12 吉兵衛さんが、総資産20兆越えの大金持ちだなんて知らなかった。よし、街に帰れるぞ!!!

「一体、どれくらいの資産があるのでしょうか。」

 

 「確か、五年ほど前は、20兆だとか、何とかいってた気がするね。今も増え続けているんじゃあ、ないかなあ。」


 バケモンだ。

 

 世界長者番付の一位でさえ、100兆程度だ。

 

 ま、もっと資産があるのかもしれないが。

 

 20兆あれば、国がつくれる。

 

 結構な国がつくれる金額だ。

 

 ステルス爆撃戦闘機ばくげきせんとうき原子力潜水艦げんしりょくせんすいかん核爆弾かくばくだん核武装かくぶそうにだいたいかかる費用は二兆から、五兆、だ。


 維持費いじひ莫大ばくだいな金がかかるため、20兆もなくなってしまうであろうが、

 

 考えてもみれば、世界を裏で牛耳じゅうじる巨大IT企業だとかは、やろうと思えば、世界を征服してしまえるのではないだろうか、と勘繰かんぐった。

 

 吉兵衛は、本気になれば、小さな国の一つ簡単につぶせるだけのお金があったのだ。

 

 なのに、滅魔大明神寺めつまだんみょうじんでらで、僧侶をしているだなんて、物好きな、おっさんだなあ、と、なんだか、親近感を覚えて、うれしくなった。

 

 

 「確かに、別格ですね。信じれませんが。」

 

 「はっはははは。僕もびっくりしたよ。冗談じゃあ、ないのかなあ、ってね。だけれど、施設をつくるとき、膨大な金をなんの躊躇ちゅうちょもなく出資したときは驚いたよ。まだ僕が、医療研究者として、名の売れていなかったときに、あのおっさんは、僕の研究の将来性を見越して、30億出した。大馬鹿ものさ。」

 

 30億か。いかれてる。

 

 「30億だったが、いまじゃあ、1兆円ほどの、価値のある施設に進化したのだよ。」

 

 1兆。

 

 世界中の金持ちが、治療をのぞむ、上流階級の富裕層ふゆうそうが、多額の金を叩いてでも、施しを受けるだけの価値があるのであろうと、思った。

 

 「おい。何を二人で、わし噂話うわさばなしなんざああしてんだ。金なんざああ、わしにとちゃあ、ただの紙切れじゃ、仏と神だけが、儂の信用できる、ものじゃ。」

 

 吉兵衛は、僕たちの話を盗みきき、していたようだ。

 

 吉兵衛さんの、産まれた家について気になった。

 「吉兵衛さんは、どこの、大金持ちの家に生まれたんですか。」

 

 少しの間を開けて、吉兵衛はいった。

 「機密事項きみつじこうじゃ。お前には教えんし、得手ノ坊のやつにも教えとらん。」

 

 機密事項か。

 

 信用されていないのか、どうしてなのかはわからなかったが、吉兵衛さんは、決して、自分の生まれに対して、詳しいことは教えてはくれないようすだ。

 

 「ま、仕方ないか。誰にだっていいたくない、ことはあります。」

 

 「悪いな。秘密は秘密じゃ、儂と儂の一家のな。」

 

 口の堅いところでは、しっかり、堅いらしかった。

   

 吉兵衛が、話おえると、得手ノ坊さんは、言った。

 

 「どうするんだ。明日には、帰るのか、帰るんだったら、もう、目隠しをして、耳栓をつけ、手錠をつけて箱の中に入ってもらうぞ。少し怖いし、心細いだろうがな。」

 

 「はい。よろしくお願いします。」


 僕は、箱の中に入れられた。


 何もみえなくて、何もきこえない、匂いもない。

 

 あと何時間、箱の中にいればいいんだろう。

 

 時間がわからないように、バスが出発する時間さえわからないのだ。

 

 箱は強い耐震性たいしんせいを持っているために、バスの揺れを感知することさえできない。

 

 施設の中が、何時なのかもわからなかった。

 

 今の私には、太陽が昇って降りるという感覚が欠如していた。

 

 箱の中は、真っ暗で、心がおかしくなりそうだった。

 

 お腹も減ってきた。


 腹が減ったなあ、眠るにも、コワくて、警戒心が解けず、寝付けなかった。

 

 どれくらい経っただろう。

 

 箱が開かれ、手錠が外され、目隠し、耳栓がとられた。

 






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世界長者番付・・・金持ちランキングのこと


ステルス爆撃機・・・ステルス、つまりレーダーから感知されない機能を持つ航空機で、爆弾などを投下できる能力を持つ戦闘機の事。


原子力潜水艦・・・動力に原子炉を使用する潜水艦のこと。


核爆弾・・・核分裂連鎖反応や核分裂を利用した爆弾のこと。


核武装・・・核兵器を持つこと。


維持費・・・維持するのにかかるお金の事。メンテナンスや、保管などにかかる費用。


莫大・・・程度や数量が極めて大きいこと。


牛耳る・・・団体や組織を支配し、思いのままに動かすこと。


勘繰る・・・あれこれ気をまわして悪い方に考える。


躊躇・・・あれこれ考え悩み決心のつかないこと。




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