第40話 用意周到
別居を始めてからというもの、子供たちの様子が気がかりだった。
やんちゃ盛りの長女と次女、それにまだまだ目が離せないほどの自由奔放な長男、そしてさやかのお腹の子供・・・。
別居を言い出した自分が罪人のように思えてくることがある。
罪悪感、劣等感、いろんなものが混ざり合った複雑な気持ち。
でも、週末だけは子供たちのいる家に帰っていたから、その時ばかりはたくさん遊んで、いろんなところに連れて行ってあげられるようにしていた。
さやかのお腹が大きくなる前に、目立つ前にどうしてもこの気持ちを整理しなければならない。
自分の子だと思う。
でも、もう受け入れることができない。
どうしてもあの時の辛さ、お腹に宿った命を殺すことはできない、でも自分の血を分けた子ではない、さやかのお腹から出てくる子は全て自分の子だと思えばいい、きっとこの子は家族の大切さを教えてくれてるんだ、とさえ思った。
でも、同じシーンになるとそれがなんとも気持ちの悪い、言い表せない気持ちになるのだ。
どうすればいいだろう、本当にどうすればいいのか、何が正しくて何が正しくないのか、そこもわからない、誰にも相談できない。
ただ、さやかのお母さんから連絡があり、どうしても話しておきたいと言われ、別居中のアパートに来ていただいた。
娘の我儘をすべて受けれる必要はないと。
お母さんはシングルマザーとして、さやかとその妹を育ててきた。女手一つで育て上げた、キャリアウーマンでもあり、プロとも呼べるほどの人だ。
自分の責任を押し付けてしまったともいわれた。
娘の過ちを受け入れるのは母親である私だとも言われた。
夫婦のことに口出しはできないけれど、あんなふうになってしまってごめんなさいと謝罪された。
でも、本当に、夫婦の問題であり、お母さんが謝るなんてことしてはいけないと伝え、しっかり考えて答えを出しますと伝えて、お帰り頂いた。
さて、これからどうしようか。
生まれてくる子を愛せるだろうか、逆に彩斗はなぜあいすることができるのだろう。
そんなことをずっと考えていたら、あっという間に一週間たち、そろそろ行動していかないと始まらないと思っていたところで、さやかから話があると言われ、子供たちが寝静まったころに家帰った。
散らかっている。
きっといっぱいいっぱいなのだろう。
一人でお腹に子供を抱え、三人の子育ては想像を絶する。
そんなさやかから、離婚を切り出された。
ある程度の覚悟はしていたが、来る時が来たという感じだった。
離婚することはとても辛い。
親権は絶対にさやかが持つべきだ。
そうなれば自分が会いたいと思うときに子供たちに会えなくなるのは当然だ。
それに、さやかへの愛情がなくなったのかと言えば、そこも違う気がする。
それでも、今は離婚が一番正しい選択肢ではないかと思った。
自分ができる範囲のことはすべてやろう。
子供のこと、彩南、彩幸、彩斗のことは全て、お金が絡むことは自分が面倒を見よう、それで、仕事も頑張れる。
家はどうするのかと聞いた。
この家はさやかの名義ではない、さやかの名義にするわけにもいかない。
新居を用意してやろう。
そこまでは面倒を見よう。
それからの生活は、養育費、母子家庭に入る、子供の手当て、今までの貯金でなんとか生活を立て直し、働くことも決まっていると言われた。
決めたこと以外のことはあまりやりたがらない性格だということも承知して、離婚することとなった。
人生で大切なものはなんだろう、帰り道に一人考えた。
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