第26話 和水さんを尾行する僕③
中庭で人知れずお花の世話をしていた和水さん。
僕は誰もいらないような和水さんの秘密をまた一つ知ることが出来た。
今僕の目の間には、なんとも幸せな光景が広がっている。
あのいつもイライラした顔をしている和水さんが、お花に天使のような微笑みを向けている。
かがんでお花に微笑みかけている和水さんは、後ろから見ていると短いスカートが災いして、パンツが丸見えだった。
今日は白だ。
僕は和水さんのパンツを眺めながら、新たな彼女の一面を知れた事と初めて見る白いパンツに達成感を感じていた。
充実した気分のまま、サービスのようにチラチラを見える白いパンツを眺める。
そうしているうちに、僕はあることに気が付いた。
丁寧にお花のお世話をしている和水さんだったが、よく見ているうちに何やら急いでいるらしい事がわかったのだ。
大きな胸を揺らして駆け回り、スカートがめくれても気にせずに世話を続けている。
見ている僕からすれば大サービスで得しかないのだけど、あまりにも無防備過ぎて見ているだけでもハラハラしてしまう。
せわしなく動き回る和水さんは、水やりを終わらせると、ジョウロをしっかりと片付けてから急ぎ足で校舎の中に戻って行った。
早足で歩いて行く和水さんを見失わないように、僕も急いで後を追う。
和水さんは一直線に下駄箱に向かっていた。どうやら急いで帰るらしい。
僕の追跡もここまでかと思い、時間をおいてから帰ろうかと考えていると、和水さんは下駄箱を一瞥しただけで引き返して来た。
急な方向転換に慌てて、何とか物がげに身を潜める。今ほど身長が低くてよかったと思ったことはない……いや、身長は高いにこしたことはないけれど。
いったいどうしたというのだろうか。急いで帰ろうとしていたように見えたけれど、下駄箱に行った和水さんは靴を履き替えるような素振りもしていなかった。
ただ一瞬下駄箱を眺めて、それからすぐに用はないとばかりに引き返して来た。
一度下駄箱を見た意味はなんだったのだろうか。
急に不審な行動をとり始める和水さんを前にして、僕はまだ作戦を継続する必要があると確信した。
一度和水さんをやり過ごしてから跡を追う。気分はまるでスパイ映画の主人公だ。
……傍から見たらただの変態だということは、ちゃんと自覚しています。
余計なことは考えずに、迷わず階段を上っていく和水さんをなるべく距離を開けて追いかける。
できればまたパンツが見たかったけれど、ここでは残念なことに不漁だった。
そのまま隠れて和水さんに着いて行くと、彼女が入って行ったのは僕たちの教室だった。
何か忘れ物でもしたのだろうか。それとも誰もいない放課後の教室で何かいけない事でもするつもりなのだろうか。
童貞脳が妄想を繰り広げ、興奮した僕は早速教室の中を見に行こうとしたのだが、何故か和水さんは一瞬で教室から出てきてしまった。
危うく姿をさらしてしまいそうになり、僕は慌てて壁の陰に身を潜めた。
見つかってしまったかもしれない。
焦りで心臓の音が大きく聞こえる。
そんな僕の焦りは杞憂だったようで、幸運にも僕の姿は見られていなかったのか、和水さんはまたどこかに向かって歩いて行った。
ホッと胸をなでおろし、見失ってしまう前にまた和水さんの後ろを着いて行く。
急ぎ足で歩き続ける和水さんは、いったい今度はどこに向かっているのだろうか。見当もつかないくらい和水さんの行動はさっきから意味不明だった。
急いで帰ろうとしたのかと思えば下駄箱を一瞥しただけで校内に引き返し、教室に何か用でもあるのかと思えば、一瞬でその教室も後にしている。
和水さんが教室に入ったのは本当に少しの間で、あれでは流石に忘れ物を回収することもできないはずだ。
一体なんのために教室に行ったのかまるで理由が見えないし、今も歩いている和水さんは隠れて見ていると少し様子がおかしい気がした。
足早に教室を出たわりに、今の和水さんはどこかあてもなく校舎をさまよっているようで、とても目的地があって歩いているようには見えないのだ。
あちこちをしきりに見回しながら、とりあえず廊下を歩き続けている。
どこか教室に入ることもなく、ただ一部屋ずつ覗いて何かを確認して、すぐにまた歩き出す。
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いているから、初めは僕の観察がバレているのかと思ったけれど、どうやらそうでもないらしい。
むしろ今の和水さんの姿は、何か探し物をしているように見えた。
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