第五話 俺の冒険はこれからだった

 泣きながらご飯も食べ終わったし、さあ、報酬を受け取ろう!

 と言ったところで、俺は気づいた。


「道具屋って、どこですか?」


 俺の冒険が始まった。


 俺の冒険はパパッと終わった。

 敵が出てこないと分かったら、探索は予想以上にスムーズに進んだのだ。

 そして探索の結果が上の地図である。


 結論から言ってしまうと、予想通りここには敵どころか罠すら存在しなかった。

 そして2名の士官と96名の兵員が、生活できる環境が整えられていることも分かった。

 武器庫に保管されていた各種銃火器や、新たに発見した防具倉庫にあったボディーアーマーなども予備を含めて人数分用意されているのだろう。

 食糧庫には100名の人間が1ヵ月は食事に困らないだけの食糧が保管されており、俺だけなら数年は食糧問題について無視できるはずだ。

 

 そして今、俺は改めて道具屋と表記されたドアの前に来ている。

 隣には食糧庫に繋がるドアと、ギルドと書かれたドアがある。

 ギルドに関しては、どうやらお酒が飲める場所らしい。

 ギルド内には他にも設備があったものの、今は機能しておらず詳細は分からなかった。


 道具屋に入ると、パソコンが置かれているカウンターとエレベーターの入り口みたいな大きなボックスが設置されている。

 道具屋に限らず、武器屋や防具屋も同様のレイアウトだった。

 もはや分けている意味がない。

 これがいわゆる様式美というやつなのだろうか?


 パソコンは俺の入室と同時に起動していた。


『いらっしゃいませ 本日はどのようなご用件でしょうか』


 パソコンの画面に表示された文字を流し読み、検索欄のような場所にキーボードで『ミッション報酬受取』と入力する。


『ミッション報酬受取 ですね 該当する候補が 1 件 あります

1 ミッション 【迅速な探索】 報酬 受取』


 これで間違いないだろう。

 『受取』をクリックすると、カウンターの横にあるボックスからゴウンゴウンと低い音がする。

 しばらくして、ボックスの扉が開いた。


「ほう、これが……」

 

 ボックスの中には、それなりに大き目のダンボールが置かれていた。

 ダンボールにはご丁寧に、『日本国 国防陸軍』と達筆なモズがプリントされてある。

 ダンボールを抱えてみると結構重いが、想像していたほど重くはなかった。

 時代は軽量化という奴だね。


 しかし、ここから私室まで運べるほどの軽さではない。

 俺は仕方なくここで開封することにした。


 ダンボールの中に入っていたのは

・32式普通科装甲服3型

・88式鉄帽4型

・単眼型暗視装置

・各部パット

・防刃手袋

・各種お菓子、ジュース、薬品類

 

 なんかオマケがいっぱい入ってた。

 折角なので貰ったチョコバーを食べつつ、装備を身に着けていく。


 防弾チョッキの様な32式装甲服は、装甲服と言う割には軽かった。

 おそらく2,3㎏といったところか。

 軽いだけでなく、厚さもそこまでではないようで、動きを阻害される感じは着る前と比べてほとんどない。

 服の上からチョッキを身に着けているような感覚だ。


 こんなので装甲の役割を果たせるかどうか心配になるが、説明書によると100m先からの12.7mm重機関銃の掃射に耐えられるらしい。

 まあ、そんなものを掃射されたら、装甲服は耐えられても衝撃で俺自身が吹き飛ばされそうだが。


 88式鉄帽は、鉄帽と銘打っているが、明らかに鉄製ではない。

 プラスチックの様な質感と軽さだ。

 暗視装置を取り付けられるようになっていたので、同封されていた暗視装置を取り付けて頭に被る。

 顎紐を調節すれば、ちょっとやそっとでは外れない程しっかりと固定された。


 肘と膝にパットを取り付け、防刃手袋をはめれば、あら不思議!

 そこには歴戦の兵士が立っているではありませんか!!


 なんてね、実際はコスプレしたミリオタが精々だ。

 だけど、これで報酬を受け取ったことにはなるだろう。

 端末の画面を確認すると、案の定、ミッションが更新されていた。


『ミッション 【報酬の受取】 成功

 報酬 10000円 が振り込まれました』


『ミッション 【初めてのダンジョン】

 装備を整えてダンジョンに向かいましょう

報酬 42式無人偵察機システム 6機

依頼主:日本国国土交通大臣 石破仁志

コメント;くれぐれも慎重に、行って帰って来るだけで良い』


 え、ダンジョンですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る