第30話 古代人の意思を引き継ぐ

スタンピードをハヤト達が沈静化してから数日がたった、ある日。


ハヤトは整理していた古代文明書類から『空飛ぶ船』の関係書類を見つけそれを元に図面を引いて考察すると魔石を使って揚力を操り自由に空を飛べる船が古代には存在していた事が分かった!


そして、更に資料を読み解いたら製塩の方法が載っていた。


この異世界では塩は岩塩からだけ採取して売られていたので、価格が非常に高かった。


勿論この世界も周りは海なので、日本のように海から製塩すればもっと塩が安く流通する筈だ。


それと、資料には魔石を利用した快速電車いな、『快速魔動鉄道車』の作り方も出ている。


古代文明下では、『空飛ぶ船』と『快速魔動鉄道車』が街々を結んでいたようだ。


快速魔動鉄道車はレールの上を車輪の付いた魔動車が時速60キロから100キロの速度で走るようだ。


レールには10メートル置きにランク3以上の魔石粉を塗布付付与して加速を促すシステムだ。


レールの上を走る魔導車にはランク5以上の魔石がそれぞれ1個装着されており、その魔石によって動力が動かされて車輪を回転させている。


セリーヌに『空飛ぶ船』や”製塩方法”、『快速魔動鉄道車』の話をすると、ギルバート侯爵様にその話を直ぐ話すのはもう少し待とうと言うことになった。


国の流通そのものを根幹から変えることなので、もう少し自分たち夫婦がブルネリアを知ってからでも遅くは無いと二人で話し合った。


そのためにもこの国を隅々まで旅行しながら冒険者の旅をして色々な都市を回ってみることにした。


侯爵様に話を伝えるのはまだ先の話としても、『空飛ぶ船』の設計図を資料に基づいて作り始めるハヤト。


魔石6以上が『揚力』を自由に調節して発生させるために必要で、更に各個室には

温度調節と気圧調節用の魔石3以上が必要なことがわかった。


船体はおおよそ全長70メートル、高さ10メートル、全幅20メートルほども有る大きい船だ。


個室はデッキの直ぐ下で左右に5部屋ずつ全部で10部屋を作った。


操舵室には左右二箇所に魔石を設置し、右には高さを設定する上下レバーをつけ、

左には前後にスライドするレバーを取り付け、そのレバーの一箇所に赤い線をつける。


赤い線よりレバーを後ろに引くと船体はバックし、前にスライドすると前進しスビードもそのレバーが調整する仕組みのようだ。


また操舵室のセンターには丸いハンドルがあり、右に回すと右に曲がり、左に回すと左に曲がる。


また、操舵室の部材の一部に古代語のパスワードが刻まれ、許可された人以外は運転も、船も作れない仕組みになっている。


図面をひき終わり、今一度資料を見ながら描いた図面をチェックし問題ないことを

確認後、庭に出て『マジックアイテム創造ボール』のボタンを図面を見ながら魔力をボタンに流し込んで押した。


庭には全長70メートルの『空飛ぶ船』が1メートルほど地面から浮いて出現した。


魔力を流しながらボタンを押すときに魔石レベル6の魔石を操舵室に配置して置くように念じて居たので出てくるときに地面より浮いて出現した。


ハヤトは飛び乗り、操舵室の右スライドを動かしながら更に浮上して水平航行してみる。


思い通りの動きをするので地面すれすれに浮かせたのち、【次元収納ボックス】に

収納した。


ハヤトとセリーヌはケープの街から少し出て第三の都市グランデに足を運んでここのギルドのクエストを1週間ほど受けようと『万能乗用車』で一家揃って移動した。


護衛依頼と違ってそれほど急ぐ旅でもない。


ケープを出て、先ずはスタンピードがあったロゴニーの街に2時間程で着いた。


冒険者ギルドに向かい先日魔物氾濫が起きたダンジョンを踏破しようと受付嬢のところに行く。


受付嬢にハヤトのカードを出して、先日スタンピードがあったダンジョン『戒めのダンジョン』に潜る旨伝えた。


場所は前回の対応で城門の西方7キロ先なので、『万能乗用車』で5,6分で入り口まで着いた。


流石にスタンピードが有った直後なので衛兵が4人ほどいたが、ハヤト達を認めて

最敬礼で入り口まで見送ってくれた。


ハヤトは前衛にアレン、その後ろにドリス、その後ろにセリーヌ、次にハヤトと銀龍の布陣で行く。


キラービーはアレンより少し先を【探査】しながら飛んでいく。


アレンが【照明】魔法で照らしながら進んでいく。


1階層はスライムが数匹いるだけだった。


アレンが、レーザービームで瞬時に蒸発させた。


2階層は平原ステージにファングボアが5匹ほど居て、アレンを見かけると突進してくる。


アレンが剣で2匹の首をはね、ドリスが同じく2匹の首を切り落とし、セリーヌが弓で持って頭を砕き【次元収納ボックス】に回収する。


更に行くと、ファングウルフの群れがおり、全部で20頭程いる。


セリーヌが離れたところから十数本の矢を一度に念を込めて射ると13匹のファングウルフの頭が矢で砕け散った。


残りのウルフをアレンとドリスが剣で切り倒して回収した。


3階層は岩場のステージで岩竜が2匹いる。


ここはハヤトが一瞬で1匹の岩竜の背中に乗って、硬い甲羅の上から”掌底破”を放ち甲羅の内側から内蔵を破壊して仕留め、直ぐに2匹目の背中に飛び移り、同様に

”掌底破”を放って葬った。


4階層に行く途中の通路に罠が有り、踏み間違えると床が落ちて30メートル下の槍の林に串刺しにされる罠だった。


全員が軽々とその部分を飛び越えて4階層の扉を開けると、オーガが1体剣を構えて立ちはだかった。


アレンが間合いを詰めて慎重に足、手を切り落とした後首も切り落として殺した。


何だか個室に居た割には弱かった!


