第五十五話 天の奇襲
日仏連合主導の開戦から10時間が過ぎようとしていた時、戦局は大方予想通りに進展していた。
7000億円超の巨額を投じて編成された6個機甲連隊と2個砲兵連隊は、数千億円の燃料弾薬を消耗しながらも末期世界第3層において無人の地を行くが如き快進撃を見せている。
その快進撃の中核を担っている存在こそ、俺の特典である美少女と美少年の従者ロボ達だ。
歩兵戦力としては強力ではあるものの、他の特典と比べて力不足が否めなかった従者ロボ達。
そんな彼らだが、積んでいる人工知能と演算能力は相当優秀なものだったようで、無人機統制において一体一体が連隊級管制基地と同等の能力を有していた。
まるで自分の手足のように無人兵器部隊を操り、占領地域を広げていく様は、精兵で知られる祖国の国防軍と比較しても何ら遜色ない。
「ははは、圧倒的じゃないか」
戦闘指揮車の中で、俺は自軍優勢な戦況に満足感を感じながら戦域図を眺めていた。
末期世界の天使達は追い詰められた者特有の必死さを見せ、執拗な事前砲撃を受けたにもかかわらず健闘していた。
ダンジョンの広範囲に張り巡らされた地下塹壕を使用した神出鬼没の戦術は、個々人の高い戦意も合わさり強力だ。
それに加えて魔法という未だに解明できていない技術を用いた攻撃や飛行能力を有しているので、それらに対する有効な戦術が確立できていない現状では極めて厄介な相手と言って良い。
しかし、従者ロボ達は戦線をヌルヌル変化させて敵の奇襲を弾力的に受け止め、優れた戦域リンクシステムからもたらされる強力な火力によって押し潰している。
適切なタイミングで正確無比な砲撃を叩きこむ支援砲撃と、高度な柔軟性を持ちながら完璧に統制された高機動機甲部隊。
その姿は正に日本国国防陸軍の主ドクトリンである諸兵科連携戦術を体現していた。
うん? 第三諸国の探索者達?
彼らも元気にやってるよ。
最前線ではないけれど、敵がいない訳でもない程良い緊張感を持てる戦場に適宜誘導されていく彼ら彼女ら。
こちらの部隊から支援があるのも手伝っているけど、それでも良くやってるんじゃないか?
戦場の後方で美少女1号、美少年1号ら古参勢が率いる機甲大隊に護衛されながら、俺の心は高みの見物状態だった。
始める前は心配で何度も砲撃を繰り返しちゃったけど、やってみたら案外楽勝ね!
無敵皇軍の前では輪っかの付いた鳥人間擬きなんぞ一撃で蹴散らされる運命なんじゃぁぁぁぁ!!
この時の俺は忘れていた。
1カ月前の末期世界第2層攻略戦中、同盟司令部が突如何もない空間から現れた敵部隊によって奇襲されかけたことを。
すっかりぽんぽこ忘れてたのだ。
でもしょうがないよね、人間だもの。
「———— っ、ぐんまちゃん!!」
「————奇襲してくるっ、トモメ!!?」
ダウンしていた高嶺嬢と白影が、突然何かに反応した。
「ひょぇっ!?」
俺はいきなりの大声にびっくりして硬直。
次の瞬間、探知範囲150mを誇る索敵マップに無数の敵影が現れた。
『司令部が敵大部隊の襲撃を受けている』
優勢に戦闘を進めていた戦線全域へ瞬く間に広がった一報。
それと同時に進撃を停止した無人兵器群。
事実を問いただすべく司令部に連絡しても、返ってくるのは戦線を維持せよという命令のみ。
私、ブルンジ共和国の探索者カトリーヌ・サンバ・ボカサがいるアフリカ連合第4小隊も、多くの部隊と同様に進撃を停止していた。
「きな臭いことになったわねぇ」
ザンビア共和国の勝気な女性探索者ルイズが、転がっていた無人戦車の巨大な脚部の残骸に腰掛けながら眉をしかめた。
「俺っちら、どうなるんですかね?」
内心の不安をこぼした小隊長であるステファノの視線の先では、前線に展開していた部隊の一部が全速で後方に退却していた。
多脚戦車は脚部の構造上、全速移動はどうしても関節部への負担が大きくなり、部品の摩耗が早くなってしまう。
本来なら巡航速度での移動が好ましいのだけど……
「このままここにいても仕方が無かろう」
ひらひらした異色の戦闘装束に身を包んだ黒色の英雄、☆彡魔法少女☆彡サバンナ☆ブラザーズの一角であるアニセ。
彼はそう言って停車している輸送多脚車に向かって歩き始めた。
「どうするつもりなのよ?」
アニセの意図が読めているのか、面倒臭げな表情のルイズ。
ステファノは補給品として配布されたレーションパックのチョコバーをパクついている。
彼はなんだかんだでマイペースだ。
「どうするつもり、か…… 決まっている。
苦難する味方を助けに向かうのだ」
「ぷヴォッほっ!?」
ステファノがチョコで
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