第125話 踊り子リーファと契約

 テーブルの燭台と壁際のランタンのみの薄暗い部屋の中、オレとリーファは向き合って座っていた。


 いよいよ話の核心に入ろうとしたその時、タイミング悪くウェイターが注文した飲み物を運んで来た。

 何も言わずテーブルにグラスを2つ置き、軽く一礼してドアを締めた。


 そのグラスを口元に運びながら、改めて彼女を見ると実にいい女だ。

 リーファは『サンドベリアの紅玉ルビー』と呼ばれているほどの美女で、華奢な体つきだが、バランスの取れたプロポーションに加え、魅力的な笑顔で誰もがメロメロになるのだ。

 サマージャケットを羽織っているとは言え、中はステージ衣装の純白のビキニトップスとパレオのまま。

 垣間かいま見える胸の谷間に否が応でも視線が行ってしまう。


 そんなオレの視線を気にも留めず、リーファは美味そうにジントニックを喉に流し込む。

「邪魔者は居なくなったわ、話を続けて」


 オレは彼女の眼を見つめながら言った。

「リーファ、君をスカウトしに来たんだ」


「あたしをスカウト?」

 リーファはオレが何を言っているのか、理解できない様子だ。

 改めて思えば、彼女とは共通の災厄を乗り越え、男女の仲になった間柄とは言え、たった数日間一緒に居ただけで、お互いの素性をよく知らないのだ。


 オレは今の自分が置かれた立場についてつまんで話した。

 ソランスター王国第三王女であるジェスティーナが、盗賊に襲撃されていた現場に遭遇し、運良く窮地を救ったこと。

 その褒賞を受けるため開かれた王室主催の晩餐会で、偶然にも国王陛下の暗殺を未然に阻止したこと。

 その2つの功労により、多額の報奨金を獲得し、ジェスティーナとの婚約を許されたこと。


 エレーぜ伯爵を捕縛したくだりは、リーファも知っているので、王国へ連行した以降の顛末について話した。

 その褒賞として今度は伯爵位を叙爵され、セントレーニアとサンドベリアを合わせた領地を所領として下賜かしされたこと。

 そして、つい最近、自分の所領である湖の畔に滞在型リゾートを開業したオーナーであること。

 オレが異世界からの転生者であることは、あえて言わなかった。


 黙ってオレの話を聞いていたリーファは次第に眼を丸くして驚いていた。

「貴方、只者じゃないと思ってたけど、そこまでスゴい人だとは思わなかったわ」


「いや、成り行きでと言うか、ただ運が良かっただけだよ」


「そこまでなると、運がどうとか言う話じゃないわ。

 流石に私が惚れただけのことはあるわ」

 リーファはサラッと言ってのけた。


「貴方の今の地位とか立場は理解できるけど…

 スカウトってどういうこと?」


「それはオレのリゾートに来て欲しいと言うことさ…

 オレと契約して君の情熱的な踊りをステージ上で滞在客に披露して欲しいんだ。

 十分な報酬と住処すみかは保証する」


 それを聞いたリーファは、暫く考えていたが、答えは驚くほど呆気なかった。

「いいわ…

 ただし、幾つか条件があるの」


「どんな条件?」


「私だけじゃなく、他のダンサーとスタッフも契約に入れて欲しいの。

 私たちはチームだし、1人じゃステージは成立しないし…

 みんなが賛成するか分からないけど、悪い話じゃないから反対するメンバーは居ないと思うわ」


「分かった、リーファのチーム全体との契約に変更するよ」


「2つ目の条件は、貴方のリゾートだけじゃなく、唄うクジラ亭のステージに立つことも許可して欲しいの…

 あそこは私たちを育ててくれた場所ホームグラウンドだし、熱心に応援してくれるファンも多いのよ」


 リーファが言うことは、十分に理解できる。

 それも飛行船の定期運行が始まれば、何の支障もないことだ。

 近い将来、王都でも公演する予定があることを納得してもらい、その条件を了承した。


「3つ目の条件は…」

 そこで、珍しくリーファが言い淀んだ。


「3つ目の条件は?」

 オレがオウム返しに聞き返すと、彼女はこう答えた。


「あたしを貴方の女にして欲しいの…」


 予想とは全く違う彼女の言葉にオレは呆気に取られた。


「貴方に婚約者がいることは理解しているし、貴方が秘書や護衛たちとも親密な関係にあるのは、貴方を見る彼女たちの眼差まなざしで分かるわ。

 1番じゃなくても、2番目でなくてもいい、末席でいいからあなたの女に加えて欲しいの…」


 リーファが、そこまでオレに惚れていようとは思いもしなかった。

 女神フィリアがくれたチートアイテム「英知の指輪」の「魅了」が効果を発揮しているのは間違いないが、自分を窮地から救ってくれた白馬の王子様効果があるのだろうと思った。


