタが感心して呟いた。


「ハヤトご夫妻を2階の客間にご案内して、お風呂にでも入っていただいてジュリエッタと私は晩御飯の用意をしましょ」


「はい、お母様。それじゃハヤトご夫妻、2階の客間とお風呂をご案内します」


ハヤトとセリーヌはジュリエッタについて行き、客間に入って寛いだ。


「セリーヌさん、私は母の手伝いをしてくるのでご主人とお風呂にでも入ってゆっくり寛いでいてください」


そういうとジュリエッタはお風呂の場所までセリーヌを案内したのち下に降りて行った。


ハヤト達はお風呂に入って、ゆっくりと着替えを済まして客間でのんびり声がかかるまで待っていた。


1時間程すると階下のほうでご主人の声が聞こえてきた。

どうやら早めに店じまいをしてハヤト夫妻を歓迎するために急いで戻ってきたようだ。


「セリーヌ、ご主人達のお店にポーションが殆ど無かったから高級ポーションを10瓶ほどあげようか?」


「そうですねぇ、基本的にはポーションて魔道具屋さんではなく薬屋さんで販売するのでもし彼らに何かあげるのであれば魔道具の方がよろしいのではないかしら」


「そうだね、確かにポーションは薬屋だもんね!そうしたらどうするかな・・・」


ハヤトは少し考えて「魔力を流すと水が溜まるコップを一つ、そして容量がそれほど大きく無いがオークの魔物なら5匹ほど入る【マジックバック】を作ってこの2点を送ることにした。


ジュリエッタが準備ができたと2階に呼びにきて3人で下の食堂に向かった。


「ハヤトご夫妻、何のおかまいも出来ませんが娘の危ないところを救って頂いた

ささやかなお礼の気持ちです。口に合うかわかりませんがどうぞ召し上がってください」


マナバイソンの味噌煮込みとボルシチに似たトマト系のスープに白米だ!

ハヤトはパンと思っていたところ思いがけず久しぶりに白米を食べれるので感激している。


ナルジェ王国は主食が白米でパンとの比率が6・4で白米だそうだ。


ジュリエッタが父親に『空飛ぶ船』と『魔道鉄道車』の考案者がハヤトだと教えて、もっぱら錬金術の話で皆で盛り上がった。


「お店では冒険者からのダンジョンのボス部屋のマジックアイテムなどを買い取って店に並べるなどはしないのですか?」とハヤトがご主人に聞くと、「王都にも迷宮のダンジョンと言われるものが存在するのですがランクが高いのかボス部屋まで踏破してマジックアイテムをゲットした人は未だいないのです」とボスノーが残念がって言う。


「それじゃ、セリーヌ僕らで10階層辺りまで潜ってボスのお宝をゲットしたらボスノーご夫妻に贈呈しようか!」


「そうですわね、10階層迄はいけるんじゃないかしら、そうすれば運良ければ5階層と10階層で二つのアイデムが手に入るかもしれませんね」


「通常の魔道具の素材などは冒険者ギルドから買取をしているのですか?」とハヤトが聞く。


「ええ、通常はファングボアの牙とかオークの皮とかは冒険者ギルドから購入してます。」


「そうですか、ちょっと待ってください【次元収納ボックス】に以前討伐した黒龍の鱗が残っていると思うなぁ?あっ、あったあった、ボスノーさん2枚しか無いけど宜しかったらこれ差し上げますので粉末にするなり、剣に付与するとか鎧に使うとか魔道具の材料に使ってください」


