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『ふむ・・・そうなのか。』
時継様は少し困った顔をして私の方を見つめてきた。
そりゃそうだよね、私言ってること滅茶苦茶だし、こんな変な女助けちゃってどうしたもんかなとか普通考えちゃうよね。
『大変だったな。』
『へ?』
『色々と違う場所からきて嘸かし心細かったであろう。』
時継様は優しい笑顔を私に向けてくれた。
『信じて・・・くれるんですか?』
こんなイカれた不審者の話を。
『勿論だ。そなたが嘘をつくとは思えんからな。』
な、なんて良い人なんだ・・・と思わず感動してしまう。
天気がいい中で太陽の光が時継様の背中をしっかり照らしている。信じてもらえたので私には時継様が後光がさしている神様のように見えた。
それから私は仕事終わりに買い物をした後お地蔵さんの前で拝み、青い光に包まれて落とし穴に落ち、気付いたら牢屋の中にいたという話を出来るだけ分かりやすく時継様に伝えた。
自分の身に起こった出来事なのに突拍子がなさすぎて話していて頭が痛い。
『地蔵か・・・地蔵なら屋敷の中にもあるぞ。』
『え、そうなんですか!』
『何か手掛かりになるかも知れない。そこまで案内しよう。』
『ありがとうございます!っ、痛っ!』
立ち上がると共に痛みに襲われる。そうだ、そういえば足を怪我していたんだ。昨日も結局足を上げられなかったのでお風呂で湯船には浸かれずにお湯を桶でかぶって終わったっけ。
『大丈夫か?』
よろける私をすぐに時継様が支えてくれる。
『す、すみません・・・。』
『歩けそうか?』
『はい、少しずつであれば歩けます!』
『もう少し足が良くなってきてからのほうがいいのではないか?地蔵までわりと歩くぞ?』
『いえ、大丈夫です、行かせてください!』
足は固定してあり痛み止めも飲んではいるが動かすと多少は痛みがあった。
でも、そんな事は言ってられない。確かめなければ。このお屋敷にあるというお地蔵さんを。もしかしたらそれが元の世界に戻る何かのきっかけになるかもしれない。
私は足を引きずりながら時継様に寄りかかってお地蔵さんへと歩き出した。
思っていたよりかなり広いな・・・。昨日はほとんど屋敷の中にいたのでこの外がどうなっているのかなんて気にする余裕がなかった。
テレビで見た事ある、昔の時代の大豪邸。奥には大きな池があり赤い橋が架けられ、鯉が泳いでいるのが見えた。
『あの橋を越えた先にある。』
え、マジか、ちょっと遠いな・・・とは思ったけど今更後には引けない。
時継様に助けてもらいながらゆっくりとお地蔵さんのある所まで近づいていき丁度池に架かる赤い橋に辿り着いた時だった。
『時継様っっ!おのれ、ゆきとやら、時継様に一体何をしてくれてるのだ!』
後ろからヒステリックな声が聞こえて来てかなり嫌な予感がした。振り返ってすぐにそれは的中する事になる。
鬼の様な形相で千代がこちらに走ってくるじゃないか。
悪いけど今本当に足が痛くて動けないので鬼ごっこは出来ません。そう思いながらちゃっかり時継様の後ろに隠れた。
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