「ありがとう、そこまでオレを思ってくれたなんて。

 それじゃ、オレの方から改めてお願いするよ。

 リーファ、オレの女になってくれ」


 そう言うとリーファは立ち上がり、隣の席に移動し、オレに抱きついてきた。

「今日から私はあなたの女よ…」

 リーファの吐息が耳元にかかり、得も言われぬ甘い女の匂いが鼻腔を刺激した。


「他に条件はあるかい?」


「1つだけあるわ…」


「それじゃ、その条件も入れて契約書にサインしてもらおう」


「サインなんて要らないわ」

 リーファは頬を紅潮させ、オレの耳元でこう囁いた。


「最後の条件は、今この場で私を抱くこと、それが契約サインよ」


 その言葉の意味を理解したオレは、リーファを優しく抱き締めた。

 どちらともなく唇を求め、やがてお互いに舌を絡めディープキスとなっていく。


 リーファは、羽織っていたサマージャケットを脱ぎ捨て、純白のビキニトップスを取ると形の良い乳房が露わとなった。

 オレはリーファを膝の上に乗せ、左手を彼女の背中に回し、右手で乳房をまさぐり、舌で鮮やかなピンク色の乳首を刺激した。


 彼女はパレオと下着を取り去り、全裸になるとオレの上に乗った。


 ♡ ♡ ♡ ♡ ♡


 オレはリーファの華奢な体を支え、ゆっくりと腰を上下させた。

 リーファは、その度に喘ぎ、ビクビクと感じている。


「あ、あんたの…、やっぱり、おっきいわ…

 それに…、からだの…、相性もいいし…」

 リーファが息を切らし、喘ぎながら感想を述べた。


 動く度にリーファの形の良い乳房と長い髪が上下に揺れ、なんともエロい。

 リーファはオレの上で腰を振り、仰け反りながら部屋の外に聞こえるほど大きな声で喘いだ。


 リーファの腰はオレに吸い付くように密着し刺激し続けた。

 やがて、お互いにピークを迎えるとオレとリーファは同時に果てた。


 リーファは、そのまま何度も痙攣し、それが収まるとむさぼるように唇を求めてきた。

 甘い香水の匂いがオレの鼻腔びこうを刺激した。

「あんたとするの、やっぱり気持ちいいわ…

 毎日でもしたいくらいよ」

 リーファはそう言うと、ゆっくり腰を動かし続けた。


 狭い小部屋の中で、今度はリーファを壁際に立たせ、後ろから彼女を攻めた。

 最初はゆっくりと、そして徐々に腰の動きを速めリーファを攻める。

 リーファはその度に大きな声で喘ぎ感じていた。

 確かにオレとリーファの体は相性が良さそうだ。


 オレは背後からリーファの形の良い乳房を揉み、乳首を指で刺激するとビクビクと面白いように反応している。

 快感が全身を駆け巡り、それに連動してリーファも絶頂を迎え、オレは彼女の中に2回目のピークに達した。

 

 事が終わるとリーファは満足げにオレに言った。

「これで貴方との『専属契約』完了よ!」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 リーファと別れ、深夜部屋に戻ると「お帰り」とベッドから起き上がり、ジェスティーナが迎えてくれた。

「彼女をうまくスカウトできた?」


「うん、契約できたよ」


「そう、良かったわ。

 じゃあ、私ともお願いね…」

 そう言って腕を伸ばし、オレにハグを求めた。


 どうやらジェスティーナは何でもお見通しのようだ。

「でも、その前にシャワー浴びてきてね」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ジェスティーナとを終えてから、ベッドの中で彼女に聞いた。

「なんで分かったの?」


「そんなの簡単よ。

 あの女の匂いが、あなたからプンプン匂って来たんですもの、すぐに分かったわ」


 女性に関してジェスティーナに隠し事は出来ないとオレは改めて思った。 

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