第104話 閑話 サ終の足音
天界では緊急の会議が行われていた。
集まった神々一同。相変わらず縛られた魔神もいる。
今回はとくに拒否権がなかったと周りに訴えている。
主神が重々しく告げた。
「城塞戦が炎上中じゃ。すっごく燃えとる」
守護遊霊たちのクレームが現在進行形で殺到中だ。
「てめーのせいじゃねーか!」
「魔神が止めたよな、あれ!」
「あれだけ【消失】したらそりゃ守護遊霊も逃げるわよ!」
「むしろ何故【消失】した救済策に課金アイテムを用意しなかった?!」
口々に避難の声を上げる神々。
魔神は呆れ顔で黙っているだけ。それが余計に重く、圧を感じる。
「この世界の危機だ」
「それあなたが招いたんですよね!」
美の女神もさすがに今回ばかりは擁護してくれなかった。
「いやはや、【賭け】とかを他の守護遊霊にふっかけるなんて想定外じゃろ……」
力無くこたえる主神。
「勝利した守護遊霊陣営、敗北した守護遊霊陣営、双方から猛抗議がきておる」
「今回はどっちも仕様の穴をついてきただけ。それは双方変わりません」
自然の女神が弱々しく告げる。
「守護遊霊の世界はな。神々の想定を上回って初めて攻略が成立するのだ。我らはできるだけこれを防がなくてはならない。そのまま世界の寿命に直結するからだ」
魔神がようやく口を開いた。
「バランスはどれだけ変えてもその都度最適化され攻略される。強職を弱く、弱職を強く。環境を一変させるアップデート。武器魔法の仕様変更」
「魔神。その認識はやや古いぞい。今や極端なバランス変更は訴訟対象になるのだ! そうなれば炎上案件どころではない。評判がだだ下がり、セイエンも弾け飛ぶ」
魔神の苦言に、主神は苦悩を訴える。
「そう。だから実装は慎重にならねばならないのだ。見たぞ、城塞戦の仕様。なんだあれは。大量破壊魔法の制限もない。勝利条件の設定も曖昧なまま成立。もっともいけなかった仕様は一方的な布告可能と賭け成立だな」
「あーあー聞こえない」
主神は耳を塞いでいやいやした。
「生半可の仕様実装で守護遊霊が見切りをつける。――現実世界の住人にとっては当然のことなのだ」
彼は実装を急ぎすぎたのだ。テストプレイの名目ですらあれだけ守護遊霊たちが暴走した。本実装だとしたら今の炎上どころではないだろう。
「守護遊霊世界の外国から輸入した世界やeスポーツは一部の流行のみになる。何故だと思う。そも守護遊霊がいるニホンというのは好戦的ではないのだ。対人戦をウリと勘違いしてそのまま海外の仕様を実装しているからだ」
「成功しているものもあるぞ」
「成功している世界ほど、古い世界。もう移住なんてしない。守護遊霊たちのセイエンも無限ではない。限られたシェアの奪い合いよ」
主神がすがるような目で魔神をみた。
「どうすればよいと思う?」
「もはや手遅れ」
「そういわずに!」
「詫び石配って様子見するかいいだろう。最近は感謝を捧げる石や、不安にさせたお詫びによるご懸念石もあると聞く」
「待って。今期の予算もうあまりないの」
「スカスカのアップデートスケジュール酷いものだよな?」
魔神も苦渋の表情を浮かべている。
「未来がないと悟った守護遊霊たちの逃げ足は速いぞ。新しい世界は生み出され消えていくのだから」
「サ終させてなるものか」
「今は見守るしかあるまい」
魔神は遠くを見ていた。
この世界がどうなるか、見極めようとするか如く。
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