8 【秋道視点】
『・・・という訳だ。ゆきにはしばらくこの屋敷で過ごしてもらう事にした。いろいろ迷惑をかけることももしかしたらあるかもしれない。その時は力を貸してくれ。宜しく頼む。』
その場所には千代様と数人の家臣が集められていた。
女がどのような過程で屋敷の牢屋に辿り着いたのか、時継様より直々に説明があった。
時継様があの女をこの屋敷に置くと言った時、千代様も私達も全員が反対をした。
どこから屋敷に入り込んだかも分からない女をどうしてそのままにしておくのか、今になっても到底納得出来ない。
どこか違う空間、時代から来た?ではどうやってと聞いたら穴から落ちたと言っているらしいじゃないか!
まったく、私達をバカにしているとしか思えない!
そんなマヌケな話をなぜ時継様は信じられたのか・・・まさか、知らない間に変な暗示でもかけられてしまった・・・女はやはり変な術を使う忍びだったのでは?
屋敷にいるようになってからも女を監視していたが足が痛むのは誠のようで部屋でじっとしている事が多かった。
最近になってようやく痛みがとれてきたのか歩いている姿を見かけるようになっていた。
『あの・・・ちょっと屋敷の外に出かけてきたいのですが・・・。』
『そうか、ならば誰かつけよう。そうだな・・・では、秋道!そなた、ゆきのお付きとして一緒に出かけてきなさい。』
名指しされて思わず鳥肌が立つ。
私とこの女が、二人で、街に?
『んなっ!?なぜ私がこのような見ず知らずの者を守らなければならないのですかっ!他の者に行かせてください!』
私がこのような怪しい者と一緒に過ごすなど・・・。
『ゆきの境遇を全て話したのは私が最も信頼している数人に限られておる。異国の地から来て何も分からない女性をそなたはそのまま街に放り出すというのか?』
誤解されたくないのではっきり言っておこう。
私はあの女が可哀想などとは微塵も思っていないのだ。だが、時継様が最も信頼している一人の私に頼んできたこと。そう言われては断れないではないか。だから渋々了承する次第になったのだ。
『・・・くっ、ならば、仕方ありませぬな。』
それに、私には一つ、考えがある。
街に行けば気が抜けて隠しているこの女の裏の顔が見れるかもしれんのだ。
『私は玄関にいるから準備が出来次第すぐ来るのだぞ!』
見ておけ!必ずその化けの皮はがしてくれるわ!!
そう思い私は気合を入れて玄関で女の到着を待っていた。
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