第91話 ラグーラ工房
俺はエイセル親方に敬意を示し、いや弔意か?
俺はこういった知識がねえからよくわからん。
兎に角俺は1年喪に服した。
それが礼儀と思ったからだが、セシーリアちゃんもヒルデもこれに関しては何も言わなかった。
この間に俺は弟子を取ろうと考えたが、早々之と思う奴はいなかった。
先ず今どきの奴は鍛冶にたいして好く思っていない。
先ずは冒険者だ!
ダンジョンだ!目指せ剣と魔法でドラゴンスレイヤー!!
そのくせ装備は半端、実力もねえのに深層に向い2度とその姿を見せねえ奴の多い事。
急がば回れ、と言う言葉があるが若い奴らはせっかちで、しかも地道に実力をつけ、実力に見合った階層を攻略しようという意識が欠如している。
これに関しては俺は運がよかった。
セシーリアちゃんの薬草に対する拘り?
これのおかげで俺は薬草採取で身を立て、その間にしっかりスキルを学び下地を作って行けたからな。
もし俺がこの国に来て冒険者になった時、あの時すぐにダンジョンに挑んでいたらどうなっていたか。
そして装備だ。
金も武具を扱う能力もねえくせに、身の丈に合わねえ武具を得たがる。
俺の工房、ラグーラ工房には数打ちの武器も扱っているが、数打ちと言ってもそこらの工房でと比べる事のできねえ出来具合と品質だ。
最低でも金貨10枚。
ざっと相場の10倍だな。
たまに高いと暴れる阿呆がいるが、そんじょそこらの奴らでは俺に太刀打ちできん。
そしてさらに輪をかけ、盗もうとする狼藉者が後を絶たねえ。
尤も俺の工房の武具は全て精霊が宿っている。
そう言った愚か者は、俺の装備を持ってダンジョンに向かうはいいが、途中で俺の装備は精霊が責任をもって盗まれた装備を工房へと戻してくれる。
馬鹿な奴らだ。
大抵そいつらの実力では帰還も難しい階層で、精霊は盗んだ奴らから装備を没収するという、一寸いたずら心?なお茶目な所もあるが、それを食らった方がたまったもんじゃねえ。
尤も盗んだ方が悪いんだけどな。
そう言ったやつらも俺の所には2度と顔を出さん。と言うかダンジョンから帰還できない。
そしてまた俺の工房にそう言った若い連中がやってきた。
「おいおっさん、何だよこの値段!他の工房じゃあ金貨1枚だ!ぼったくるんじゃねえ!!」
おっさんよばりとか・・・・
「この短剣の実力を分かって言っているのか?」
「は?ただの短剣じゃねえかよ!」
目利きが全くなってねえ。
冒険者たるもの、武器は己の命を託す最も大事なもんだ。
自身の扱う武器がどのような実力で、自分にその能力を十全に発揮できるかどうかの見極めができるかどうか、これは即ち生きるか死ぬかに関わってくる。
それができないようじゃあ・・・・しかも金貨10枚を払う金もないとか。
「若いの、この武器の価値が分からんうちは、俺の工房には来ない方がいい。そして最初は地味でも薬草採取をする事だ。まずは基本を学べ。」
さんざん悪態をついてそいつは帰って行った。
そして次に多いのが、あってすぐに俺に結婚をしろと迫ってくる女どもだ。
確かにそいつらは若い。
明らかに年下だ。
だがいくら俺でも全くの見ず知らずの女といきなり結婚するわけがない。
そしてそいういう女は大抵セシーリアちゃんとヒルデが門前払いにするんだが、珍しく今日は一人の女がやってきた。
どうやってセシーリアちゃんとヒルデの双璧と言われる包囲網をかいくぐってきたんだ?
「ご機嫌麗しゅう。」
誰だこいつ・・・・顔見知りか?俺の記憶にはないが。
「何だあんたは。俺はあんたを知らんぞ。」
「まあそんな寂しい事を、パパ。」
俺はこの時ほど間抜けな顔をした事はないという程きっと間抜けな顔をしてたんだろう。
パパ?この俺が?
俺は童貞だ・・・・カードも男の子・・・・だよな?
俺はカードを見たが男の子だった。
それに俺は奴隷から解放されてからこの方あっちが駄目なんだ。だから俺がパパになるなんて事はないはず。
【助けてセシーリアちゃん!ヒルデ!!ここにおかしな女の子がいるんだよ!】
どう見ても10歳になっていない絶壁な女の子。
背も俺の胸ほどまでしかねえ。
俺は男としては背が高くないのに、だ。
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