第21話 道降臨

道の顔はまだ夜を跨ぐ前に見たはずなのに、遠く昔に会ったかのような感覚があった。


荒々しい呼吸、風で乱れた整い、

あの風の中なのだからしょうがないだろう。私だって怖くて仕方がなかったのだから。


よく見れば、私の足元は先程の冷たいコンクリートではなく、始まりの柔らかな土地に変わっていた。


あの風の中移動したのか!?


「道、大丈夫?」


ハァハァと息を荒立てる道は、徐々に落ち着いてきた。それでも焦点の合わない瞳は、酷く困惑な表情をうかべていた。


「道?」


私が再び名前を呼ぶと、やっとこちら向いた。

「夢、良かった!とても心配だったんだ!突然居なくなるから、これから何処かへ行く時は一声かけてくれ!!!」


道は不安の糸を断ち切ったかのように、勢いよく話し始めた。

私は勢いに負け、ごめんと謝罪の言葉を漏らす。


そういえば、私はみんなに何も言わず、勝手にこの世界に入ってしまっている。一体どのくらいの時間を過ごしたのだろうか。


――警察、誘拐、、行方不明


考えたくない言葉が頭に浮かぶ。サッと体の熱が冷めるのを感じる。

もしかして相当大きなことになってしまっている。


「こんにちは、道くん。私の名前はノアです。以後お見知りおきを。」

「おう……っ!?猫が喋った!?、、、」


ノアの方を見ると道は口をパクパクと動かし、瞳孔が開いてしまっている。

私はノアのことを話してたことがあるのは、大地のみ。だから突然なことに驚いているのだろう。

いや、知ってたとしても驚くのかもしれないが…。


「道!ここは私の世界で、、えっと、この世界はいつもいる世界と違って、ノアが喋るの!」

「おう。」


冷静になって欲しく、慌てて言うと、

「落ち着けって。えっとノアってあの猫のこと?」

「まぁ、そういうこと。」

道の方が先に冷静になったようだ。

なんだかいつも道とはこういう感じだ。

道が慌てると、更に私が混乱し、混乱した私を道が笑いながら対処する。

いつもこうなのだ。私はその度、恥ずかしく、情けなく感じてしまう。


「道君、君は一体どうしてここに来たのかい?」


ノアが美しい声帯で問う。道も聞き惚れたのか、すっとノアの方を見た。


「俺はノアっていう猫によりこの世界への回路に案内された。目をつぶると不思議な洋館について、そこでまた、夢に触れながら目をつぶると、この世界に到着していた。」

「ふむ。デイリーに…人語を話すフクロウに合わなかったかい?」

「いや、それは知らない。」

「色々おかしいが、まぁ、歓迎するとしよう。よろしく、道くん。」

「よろしく。」



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