5階層もボス部屋で、扉を開けるとアンデッドのスケルトンジェネラルが剣と盾を構えている。


アレンが剣で首を切り落とすが直ぐに骸骨の頭は本体にくっついて襲いかかってくる。


手首、足首、頭、胴を切り刻んでも直ぐにくっついて再生していく。


「アレン、これは僕に任せて」とハヤトが【結界】をスケルトンジェネラルにかけてその【結界】をどんどん小さくしていきスケルトンジェネラルの骨が砕けて粉々になって灰の塊になり最後は霧のごとく霧散してしまった。


そばには宝箱が有り、罠がないのを確認して開けると緑に光る指輪が入っていた。


【鑑定】をしてみると”時を司る指輪”と出て、30秒間自分以外の見える範囲の時間を止める『時間を司る指輪』と出ていた。


すごくチートなマジックアイテムなので、大事に【次元収納ボックス】に入れた。


6階層は海のステージだった。


『万能乗用車』に乗り込み潜水し始めると直ぐに目の前にケートスが1匹いる。


レーザービームで殺して回収した。


更に進むと大型のクラーケンがこちらに向かって来るので、眉間めがけて銛を撃ち

高電圧放電で討ち取った。


銛ごと引き寄せて【次元収納ボックス】に回収した。


7階層は密林ステージでウォーターベアが2匹襲ってくる。


アレンと、ドリスが同時に剣で対処して首を切り落として瞬殺してしまった。


更に数メートル先の大きな幹にポイズンスネークがいる。


太さが3メートル、長さ10メートルの巨大な大蛇だ。


「ドリス、私が頭を矢で破壊するから胴体を3等分割程度に切り刻んでくれる?」


「はい、奥様了解しました」


セリーヌが念を強く込めて放った矢は大蛇の目を居抜き脳を破壊して突き抜けた。


「ギギギャー」と叫び声を上げてのたうち回っているがドリスがつかさず3分割に

切り分けて殺した。


8階層は暗い死臭のする洞穴だ。


吸血鬼が5体向かって来る。


ライトに少し怯むが向かって来る速度は落ちない。


ハヤトが【聖魔法】で一瞬で浄化をしてしまう。


バンパイアもアレンが首と心臓を剣で貫きセリーヌが【火炎ストーム】で灰にした。


ミイラが20体ほど来るが、同じくセリーヌの【火炎ストーム】の餌食となった。


9階層まで来た。


9階層の火山ステージに赤龍が1匹いる。


ハヤトが全身を【気のシールド(スピリットシールド)】で覆い赤龍が吐く【火炎咆哮】をものともせず、しかも素手で赤龍の腹に”掌底破”を撃ち放った!


ものすごく大きい赤龍の体が10メートル程吹っ飛び、こちら側は無傷に見えるが

反対側の腹には大きな穴が空いて、内蔵が弾け出て血まみれで死んでいる。


アレン、ドリスが感嘆して「「マスターは矢張り神の化身です」」と同じ言葉で賛辞を送った。


ついに10階層のボス部屋だ。


大きな扉を開けると、そこにはグリフォンがいた。


鷲の頭に獅子の体を持つAクラス以上の魔物だ。


ここで今までハヤトの肩にいた銀龍君がおもむろに翼を広げて20メートル程に大きくなり、【火炎咆哮】を放った。


「ええええ、やりすぎー」とハヤトが叫ぶ!


「ご主人様、最弱に調整したのですが〜」


グリフォンは黒焦げに焼かれて死んでしまった!


確かシールドをかけていたがグリフォンのシールドさえも溶けて一瞬で消えてしまった。


宝箱がそばに有る。


罠はないので開けてみると、『遠距離通話器』が入っていた。


ケントとハヤトとが通話する以外他の誰か他話すことがあるかわからないが【次元収納ボックス】に回収して、ダンジョンコアとともに入れた。


転移盤に皆で乗って、1階層に戻ってきた。


スタンピードの後遺症は見られず、このダンジョンは既に平常に戻っていた。


冒険者ギルドに戻ってきたハヤトたちは資材置き場に刈り取った魔物達を納品して

ギルドの食堂で納品書ができるまで待つこと30分程、納品書が上がってきて受付にダンジョンコアと地図、納品書とカードを提出した。


更に待つこと15分ほどして、


「ハヤト様、白金30枚金貨57枚、銀貨45枚銅貨50枚とアレン様、ドリス様の冒険者ランクがお二人共Aランクになりゴールドカードに切り替わっております」と受付嬢がカードとお金をハヤトに渡してくれた。


ハヤトは全て財布の方にお金を入れた。


「アレンもドリスもAランクに晴れてなったね!」


「いや〜ご主人様達のSランクには遠く及びません。恐らくハヤト様はSSSランクを超えている強さですから」


「ドリスやアレンや奥様などのランクなどあまり意味がないよね」とハヤトはみなに小声で話をした。


取り敢えずハヤトは心配していたスタンピード後のダンジョンの状態は確認できたので此処にとどまってクエストを受けるよりは第三の都市、グランデに向かうことにした。


グランデの領主はエドガー侯爵様という方らしい。


その侯爵様の情報も含めてリサーチしながらグランデに2泊から3泊してクエストを受けようと『万能乗用車』で向かった。


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