第六十四話 ゆるキャラ、やり返される
機械帝国第3層、人類同盟と国際連合という人類国家の半数近い国家が加盟する二大勢力の攻勢を受け、なお陥落させることのできない難攻不落のダンジョン。
鉄道駅のような構造が幾層にも積み重なり、複雑に入り乱れるフロア同士の連絡通路は正に迷宮。
その迷宮に潜むは概数3000体を誇る体高10mの機械兵とたった1騎の英雄。
魔界第3層15000体。
高度魔法世界第3層52000名。
末期世界第3層28000位。
同階層のダンジョンと比べれば寡兵ではあるものの、魔物や天使を凌駕する単体戦闘能力と少数であるが故の高度な統率が人類を苦しめていた。
そして2045年7月18日、この地にまた新たな人類国家が挑まんと足を踏み入れる。
果たしてそれは勝利への希望となるか、それとも敗北の数を増やすだけなのか……
「さあ、始めるぞ!」
「燃やすでござる」
「ヘイヘーイ!」
人類最精鋭、英雄国家…… 日仏連合、通称チーム日本。
投入戦力3名と20体、1個野戦軍団と1個飛行連隊!
「人類に黄金の時代を……!」
「姫様は今日も輝いておられる」
「俺の信心で列強を宿命転換させてやる!」
【ふぁー!】
第三世界最強勢力、公女殿下と愉快な仲間達…… 自由独立国家共同戦線。
投入戦力16名と3000フワッフ!
「ここが機械帝国第3層……!」
「知っているのか、モルラハニ?」
「新たに始まる私たちの日々。
決めたのは、戦うことを諦めないこと。
誓ったのは、昨日よりもっと強くなること。
動き始めた運命に立ち向かうために……
もう二度と、大切な人を傷つけないために……!」
「無理だと分かっていても……
やんなきゃいけない時だって、私達にはあるのだー!」
「吾輩こそ月夜の代行者!
月に代わって仕置きせねばならんなぁ!!」
アフリカ連合、島嶼諸国連合、ラテンアメリカ統合連合、自由アジア諸国共同体、新興独立国家協定、汎アルプス=ヒマラヤ共同体。
投入戦力83名、内魔法少女7名!
魔石、攻略特典の獲得、魔石、政治取引、自勢力への勧誘、魔石…… 胸に秘める想いは多々あれど、人類の敵を倒そうという意思は共通。
侵略者たる機械帝国を倒さんと進軍する彼らを出迎えたのは、先にこの地で戦っていた人類の同胞。
「ちょっとぉ!!
遅すぎるぞ、トモメ!」
国際連合首班アレクセイ・アンドーレエヴィチ・ヤメロスキー。
「———— うん?
なんだ、今更来たのか」
人類同盟指導者エデルトルート・ヴァルブルク。
歓迎の言葉を受けた彼らの端末に突如表示される文字列。
『機械帝国 において 第3層の解放 が達成されました
【ロシア連邦 ドイツ連邦共和国 アメリカ合衆国 サハ共和国 中華人民共和国 中華民国 福建共和国……詳細】 が達成しました
7日間 機械帝国 に侵攻することはできません
【階層制覇 12 】が達成されました 達成者には 特典 が 追加 されます
レコード は 1689時間24分10秒 です
【総合評価 B 】を獲得しました 特典 が 追加 されます』
機械帝国 第三層 無限迷宮シンジュク=エキ
ロシア連邦 ドイツ連邦共和国 アメリカ合衆国 サハ共和国 中華人民共和国 中華民国 福建共和国……詳細 攻略完了
『機械帝国 は 第四層 が解放されました
機械帝国 は 武装 が解除されます
機械帝国 は 国軍 の投入が許可されます』
「………… えっ?」
機械帝国第三層は攻略完了………… 嘘でしょ?
嘘だと言ってよ、アレクセイ。
「もうこの階層は攻略完了したぞ。
俺がすぐに来て欲しいと伝えたのに……」
そんな馬鹿な。
確かにちょっと焦らした。
本当は2、3日で行けたのに、わざと参戦時期を遅らせたのは事実だ。
だけど、俺だってちゃんと攻略状況を白影や偵察機を使って調べていたんだぞ!?
事前調査では、昨夜に敵司令部がありそうな場所をようやく見つけた段階だったじゃないか!
それがたった一夜、朝に俺達が参戦した時には既に階層ボスが討ち取られているなんて予想外も良い所だ。
高嶺嬢や白影なら可能だろうが、残念ながら同盟と連合に彼女達のような超戦力は存在しない。
ガンニョムはパイロットがポンコツだし、強化装甲は安定した強さがあるものの超戦力というほどでもない。
原潜と葉巻は論外。
水筒美少女部隊は唯一可能性がありそうだけど、彼女達は対人専門の訓練を積んだ兵士だ。
巨大な機械兵相手に爆発的な突破力を持っているか極めて怪しい。
一体、機械帝国で何があったんだ。
「ずいぶん大勢の手下を連れてきたようだが、それも無駄になってしまったな」
エデルトルートが気の毒そうに俺を見る。
可哀そうな奴に向けるようなその視線、止めてくれない?
「…… これは驚いた。
まさか一晩で敵集団を突破し、階層ボスを撃破するとは流石に予想外だったよ」
別に悔しくなんてないけど、社交辞令としてさも予想外ですといった表情をしてやる。
本当に悔しくなんてないけど!
だから分かったような気持ちの悪い笑顔を向けるなや!!
「それは光栄だ。
まあ、予想外なのは私達も同じなのだがな」
エデルトルートが苦笑いを浮かべながら可笑しなことを言う。
同盟軍を統括しているエデルトルートが予想外ってどういうことなの?
アレクセイを見れば、こちらも同じ反応で彼女同様予想外だったらしい。
お前もか、アレクセイ。
「ダンジョン未踏破領域の奥底に存在していた階層ボスの撃破は傭兵の戦功だ」
傭兵だぁ?
このダンジョン戦争で一番聞きなれない言葉をアレクセイが口にした。
傭兵は雇用主から金銭などの利益により雇用され、戦争に参加する兵士を指す。
敵を倒せば資源1万tに変換できる魔石が手に入るダンジョン戦争では、雇用主に雇われなくとも敵さえ倒せれば莫大な利益が手に入る。
その為、傭兵をするのは戦闘以外の技能によっぽど特化しているか、雇用主が赤字を出してでも撃破したい敵がいる場合くらいだ。
「エリトリアの傭兵…… いや、もう彼は英雄か。
エリトリアの英雄、それが彼の呼び名だ」
「折角来たのだし、トモメも会ってみるか?」
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