「ええええ?黒龍の鱗をお持ちなのですか?と言うことは黒龍を倒したとか・・・」


「ええ、大分前ですが」


「いや、通常では出回らないので私たちでは手が出せない高嶺の花でした。ありがとうございます。最高の材料を頂いてしまった」とボスノー夫妻はよろこんでいる。


「ハヤトさんは魔道具は殆どご自分で作り込んで身につけてらっしゃるのですか?」とジュリエッタ。


「いや、セリーヌも僕も殆どダンジョンのボス部屋のマジックアイテムを身につけていますね」


「ハヤトさん達は高ランクなのでマジックアイテムも手に入れやすく、羨ましいです」


「明日は、王都のギルドに行って迷宮のダンジョンを潜れるところまで行ってみます」


「それでしたら朝食を6時ごろ用意しますので少し早めに起きてください」と奥さまが言ってくれる。


「お言葉に甘えてそうさせてもらいます」とハヤト。


食後のお茶を飲みながら明日の予定を決めてハヤト達は早めに二階に上がり寝る。


ジュリエッタは両親と6年ぶりに水入らずの話があるので未だリビングでお茶を飲んで話し込んでいた。


翌朝奥様が準備してくれた朝食を食べて7時前に王都のギルドに向かう。


『万能乗用車』に乗り込んで住宅街から商店街に出てボスノーさんの魔道具店からすぐのギルドに向かう。


冒険者のカウンターに行き、ギルドカードを5人が出して”熱き絆”で”迷宮路のダンジョン”を潜る旨伝えて冒険者ギルドを出た。”迷宮路のダンジョン”はギルドからすぐ近くでボスノーさんの店とギルドを挟んで反対側を1キロ程行ったところにあった。


入り口には衛兵が4人で入門のギルドカードをチェックしていた。


ハヤト達5人は命名カードを提示して、先行がガードマン、アレン、セリーヌとドリスにしんがりをハヤトが銀龍と入って行く。


中は思った以上に明るく1階層はお決まりのスライムが3匹ほど、ゴブリンが5匹、コボルトが8匹ほどいたがガードマンが簡単に処理して、死体はそのままにして2階層に向かう。


2階層にはリザードマンジェネラルとキングがそれぞれ1匹づつおり、配下に13匹のリザードマンを引き連れている。


ここはガードマンが3匹、アレンが3匹、セリーヌがジェネラルとキングをやに魔力を込めて狙いを定めて『連射の弓』を放ち頭を爆殺して残りのリザードマンはドリスが剣とレーザービームで葬った。


3階層は森林ステージでファングウルフ20匹、ファングボア3匹が待ち構えている。


ファングウルフの群れをガードマンとアレンがちょうど半分ずつの5匹ずつを剣で首を切り落とし、ファングボアはドリスが3匹の首を切り落とした。


4階層に行く道が3数本に分かれていて、そのうちの2本には多数のトラップが仕掛けられていた。


ハヤトが【マッピング】と【サーチ】を併用してなんとか正解の道を見てけて4階層

にたどり着けた。


4階層は平原ですぐ近くにトロールが1体ワイバーンが1匹いる。


おそらくこの4階層で通常の冒険者達は引き返す羽目に陥ったのだろう。


通常ではオークとワイバーンが入れば普通の冒険者は撤退を余儀なくされる筈だ。


ここはガードマンがトロールを、ワイバーンはセリーヌとドリスが対応することにした。


まずガードマンがトロールの振り下ろす棍棒を盾で防ぎつつ、両足の膝より下を剣で切り落とし、倒れたところを首に一瞬で近づき切り落とした。


セリーヌの方は矢に魔力を込めてワイバーンの頭と翼に2本同時に矢を放つ。


矢がワイバーンに届く同時のタイミングでドリスがもう1匹のワイバーンの翼をレーザービームで飛べなくして、【身体強化】をかけつつ首を切り落とした。


ハヤトがその死体を回収して【次元収納ボックス】に入れていった。


5階そうは大きな扉が目の前にあり、アレンがゆっくり押して扉を開けた。


中には通常のミノタウロスよりも身長が大きく【鑑定】をしてみるとミノタウロス

の上位種でランクはSランク相当となっていた。


ハルバードを構えて鋭い突きをハヤト達にめがけて繰り出してくる。


ハヤトが全てを見極め躱しながらハルバードの先を切り落とし両足を切り落とし次にみてを肩から切り落とし、最後は首を切り落とした。


その間1分もかからずボス部屋のボスを倒した。


宝箱を罠がないのを確認して開けると『ミスリル製のリターンダガー』が輝いている。【鑑定】をすると的に当たるとすぐに投げた持ち主に戻り命中率98%%のダガーと出ていた。


これはボスノーさん所の魔道具屋にプレゼントしようとハヤトは喜んで宝箱から取り出した。

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